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天使と悪魔の片翼の輪舞曲~One wing of them~  作者: 白築ノエル
5崩れる封印
97/113

97仕組まれた戦い





「死ね! クソアマ!!」


 レジスタンス戦闘員が駆け出す。

 ふとガブリーラが腕を上げ、指を鳴らす。


「停止」

「うわあ!?」


 ガブリーラがそう言うとレジスタンス戦闘員に掛かっていた強化魔法、防御魔法が消えた。

 身体強化頼みで移動していたレジスタンス戦闘員は前のめりに転んだ。

 その衝撃で剣が手から離れ、ガブリーラの方へ音を立てながら滑っていく。


「な、なんだ? 司令部!」

『わからない。デミ・ゴッドが停止した』

「再起動」


 ガブリーラが再び言い放つ。

 すると停止していたデミ・ゴッドが再起動したのだ。


「刻印」

『……!? 全戦闘員に次ぐ! デミ・ゴッドが乗っ取られた! 繰り返す、デミ・ゴッドが乗っ取られた!』

「なんだって!?」

「デミ・ゴッド、こっちに来なさい」


 ゆっくりとデミ・ゴッドが歩き出す。

 それを止めようと何人かが掴みかかる。

 だが圧倒的出力ゆえ止めることは出来ず、デミ・ゴッドがガブリーラに奪われたのだ。

 

 レジスタンス司令部ではデミ・ゴッドの操作を奪い返そうと必死にコマンドを打ち込んでいた。

 ルビーが叫ぶ。

 デミ・ゴッドに搭載されている緊急停止のコマンドを実行せよと。

 直ぐにコマンドを走らせるが、エラーが帰ってきた。


「駄目です! コマンド受け付けません!」

「なんですってー! 私の作ったOSオペレーティング・システムに不具合は無いです! もう一度走らせなさい!」

「……駄目です……」

「そ、そんな……私の生気の大発明が……。技術革命が奪われる……。ふわあ……」


 ルビーは思わず倒れ込んでしまった。

 レジスタンスはデミ・ゴッドを奪い返す事も停止させることも出来なくなったのだった。


 王城ではレジスタンス戦闘員達が狼狽していた。

 すると、脇で控えていた軍がガブリーラとデミ・ゴッドの前に出てアサルトライフルを構えた。

 レジスタンス戦闘員達は一斉に出口を目指して走り出す。


「殺しなさい」


 パパパパと乾いた音が連続で王城に響き渡り、レジスタンス戦闘員達は皆銃弾の雨に撃たれ蜂の巣になっていた。


「ふふ……アハハハ! 今日という日は最高ね! 蛆虫(レジスタンス)も消えて、煩い犬ども(憲兵)も消えて私の夢を遮る者は居なくなったわ! さぁ、これより人類の人類による人類のための新世界を作りましょう? 死体の片付けを頼むわ。後全州の報道記者を呼びなさい。これより開戦を宣言する」


 翌朝。

 テレビ、ラジオで臨時国営放送が全チャンネルで流れた。

 ガブリーラは記者が待っている王座へと姿を表した。

 カメラのフラッシュとテレビカメラがガブリーラに集中する。


「王国民の諸君。私、ガブリーラ・エンフォンスが宣言する。統一歴以前。人類がそのへんに転がる虫けらの様に扱われていた時。天界の天使達、魔界の悪魔達による国土の蹂躙。その悪行に英雄アレクシード・レイ・ヴァレフォルは心を痛めた。そして彼は石となり封印を行なった! 彼を石にしたのは憎き天使と悪魔だ! 今ここに天界、魔界に対して宣戦布告を宣言する!」


 より一層カメラのフラッシュが焚かれる。

 そして緊急号外としてテレビなどを持っていない家庭には新聞が配られた。





 そのニュースが流れている時アリスは自室に居た。

 ラジオからはガブリーラが開戦を宣言する言葉が聞こえてきた。

 ガブリーラは性格に難があると聞いていたアリスは気でも狂ったのかと思っていた。

 ラジオの電源を切ると2人の行方を探すべくして書いたポスターを持った。


「さて、このポスターを辺りに貼ってきましょうか……。ん? なにか光って……」


 アリスが机の端に置かれた布、天羽々斬を取り出した。

 鞘からは光が漏れている。

 天羽々斬は抜けと言わんばかりに刀が鼓動する。

 抜き放つと眩い光と共にアリスを包み込んだ。


 アリスが目を開くと、以前に見たことがある男性の姿があった。

 アレクシード・レイ・ヴァレフォルである。


「アリスよ。今まさに天界と魔界を巻き込んだ戦争が始まろうとしている。それを止められるのはアリス、お前だけだ」

「どういう意味ですか?」

「2人は王城、ガブリーラが操っているゴーレムの中にいる」

「エルシアさんとファルトさんですか!?」

「そうだ」


 アレクシードは以前話したときよりも長い時間話していられることを確認した。

 

「助けるには天羽々斬を使え」

「しかし、この錆びた刀身では……」

「アリスよ。お前なら扱える。全てが手遅れになる前に2人を救い出せ。その時天羽々斬は力を取り戻すだろう」


 アレクシードの姿が光に消える。

 それを呼び止めるがその姿は消え、アリスの部屋に戻っていたのだった。

 アリスは天羽々斬を鞘に収めると腰に帯剣し、家を出た。

 身体強化の攻撃魔法を自身に付与し時速70キロで道路を走り抜ける。

 王宮のあるアヴァロンまでは370キロメートル程だ。

 アリスは5時間掛けアヴァロンまで走り切る。


「ここも被害を受けたのですね」


 昨夜、レジスタンスが攻撃した余波がまだ残っている。

 住民や店舗のスタッフはガラス片を片付けていた。

 比較的無事だったレストランに入ると軽く昼食を摂る。

 レストランには数人の客がおり、戦争が始まることを憂いていた。


(やはりガブリーラ女王が宣言したことは王国民を不安にさせていますね)


 そんな事を思いながら昼食を摂り終えると金を払い王城へと向かった。

 王城に到着すると、記者やカメラマンが王宮入り口にて陣取っていた。


(正面からは入れませんね……。どこか入り口はないでしょうか?)

 

 入り口を探し王城の周囲を探す。

 王城の東側に小さな扉があることを確認すると、周囲に人が居ないか確認し聞き耳を立てた。

 中からは足音が2人分聞こえてくる。


(昼間の侵入は不可能ですね。夜まで待たないと)


 その時、以前ファルトが出した八咫鏡に似た高揚感を感じた。


(体が光ってますね。それも前よりも光が強い……)


 思考している間に光が消え、気分も元に戻った。

 一体あの瞬間何が起きたのか気になったが、王城の影に隠れ潜むことにしたのだった。





 ガブリーラは宣言を告げると共にすぐ軍を招集していた。

 その数5千人。

 全員がアサルトライフルやグレネード、ロケットランチャーで武装している。

 その中にデミ・ゴッドとガブリーラが居た。

 

「ガブリーラ女王陛下、軍の編成完了致しました」

「ご苦労さま。あ、私に魔導ベストは要らないわ。それに兵士に着せているベストも着ていても只の重りになるだけよ」

「いえ。装備の1つなので着せていきます。それに攻撃を防ぐ役割だけではないのです」

「そうなの? まあいいわ。兵站はどうなってるの?」

「はっ。資材運搬車も準備完了しております。特殊ライフル弾及び通常ライフル弾準備完了です」

「良い手際ね。ふふ……私も準備しないとね」


 ガブリーラは軍が控えている王城広場に出る。

 兵士は王城の他に他の駐屯地にも待機している。

 そこに通信で声を飛ばす。


「諸君、戦争よ。襲いかかる者は殺せ、逃げる者も殺せ、立ちふさがる者も殺せ、皆殺しよ!」


 軍から歓声が上がる。

 

「神格防御魔法リフレクション・フォールン、神格攻撃魔法アディショナルリインフォース発動よ」


 デミ・ゴッドが出撃する全軍に神格防御、攻撃魔法を付与する。

 そしてガブリーラは叫ぶ。


「開戦よ!!」


 それと同時に待機していた5千の軍勢は転移したのだった。






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