ざまぁみろ!この陰キャが!
クーはリンをお姫様抱っこで保健室まで連れてきた。
クーの顔は真っ赤だが、お姫様抱っこをされてるリンも恥ずかしいやら、嬉しいやらで顔が赤く、クーの顔をまとも見れないので、気づいていない。
リンは、
クーって案外力持ちなんだな~
何か体が硬くてたくましい
普段、ダボッとした制服やジャージ、私服を着てるから気づかなかったな。
それにしても、お姫様抱っこなんて、私、顔が熱い!
顔から火が出るんじゃないかな!
クーって実はタラシなの!?
陰キャなのにタラシ!?
と心の中で叫びまくっている。
一方、クーは
やべぇ
保健室に連れてくために持ち上げたけど、これ、お姫様抱っこじゃん!
俺、王子じゃないし!
リンはお姫様って言っても問題無いけど!
だって、可愛いし・・・
第三者に見られたら、恋人同士に見えるのかな?
って、自惚れるな!
そんなキャラじゃ無いだろ!
リン、嫌がってないかな?
頼む、保健室まで我慢してくれ!
それにしても、体は柔らかし、良い匂いはするし、ってダメだ!
血が下にたまってしまう!
煩悩を捨てろ!
お釈迦様になれ!
ケガした女の子を抱っこしながら、・・・するなんて人生終わる!
頼む!
持ってくれ、俺!
と頭の中はカオスだった。
やっとこの事で、保健室に着く。
だが、保険の先生がいない。
「私、先生待ってるね。クーはリレーあるから行って!」
「まだ時間あるから大丈夫。てか、クラスのところに行っても居場所無いし。あ、湿布とテーピングあった。処置しちゃうね。靴下脱げる?」
「あ、うん。」
リンは靴下を脱ぎ、クーは湿布とテーピング、ハサミを持ってくる。
「何で両足の靴下脱いだ?」
リンは両足の靴下を脱いでいた。
「あ、痛い方だけか。」
内心、リンはドキドキ。
思わず、両足の靴下を脱いでしまったのだ。
「じゃ、右足見せて。」
クーがリンの右足を見ると、踝あたりが赤く腫れていた。
「まず、湿布貼るね。痛いよ?」
「そっとやっ、ヒャン!」
「ごめん。触るだけで痛いよね。テーピング巻くから痛いけど、我慢して。」
クーは湿布の上からテーピングを巻いていく。
「痛!痛い!もっとそっとやって~!」
クーは黙々とテーピングを巻く。
この時、クーの顔は赤くなっていた。
綺麗な足だな~
毛とか生えてないし。
柔らかいし、近いから良い匂いするし。
痛がる表情が、また可愛い。
俺、変態じゃね?
とクーの心の中はカオス。
「はい。終わり。多分、捻挫だから病院行きなよ?このケガじゃ、今日のリレーは無理だな。」
「え!?せっかく練習したのに!」
リンの表情は今にも泣きそうだ。
「7人で行けるか聞いてみるよ。リンは無理しちゃダメ。」
「・・・はい。」
リンはシュンとする。
クーは思う。
雨に濡れた子犬か!
まぁ、練習したもんな。
そりゃ、出たかっただろう。
と。
クーとリンは、保健室を出ると、実行委員会本部に向かう。
本部で話した結果、7人で参加できる事になり、アンカーが2周することになった。
クーとリンは、クラスのところに戻り、リレーメンバーに説明した。
「ケガなら仕方ないよ。」
アキトがリンに言う。
「アンカー誰やる?」
アンナが言った。
「影山。お前やれよ。冴木さんをお姫様抱っこで保健室連れてくくらいだ。責任とってやれよ。」
この時、アキト以外の7人は同じ事を思った。
何の責任だ。アキト、言ってる事可笑しいだろ。
と。
だが、クーは
ここでごねると話が決まらない。
と思い、
「・・・分かった。やるよ。」
とアンカーを引き受けたのだった。
アキトは、不敵な笑みを浮かべながら
「せいぜい恥かけよ。」
と言い残し、去っていく。
クラス対抗リレーは、体育祭の最後のメインイベント。
リレーの加点は多く、他の競技で負けていてもリレーに勝てば優勝できるシステムだ。
じゃないと、皆、やる気出ないからね。
リレーは、1人100メートルを8人で走る。
クーはリンの分も含めて200メートル走ることになる。
クーは鍛えてるとはいえ、200メートルを全力疾走できるかというと無理がある。
だが、クーは
リンに悲しい顔をしてほしくない
少しでも笑顔でいてほしい。
という思いから、負けるだろうが、全力でやろうと決心していた。
なぜ、クーはリンに悲しい顔をしてほしくないのか。
今まで人間関係が嫌で人と関わってこなかったんだから、無視して我関せずでいれば良かったのに。
クーには、リンへのこの気持ちが分からない。
リンが悲しい顔をすると、クーも心が痛い。
走る理由は、それで十分だ。
リレーが始まり、第一走者からスタート。
クーの番になる頃には、クラスの順位は五番目。
クーがアキトからバトンを受けとると、みるみるうちに前の走者を抜かしていく。
そして、先頭になり、二週目に入る。
壮絶なデッドヒートを繰り返し、クーは一位でゴールテープを切り、クラスは大盛り上がりで、リンも涙を流して喜ぶ。
まぁ、超人アニメの主人公ならこういう展開も悪くない。
だが、クーは運動神経が良いといっても超人では無い。
実際の流れはこうだ。
第一走者の太陽からスタートし、各自、全力を尽くして、アキトまでの順位は7番。
7、8、9番の走者は、ほぼ団子状態。
アキトがバトンを受け取り走り始める。
アキトは練習の時より遅かった。
どうせ負けるんだから、全力でやるなんて馬鹿だ。
どうせなら影山が盛大にビリでゴールするようにしてやる。
アキトは、心の中で考えていたのだ。
そして、アキトからクーにバトンを渡す瞬間。
「うわぁ。」
アキトが盛大にこけ、バトンを遠くに放り投げてしまう。
「痛ぁ~。足もたなかったか。」
アキトがボソッと言う。
これはアキトの計算だ。
「アキト!大丈夫か!?」
太陽が駆け寄り、隼人もアキトに近づく。
クーはというと、無表情でバトンを拾い、スタート地点に戻り、スタートする。
「何だよ。あいつ。アキトの心配しないのか?」
太陽が怒っていた。
「いや、俺が悪いから。」
アキトはさらっと言う。
内心は、
ざまぁみろ!この陰キャが!
と叫んでいた。
だが、クーは気にしないで、ひたすら走るのだった。




