恋のキューピッドは突然に
次の日、昨日のアキトとのトラブルの事を考えて、クーは図書館に行くのをやめ、公園で勉強することにした。
クーは勉強道具を持ち、公園に向かった。
公園は、休みという事もあって、家族連れが多かった。
クーは東屋の机に参考書を広げ、勉強を始める。
一時間くらい集中していたが、キリが良くなったところで、目をつむって背伸びする。
「あー、疲れた。体、カチカチだよ。」
クーが目を開けると、目の前にリンがいて、本を読んでいた。
今日のリンの格好は、黒いワンピースに白いジャケット姿、髪は後頭部の上でポニーテールにしていて、とても可愛い。
「・・・可愛い。」
クーが思わず、言葉をこぼす。
「ありがとう、クー。おはよう!全然、気づかなかったね。集中してた証拠だね!」
リンが笑顔で言う。
「あ、え、おはよう。今日は図書館に行かないの?」
「うん。昨日の事があるからね。アンナとカレンも家でやるってさ。」
「そうなんだね。って、そういえば、いつから居たの?声掛けてくれればいいのに。」
「いつ気付くかなって、何となく待ってたんだよ!全然、気付かなかったけど!」
リンの笑顔が怖い。
「何かごめん。」
クーは思わず、謝る。
「まぁ、いいけどね。・・・可愛いって言ってくれたし。」
「ん?今なんて?」
「何でもないよ。そういえば、昨日はごめんね。何か迷惑かけちゃって。」
「リンが謝る必要は無いよ。あの野郎がいけないだけだから。」
「昨日、あの後、どうしたの?」
リンは、クーが公園で犬を連れた美女と話をしていたのは知っていたが、あえて聞いてみる。
「公園にいたよ。行くところなかったし。」
「ふーん。1人で?」
「まぁ、そうかな。」
リンは
昨日、女性と会っていた事を隠してる?
実は彼女?
と思う。
「本当に誰とも会わなかった?神様に誓う?」
「ど、ど、どうしたの急に。神様に誓ってもいいか、と思ったけど、前にいた迷い犬の飼い主さんには会ったよ。だから誰にも会ってない事はないね。」
リンは、
あれ?隠さない?
やましい事はない?
てか、私達、お付き合いしてないから、クーに彼女がいても、別にやましくないか。
何で私、クーに彼女がいるか気になるんだろ?
モヤモヤする。
と思う。
「この前のお姉さんね。綺麗な人だよね。」
「まぁね。」
クーの表情が曇る。
「ごめん。聞いちゃまずかったよね。私がズカズカ聞いて良い事じゃなかったよ。」
リンは笑いながら言ったが、ひきつっていた。
クーは、
リンが俺の事を気にしてる?
まさか焼きもち?
リンって、俺の事好きなのか?
と思う。
二人はしばらく黙っていた。
「ワン!」
「こら、吠えないの!」
柴崎すみれだった。
「昨日はどうも。」
「こんにちわ。」
クーとリンがあいさつする。
「あ、今日は彼女も一緒だね。ってまだ付き合ってないか。」
「ち、ちょっと。リンに迷惑なんでやめてください!」
クーがとっさに言う。
「え?」
リンの思考が止まる。
私はクーの彼女になれる?ってこと?
私はクーの彼女になりたい?
うん。なりたい。
クーの優しいところが好き。
何も言わずに、私を助けてくれるクーが好き。
私、このお姉さんに嫉妬してたんだ。
クーも私の事を思ってる。
私がクーの彼女に見られて迷惑な訳がない。
私、クーの彼女になりたい。
クーの特別に。
「・・・迷惑じゃないよ。」
「あ、リン。ごめんね。そんなつも、」
「迷惑じゃない!」
「え?」
「私は、クーの彼女になりたい!クーの事が大好きなの!他の女人と話してるクーを見ると、胸がモヤモヤするの!嫌なの!私、クーが好き!」
リンが叫ぶ。
「あらあら、お邪魔虫は退散するかな。がんばれ!若人!」
「ワン!」
柴崎すみれは走ってどこかに行ってしまう。
「リン。今の本当?」
「本当。」
「俺なんかが好きなの?」
「好き。大好き。」
「俺、陰キャだよ?」
「関係ない。クーは私に優しい。」
「俺、リンに釣り合わないよ?」
「そんな事、誰が決めたの?私はクーが良い。」
クーは、息を吸った。
「俺もリンが好きだ!明るいところも、何も言わずにそばにいてくれる優しいところ。顔も可愛い。全部が好きだ。俺は、ひねくれ者だし、陰キャだし、友達いないし。自慢するところなんて一個もないけど。世界で一番、リンが好きだ。俺もリンが良い!付き合って下さい。」
「うん。」
リンは満面の笑みで答える。
「あ、でも、浮気したら許さないから!」
「するわけないだろ。」
「フフフ。これからよろしくね。クー。」
「こちらこそ。よろしく。」
2人の顔は、真っ赤で、幸せそうに笑い合っていた。
こうして、陽キャのリンと陰キャのクーが付き合う事になったのだ。
「犬のお姉さん、ありがと。」
リンは小さい声でお礼をいうのであった。




