海だ!
リン達が海に行く当日。
桜花駅東口に、一人の男。
上着は、無地のクリーム色のロングTシャツに、下は紺のジーンズ、黒いスニーカー。
短髪の前髪を上げたイケメン。
クーだった。
現在、午前6時前。
休みのため、駅に人は少ない。
実はクー。
ここに一時間前からいます。
長野県が海無し県で海だから振り切って起きた訳じゃない。
実はリンから集合時間を聞いていなかったのだ。
気づいたのは、昨日の午後11時過ぎ。
そう。
23:00過ぎ。
一般的に連絡するのは、非常識な時間。
クーは悩んだ結果、
早めに行って待ってれば何とかなる
と考えて、4時に起き、5時には集合場所の駅東口に来ていたのだ。
クーは、真面目な陰キャなのだ。
「出発早いと思ったけど、さすがにそろそろメールして良いかな。リン起きてるかな。」
クーは、1人呟きながら、メールをうつ。
だが、まだ送らない。
スマホの時計が6時になった瞬間。
ポチ
メールを送信。
クーは、とても真面目なのだ。
そして、メールからすぐにスマホが鳴る。
リンだ。
「もしもし。」
「ごめん。時間言うの忘れてた。今、アンナ達といるから。もうちょっと待ってて。「リン。朝のモーニングコール?」「好きって言え!」ちょっとうるさいから!」
プープー
電話が切れる。
うわぁ、めっちゃテンション高。
なんか盛り上がってるし!
と、クーは思いながらため息をつく。
10分後、クーの目の前にに一台の白いミニバンが止まり、助手席後ろのスライドが開き、中にはリンがいた。
薄い青の半袖チュニックに青色のショートパンツ、茶色のサンダル姿のリンは顔が真っ赤だ。
「クー。お待たせ。乗って。」
車には、運転席に大人っぽい女性、三列目の後部座席にアンナとカレン、二列目の運転席の後ろにリンが乗っている。
クーはリンの隣に乗り込む。
「おはようございます。今日は、よろしくお願いします。」
「はいはーい。よろしくー。」
運転席の女性が答え、車が出発した。
「おはよう。皆。今日はありがとう。」
「クー、ごめんね。集合時間言ってなくて。」
「いいよ。気にしないで。」
リンは、クーに謝ると、後ろを振り向き、
「二人とも影山蔵人くんだよ。私の・・・彼氏。」
今、間があった、やっぱ俺が彼氏じゃ、リンも言い出しにくいよな。と思うクー。
「私の彼氏だから!クーを誘惑しないでね!」
なんか必死だな。とクーは思う。
「・・・ども。影山蔵人です。よろしく。」
「硬い硬い。同じクラスだから。そんなな言い方やめて。」
とカレン。
「本当に付き合ってるんだねー」
とアンナ。
そこからは、カレンとアンナから質問攻め。
やれ、いつから話すようになったのかとか、キスはしたかとか、どこが好きなんだとか。
正直、質問攻めで疲れちゃって、ほとんど何を話したか覚えていない。
長野県を越えて、新潟県に入り、高速を進む車。
運転席の女性は、アンナのお姉さんのカナさん。
リンが教えてくれた。
「お!海ー!」
カナさんが叫ぶ。
「わぁー海!」
「海だー!」
「海!」
リン、アンナ、カレンが叫び、テンション爆上がりだ。
一方のクー。
声に出さないが、目がキラキラ。
海だー!
クーの心が読める。
だって、海無し県の長野県民だもの!
陰キャ、関係ないから!
海を見て、テンション上がらない人はいないだろう。
車は謎の海コールに包まれながら進むのだった。




