悪役令息に転生したけど乙女ゲー知らないせいでゲーム通りに進まない
よう!俺はフォイアー・バースト。そして乙女ゲームに出てくる悪役令息だ。
……これが俗に言う転生ってヤツか…?
深夜バイト中に急に目眩がして倒れた事以外覚えていない。くっ…これなら乙女ゲー好きな妹の話を聞き流さず詳しく聞いていれば良かった…
それにしても困ったものだ。俺が悪役だと言うことは分かるがそれ以外は何も知らん。ゲーム内で俺がどんな残酷非道な事をしていたのかも分からん。……詰んだな?
不幸中の幸いはまだ俺が幼い事だろうか。確かゲームの時の姿はもっと大きくて(高校生くらいか?)もっとThe悪役見たいなつり上がった目の怖い顔をしていた気がする。(それでもイケメンだった。羨ましい)今の自分はまだ小学生にもなっていない位には小さい。それにまだ可愛げのある顔つきをしている。
よし!悪役令息目指して頑張ろう!
と、思っていたんだが重大な事実が発覚した。
俺は愛人の子供、所謂庶子だったのだ!
まぁ、そんな感じはしてた。俺が転生したと気づいた後も誰も来る気配はせず、やっと来たと思ったらメイドがご飯を運んで来ただけだった。誰もいないから広い部屋で好き放題遊ぶこと出来たし良かったけどね。多分俺が普通の子供だったら絶対悲しむ生活を送っていた。だかしかし俺は元大学生。両親からの寵愛など溢れるほど受けており、一人暮らしをしていたのだ。ふかふかのベッドがあって美味しいご飯が食べれて最高だったね。それにこの世界はファンタジー要素があってステータス画面が開けた。どうやら俺は炎系の魔法が得意でキャッキャ年相応(今の)に楽しんでいた。
しかしそこで目に入ったのだ。
その日もいつも通りまだ使っていない魔法を探してステータス画面を下にスクロールしていたんだ。
すると魔法の欄から称号の欄に移り、そこにはこんな文字が書いてあった。
【ウォーター・バーストの庶子】
な、なんだってー!思わずその文字を押してしまった。するとブオンと新しい画面が出てきた。
【説明
バースト公爵家当主であるウォーター・バーストは妻であるアクア・バーストが妊娠のため実家へ帰郷中に酔った勢いで娼婦のヌームと関係をもつ。その後アクアが実家から戻り、自身が正妻だと勘違いしていたヌームは激怒フォイヤーを出産後バースト家の館に侵入。バースト夫妻にフォイヤーを押し付けその場で自害。結果夫婦仲は拗れ、バースト家の特徴である漆黒の髪をもったフォイヤーを自らの手で育てなければならなくなった。】
へぇ、文字を押したら説明が出てくるのか。今まで説明見ずに実践してどんなものか確認していっていて凄い面倒だったので良い発見をした。
それにしても何やってんだ今の父ちゃん。酔った勢いでやったが1番駄目なんだからーもー
それにしたってネグレクトはいけないとは思うがな。俺は産まれてきてしまったんだから責任取ってきちんと育ててほしくはある。ゲームで俺が悪役だったのも絶対これが関係してるだろ。
ちょっくら悪役令息になる前にちょっくら家族に抗議しに行くか。こんな生活じゃ本物のフォイヤーくんが悲しむよ。よし、思い立ったら即行動!俺は昔から勢いだけはあるんだ!まずは部屋から出よう
ガチャ……
なんとなく静かにドアを開けてみる。気分は不法侵入してる気分だ。自分ちのはずなのに。どこかにマップとかないかなー。
「えっ!お坊ちゃま!?」
げっ誰かにバレた!?逃げないと!
「お坊ちゃま!お待ちください!」
ふぅ…メイドが沢山荷物を持ってたお陰で簡単に逃げれた。危なかったぜ…
「そこで何をしている」
ぎゃぁぁ!逃げた先でもバレた!しかも男の人で荷物も何も持ってない!▼逃げられない!
「いやそのっ、お、お父さんとお母さんを探してて…」
とりあえず会話を試みよう
「何故?」
「なんで?なんでって…会いたいから」
「何故会いたい?」
なんだよこの人。さっきから何故何故ってなんでも聞きたがる子供かよ
「1人で寂しいから…?」
ここで家族に抗議しに来ました!なんて言ったら下手すると家を追い出されかねない。子供が寂しいから両親に会いたがるのは普通だろうし嘘とはバレないはず…
「寂しい…?貴様はずっと寂しかったのか?」
「う、うん。」
ヤ、ヤバい疑われてる?
「……」
「…………」
気まずいよぉー!!!何か言ってよ!!
「………あの、僕のお父さんとお母さんどこにいるか知ってますか?」
「…………」
「あの……」
返事がないただの屍のようだ
ずっと動かずにめっちゃこっち見てる。正直言って怖い。その顔子供なら普通に泣くぞ。
「……おいで」
ヒョイ
「っわ」
うわぁぁ!!持ち上げられた!!ヤバいこれは追い出されるのでは!?まって無理無理無理この歳で1人は流石に生きていけないって!動き出さないで!…くっ、全力で抵抗しているのに全然揺れねえ!体格強いなこの黒髪のおっさん!
「や、やだっ追い出さないで!」
ピクッと一瞬おっさんが止まった。お!逃げれる?
「追い出さない。」
逃げれなかった…おっさん普通に歩き出したわ。なんで今止まったんだ?
「ここだ。」
そう言って止まったのはこの豪華な屋敷で1番豪華なドアの前だった。
カチャ
「アクア、ヴァッサー、いるか。」
あれ、アクアってさっき見たな?
「あ、あなた!その子は!」
たしか説明のとこで…
「そうだフォイアーだ。」
「何故その子をここへ連れて来たのです!この場にその子を連れてこないと貴方言っていたではないじゃないですか!」
そうだよ!アクアさんって俺の母さんじゃん!
「そうだ、フォイアーだって俺たちの家族だ。……いや、俺の子だ。」
父ちゃんお前かーい!思えばおっさん黒髪だね!なんかさっき黒髪がバースト家の特徴とか書いてあったねえ!
「何故今になって急に言い出すのですか!私たちの子はヴァッサーのみと言ったのは誰です!?」
「俺だ。本当に申し訳なく思っている…俺の都合で君を傷つけ、更にはこの子に寂しい思いをさせてしまった。…君はこの子を家族だと思わなくても良い。…けど俺は…この子を見た時、この子が俺たちに会いたいと、寂しいと言った時、どうしても見捨てることが出来なかった。不甲斐ない夫で済まない。どうかこの子を愛させてくれないか。」
さっき寂しいって言ったこと結構効いてる?よかった嘘がバレた訳ではなかったんだな
「……もう。私は前から言っていたじゃないですか。子供に罪はないって。それを聞かなかったのはどなた?」
母ちゃんちゃんとしてる!そうだよ俺にはなんも罪ないんだよ!
「…俺だ。」
「子供の5年間ってとても長いのですよ。深い穴を埋めれるほどの愛を貴方はこの子に差し出せるのです?」
「ああ。それは問題ない。」
「なら私の返事ははい一択ですわ。元々私はその子をわが子として受け入れる気満々でしたもの。」
母ちゃん強ない?一応俺庶子ぞ?
「ねぇお母様。その子が僕の弟ですか?」
夫婦喧嘩で壁の花になっていた美少年が話し出した。うーん、年齢は俺のちょっと上ぐらいか?
「ええそうよ。ようやくお父様は心を入れ替えたみたいだわ。ヴァッサー、挨拶なさい。」
まって♡お兄ちゃんいるの聞いてないよ!この兄ちゃんくっそイケメンなんだけど!?
「こんばんは。僕はヴァッサー。君のお兄ちゃんだよ。」
ニコリ、その笑顔が輝いて見えるほど俺の兄ちゃんかっこいい。
「はわ…」
「あら、照れちゃっているのかしら。フォイアー、私が貴方のお母様のアクアよ。」
「お母様……?」
やべえ母ちゃんめっちゃ美人。母ちゃんって言えねえわ。こりゃお母様だわ。
「俺はウォーター。お前の父だ。」
「あら、貴方もしかしてまだ挨拶をしていなかったの?」
「…あの時は必死だったんだ…」
父ちゃん…いやお父様…この家族揃いも揃って美形じゃねーか。俺だけ場違いぞ?
「ぼ、僕はフォイアーです…?」
「そうだ。お前の名前はフォイアー・バースト。バースト家の次男坊だ。」
「フォイアー。貴方はこれから忙しくなりますわよ。なんたってこれからレッスンが沢山入ってきますからね」
「レッスン?」
何それ?抗議しに来たつもりがなんか和解したからもう部屋に帰りたいんだけど…
「ええ。貴方を立派な貴族にするための大事なレッスンです。家族だからと容赦はしませんからね。」
「フォイアー、頑張ってね。お母様は結構スパルタなんだ。」
ええ…まじかあ…まあ家族になれたから結果的には良かった…のかな?