表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
3/33

影山蔵人の過去と今

「先生!柔道おもしろすぎます!もっとやりたいです!」


道場の先生は、目を輝かせる蔵人に微笑んだ。


「センスがあるね。もっと練習すれば、きっと強くなれるよ。」


蔵人は、先生の言葉を励みに、毎日一生懸命練習した。汗だくになりながら技を磨く日々は、彼にとって最高の時間だった。


地区大会で優勝したときには、先生や両親、そして仲間たちと喜びを分かち合った。


全国大会出場も夢じゃない!そう確信していた。


中学に入り、練習の強度が上がった。


でも、蔵人の心はいつも柔道に向いていた。「もっと強くなりたい!」その一心で、練習に打ち込んだ。


しかし、無理な練習のせいで、肩を故障してしまう。


病院で医師から「柔道を続けるのは難しい」と告げられたとき、蔵人の心は大きく打ちのめされた。「なんで…?」涙が止まらなかった。


中学校時代、光を失い、影に潜む。柔道ができなくなった蔵人は、自分を見失ってしまう。


これまでの人生の中心だった柔道がなくなり、何をすればいいのかわからなかった。


学校ではいつもひとりぼっちで、クラスメイトともうまく馴染めずにいた。

次第に、蔵人は周囲とのコミュニケーションを避けるようになり、心を開くことをやめてしまった。


明るい笑顔を見せることもなく、いつも陰鬱とした雰囲気を漂わせていた。


「ケガが治れば、また柔道できる」


「早く治ると良いね」――柔道仲間やクラスメイトからの励ましの言葉は、蔵人の心に深く突き刺さった。しかし、蔵人の心には「この体じゃ、柔道なんてできない」「お前らに何がわかんだよ」という思いが渦巻いていた。


友達の優しさが、かえって心の傷となり、友達との仲は悪くなるばかりだった。



蔵人は、友達の励ましを拒絶し、孤独に浸るようになった。


次第に、友達も蔵人から離れていき、自分の居場所は無くなり、学校にも行かなくなる。


最終的には、中学の卒業式にも出席せず、周囲から完全に孤立してしまった。


だが、影山蔵人は、両親に心配され、地元から遠い県外の桜花高校を受験し、見事合格する。


影山蔵人自身も、再出発のタイミングがほしかったのか、高校に入学する事を決める。


だが、影山蔵人の体は柔道のおかげでガッチリ型だったので、大きめの制服を着て体型をわ隠した。


問題はそれだけじゃなかった。


長らく友達と話していない影山蔵人は、人との接し方が分からず、ずっと机で寝ていた。


友達もできない。

クラスの陽キャラがうるさい。


学校やめたい。


影山蔵人は、そう考えていた。


ある日の放課後。

陽キャラ達の話が聞こえた。


冴木リンが一人で先に帰ったなんて言っている。


どうもクラスにいないかららしい。


いやいや、さっき体育倉庫で片付けしてたろ!?


机にカバンもあるじゃん!


絶対、帰ってないだろ!


と思ったら、陽キャラ達帰っちゃったよ。


まぁ、いいや。

俺は少し寝て帰ろ。

・・・


うーん。うわっ、もう暗いじゃん!

帰ろっと・・・

って、冴木リンのカバンまだあるじゃん!


まだ片付けしてんの?

まぁ、俺には関係ないわ。


影山蔵人は、自分のカバンを持つ。


なぜか、足は体育倉庫に向かう。


気になるわけじゃない。


下校時間を守ってないやつがいないか見回りしてるだけ。


いるわけない。


学校の端にある体育倉庫に近づくと、小さな声がする。


あれ?助けてって言ってない?


影山蔵人は、倉庫の扉のロックを外して扉を開けた。


中にいたのは冴木リンだった。


影山蔵人は、リンを見て可愛いと思った。


心臓が大きく暴れている。


顔も燃えてるんじゃないかってくらい熱い。


ヤバい。


カッコ悪すぎる。


何か言わなきゃ。


下校時間過ぎてるよ。早く帰りな。」


何言ってんだよ!


影山蔵人は、急いでその場から歩き去る。


それしかできないのだ。


冴木リンが目を丸くしながら、あわてて言う。


「えー、なんでそんなこと言うの!この状況だよ!?影山くん、先生じゃないし、自分もそうだよ?もっと驚くべきだよ!って話聞けえぇぇー!」


影山蔵人は何も言わなかった。


影山蔵人が家に帰ると、母親が蔵人の顔を見て言う。


「あら、機嫌よさそうね?良い事あった?」


蔵人は素っ気なく返す。


「別に。」


母親は一言。


「ふーん。」


蔵人は部屋に入っていく。


母親は気づいていた。


蔵人の口元が少し上がっていた事に。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ