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奇跡のチーズケーキ(1)

 ドアを三回叩いて開けると、赤色に金の刺繍ししゅうのローブを着た派手なジジイが立っていた。白い口髭くちひげあごから逆三角形に伸びてサンタクロースのよう。


「ジジイ、久しぶり。お茶しに来たよ」


「ん?誰じゃ?」


「誰って、俺だよ、俺」


「おお、ナターシャか」


「そうそう」


 って、おい。性別違うだろ。やっぱりボケてんな、このジジイ。小遣こづかいくれ、とか言ったらくれそう。



 ここはラリエット教会で一番偉いサントノーレ大司教の部屋。俺はずっとサンタクロースって名前だと思ってたんだけど。サントノーレって長いからサンじいでいいや。


「ナターシャじゃなくてフィル」


「なんじゃ。なんか用か」


「お腹空いちゃってさ。何かない?」


 時間はティータイム。

 サンじいが手にティーポットを持っているから、これからお茶するのはわかっていたけどあえて聞く。


「あるぞ、あるぞ。ちょうどお茶をするところじゃったからな。さあ中に入れ」


 まねかれるがまま中に入って部屋の中を見回した。

 さすがこの教会で一番偉いだけあって、部屋が広い。

 大きな暖炉だんろに椅子、テーブル、壁には芸術っぽい絵。それからトナカイ……じゃなくて鹿の頭の剥製はくせい



 今日、俺は祭事の手伝いでラリエット教会に来ていた。

 俺のいるラシール教会はラリエット教会の分派というか分家というか支部というか……そう、養護老人ホームみたいなところ。ジジイしかいないから、助っ人求められた時は俺とアルミラが来るしかない。


 世間的には俺はまだラシール教会の地下で眠ってることになってるんだけど、賢者として名は知れていても顔はほとんど知られてなかったから王都プラプラ歩いても誰にも気づかれなかった。


 まあ今回は教会のみんなが着てるのと同じ白いローブの僧侶の格好で来てるしな。



「昨日、シュトーレンの教会支部の司教からもらったお土産じゃ」


 サンじいが奥の部屋から何か持ってきた。

 テーブルに細長い高級そうな木箱を置く。


 おおっ。献上品けんじょうひんてやつ?期待がふくらむ。


「まさか金銀裏金が入ってたりしないだろうな」


「ほほほ、そうじゃといいのう」



 サンじいが木箱のふたをゆっくり開ける。


 二人で木箱の中をのぞきこむ。




 ふくらんだ期待が……一気にしぼんだ。


「え。なにこれ?カビ生えてんじゃん」


 中に入っていたのは、長方形の形をした表面がきつね色の素朴な感じの菓子が二本。

 そのうち一つは所々にまだらにカビが生えている。どう見てもマーブル模様のケーキとかじゃない。

 


 木箱の高級感からして金粉まぶしてあったりとか豪華なケーキ期待してたんだけど。

 サンじいって本当に偉いの?舐められてねえ?


「ウィンタル地方の名産品、チーズテリーヌとブルーチーズケーキじゃ」


 サンじいが自慢げに胸を張る。


「えー、テリーヌってなんだよ。てかこっちのはくさってるよ」


 俺ががっかりして肩を落としたちょうどその時、ドアをノックする音が聞こえた。




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