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何でそんな事言えるの?

体育祭まで2週間。


桜花高校は、各学年3クラスの全部で9クラス。


各クラスは、優勝を目指して練習に力が入る。


桜花高校の体育祭は、競技と競技の間に応援合戦がある。


桜花高校の応援合戦は、普通じゃない。


コスプレOK、楽器OK、要は犯罪行為じゃなければ、何でもあり。


例年、コスプレして歌を歌って盛り上がるという感じだ。


リンのクラスは、1年3組。


実行委員のリンは悩んでいた。


「あー、応援合戦、何やろう・・・」


リンはため息をつく。


隣にいりクーこと影山蔵人は、腕を組んで目を瞑って黙って考えていた。


「クー、アイディア無い?」


「・・・」


「起きろー!」


リンがクーの頭を小突く。


「・・・ごめん。」


リンはため息をつきながら言う。


「で、アイディア無い?」


「・・・歌って踊るじゃダメなの?」


「そうだね。でも、皆、一緒じゃつまんないじゃん。」


「そうかな?」


「どうしよう。」


「うちのクラスの出番は、午後一だっけ?」


「そう。うちのクラスの応援で午後のテンション決まるからなぁ。」


「じゃぁ、ちょっとしたヒーローショーみたいなのどうかな?急に悪役がグランドを占拠、そこにヒーロー登場、悪役倒して、歌って終わり。」


「劇かー。台本と衣装間に合うかな?」


「最悪、お面だけ?」


「うーん。まぁ、やってみるか。何か新しい気もするし。」


「じゃぁ、」


こうして、リンとクーは台本を作り始めた。


「さて、そろそろリレーの練習行こ!」


「・・・分かった。」


クーの表情が暗い。


「リレー嫌だよね~まぁ、しょうがないよ!でも、クーは足早いから良いじゃん。私なんてノロノロだよ?頑張ろ?」


「・・・うん。」


リンはクーを励ます。


が、クーが嫌なのはリレーじゃなかった。


リンとクーは、グランドに行くとリレーのメンバーが練習していた。


「あ!冴木さん!やって来たね。さぁ、練習しようよ。」


「皆、お待たせ~」


アキトが声をかけてきて、リンを連れていく。


リンがアキトに連れられて、メンバーのところに行くと、たわいも無い話をして盛り上がっていた。


クーもリレーメンバーのところに行くが、会話に参加する事は無い。


クーはリレーメンバーの中で浮いていた。


そのためかメンバーから離れた場所で準備体操をすると、すぐにメンバーから離れ、グランドを走り始めた。


リンもクーがリレーメンバーから浮いてるのは気づいていたが、クーは陽キャの雰囲気が嫌いなのは知っていたし、メンバーと仲良くする事を強制したくなかったので、様子を見ていた。


「影山って変わってるよな。仲を良くしようとしないし。だから、陰キャはな。何でリレー何だよ。あいつがいるとチームがまとまらないよな。」


太陽が機嫌悪そうにクーを見て言う。


「まぁ、ほっときなよ。陰キャがうちらのグループに入っちゃったから、影山も邪魔しないようにしてるんだよ。」


「まぁ、そうだろうな。」


隼人が嫌みを言うと、アキトがのってきた。


「さ、練習しよう。リン、準備運動して少し走ってきな?」


「ウォーミングアップしないとね」


カレンとアンナがリンに言う。


「分かった!やってくるね!」


リンは準備運動をして、グランドを走り始めた。


すると、後ろから走ってきたクーに気づく。


「く、影山くん。ウォーミングアップ終わったらリレーの練習するって!」


「分かった。ありがとう。」


クーはリンと一緒にリレーメンバーのところに行く。


「影山も来たのか。お前、ちゃんと話聞いてけよ。リンに迷惑かけんな。」


アキトが無表情でクーに言う。


明らかに険悪な雰囲気になり、周りにいる隼人や太陽、アンナ、カレン、カエデ、リンの表情が固まる。


「・・・ごめん。」


クーはとりあえずアキトに謝るが、アキトは「謝るくらいなら、最初から話しろ!」等と攻め立てる。


「もうやめよ!」


リンが思わず、アキトに言うと、アキトは舌打ちをし、クーを攻めるのをやめる。


「さ、さぁ、練習しよ!」


リンが明るく話しかけ、リレーの練習が始まった。


それからリレーメンバーは練習をみっちり行い、皆、ヘトヘトになっていた。


「皆、お疲れ!今日の練習終わり!」


リンがそう言うと、リレーメンバー達は口々に「あー、お疲れ!」と言って座り込み、ダベり始める。


「・・・」


気づくと、クーの姿が無い。


帰ったのだろう。


クーがいない事が分かると、リレーメンバーはチームの輪を乱すクーの悪口を言い始める。


あの陰キャ、何考えてんだか


うちらとチーム組めた事を喜べ


本当、居なくなれば良いのに


等々。


実はリレーチームの練習の後は、これが日常だった。


そんな悪口合戦にリンは嫌気がさしていたが言えなかった。


自分が標的になるかもしれない、また、中学みたいに周りからせめられるかもしれない等とトラウマが蘇ってくるからだ。


なぜ、この人達はクーをここまで敵視するのか。


自分達だって、クーを受け入れようとしてないのに、輪に入ってこないと攻める。


きっと変わらないんだろう。


リンは、下を向いてうつむくしかないのだった。



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