俺、不整脈?
クーが風呂から上がってリビングに行くと、リンがソファーに座っていた。
ちょっと顔が赤い。
ふと、リンと目が合う。
「さ、さて、私もお風呂入っちゃおう!」
リンがソファーから立ち上がり、お風呂に行った。
やっぱり、無かった事にはならないよね。
後で謝ろ。
そう思いながら、クーはソファーに座る。
キッチンにいたリンのおじいちゃんがリビングに来た。
「蔵人くん。今日って体育祭の打ち上げ無かったんか?てっきり打ち上げに行くと思ってたんだが。もしかしてイジメか?」
「いや、そういうんじゃ無いですよ。俺は、そういうな苦手で、リンはケガしてるからだと思いますよ。」
「そうか。なら良いんだが。じゃぁ、うちでささやかに打ち上げしよ。実行委員会だったんだろ?リンからよく蔵人くんの話は聞くんだ。まさか、こんな早く生蔵人くんが見れるとはな。」
「そうですか。」
って、生蔵人くんって何!?
生って、何さ、生って!
リンは、家で俺の事、何て言ってるんだろ。
「まぁ、蔵人くん。リンと仲良くしてやってな。」
「はい。こちらこそ。」
リンのおじいちゃんは、そう言うと、満足した笑顔でキッチンに戻っていった。
クーは、ソファーで1人、テレビを見ていた。
しばらくして、リンがお風呂から上がってきた。
髪は乾かしていて、お風呂上がりで暑いのか、白い半袖Tシャツに黒い短パン姿だった。
リンからシャンプーの匂いが漂い、良い匂いが部屋に広がる。
クーは、風呂上がりのリンに少し見とれて、目が離せなかった。
「クー、暇だったでしょ?」
クーは、ふと我に帰り、
「まぁね。でも、テレビ見てたから大丈夫。」
と答える。
リンは、クーの隣に座る。
リンの首、細いなぁ。
色、白。
まつげ長いなぁ。
クーはリンの観察をする。
ふと、クーはリンと目が合う。
「どうかした?あ、胸、見てた?クーも男だね!」
リンは、Tシャツの首のところを引っ張って、クーに笑顔を向ける。
やめて!
胸の谷間と、白いブラが少し見えてるから!
笑顔まぶしい!
クーは、心の中で叫びながら、悶える。
「り、り、リン。冗談やめて。」
「クーはうぶだなぁ。」
リンはニッコリ笑う。
めっちゃ可愛い・・・
あ、俺、今日、死ぬかも・・・
クーは、顔を赤くする。
思えば、高校に入ってから、リンと仲良くなって色々話したりするようになった。
中学時代は、友達との関係が煩わしく、面倒くさく嫌になり、自分から距離をとって避けていた。
人と関わっても、上部の付き合いだと感じていたからだろう。
まぁ、実際は、友達は真面目に接してくれたのだろうが、自分には響かず、一緒にいるのも疲れてしまっていた。
そして、自分には何も無いと感じた。
地元から離れ、自分を知らない人達しかいない場所に行けば、誰も自分に関わってくる事は無いだろうし、自分から距離を取れば、煩わしい友達関係も無くなると思った。
やりたい事なんて無いし、高校なんて卒業出来れば良い。
そう考えていた。
そこに現れたのがリン。
現れたというか、何となく心配で、関わったら仲良く?なったかな。
リンは明るく、可愛いし、クラスでも陽キャだ。
すぐ離れていくと思った。
だけど、リンは俺に何を求める事なく、近くにいてくれていた。
体育祭では、ひと悶着あったが、リンは俺の事を考えてくれていた。
素直に嬉しかった。
今日、送るだけだったのに、なぜかリンの家にいるけど、こうやってリンと話せるのは楽しい。
幸せだ。
リンと話すと、何か胸の辺りがムズムズしたり、顔が熱くなる。
俺、不整脈?
んな訳無いか。
薄々、自分でも感じている。
俺、リンが好きなんだ・・・
クーは、リンが好きだと気づく。
何か急に恥ずかしくなった。
陰キャの俺がリンを好きになるなんて、リンには迷惑だろうな。
迷惑かけないようにしようと、クーは思う。
「さぁ、ご飯できたよ!手伝って!」
リンのおばあちゃんが言った。
クーとリンは、配膳の手伝いをするのであった。




