96進撃
王宮の膝下にある都市アヴァロン。
そこは夜も眠らない街と呼ばれ、電気が煌々と光り輝いている。
そして人が行き交う道路に突如として現れる。
4メートル級の大型ゴーレムと剣で武装した戦闘員50人。
辺りの人々が何かと騒ぎ始めた時、その集団が歩き始めたのだ。
堂々と自分たちの存在感を示すように剣を掲げ歩く。
一方アヴァロンの憲兵は市民からの通報を受け、100人前後の憲兵が現場へと向かっていた。
アヴァロンの憲兵は特別に軍からの払い下げ品の回転式拳銃と軍事用ゴーレムをもらっている。
憲兵達が車で防壁を築くと拡声器でレジスタンスに警告を発する。
「武装集団に次ぐ! 今すぐ武装を解除し大型ゴーレムを停止させなさい! これは警告である。従わない場合は発砲も辞さない! 繰り返す――」
「司令部。神格防御魔法の行使を」
『了解。神格防御魔法リフレクション・フォールン発動』
デミ・ゴッドを魔法陣が包む。
それと同時に50人の戦闘員にも魔法陣が現れ神格防御魔法が付与された。
憲兵達は投降の意思が無いと見たのか、回転式拳銃の通常銃弾を魔法貫通術式が書き込まれた特殊弾にリロードしていた。
「最後の警告だ! 後5メートルでも前に進めば発砲する! ゴーレムを待機位置に!」
払い下げ軍事用ゴーレムが憲兵達の前に立つ。
憲兵はその間から回転式拳銃を向け合図を待った。
レジスタンスは歩みを止めずにヘラヘラとした表情を浮かべつつ前に進む。
「撃てー!」
野次馬から悲鳴が上がる。
乾いた音が100発鳴り響き特殊弾がレジスタンス戦闘員に向けられ発砲された。
特殊弾は相手の防御魔法を貫き戦闘員を殺す……はずだった。
特殊弾は戦闘員の10センチ手前で弾かれ、あらぬ方向へと跳弾していく。
「な、何!? も、もう一度だ! 撃てー!」
やはりレジスタンス戦闘員の手前で弾かれる。
銃弾が効かないと分かるやいなや、軍事用ゴーレムを差し向けたのだ。
ゴーレム達は時速60キロで飛び出し、デミ・ゴッドに5体、戦闘員2人につき1体向かわせた。
隊長は銃弾が効かなかったのは距離があったのと強力な防御魔法を張っていると睨んでいた。
軍事用ゴーレムには対魔法兵装としてキャストブレイクと似た魔道具が備え付けられている。
それを使えばこの集団を制圧出来ると判断したのだ。
「司令部。身体強化を」
『了解。神格攻撃魔法アディショナルリインフォース発動』
再び魔法陣がレジスタンス戦闘員に付与される。
物理、魔力も強大な力で強化された。
その威力は凄まじいものだった。
「おら!」
レジスタンス戦闘員が剣を振るう。
鋼で出来た軍事用ゴーレムを内部機関諸共両断する。
50人全員がこの馬鹿げた威力の太刀筋を見せる。
一方デミ・ゴッドに向かった軍事用ゴーレムは魔道具を作動させる。
しかし、デミ・ゴッドの魔法は定義破綻せず展開されたままである。
軍事用ゴーレムがメイスをデミ・ゴッドに向け振り下ろすが、神格防御魔法に弾かれる。
弾かれ態勢を崩した軍事用ゴーレムにデミ・ゴッドが足を踏み降ろす。
軍事用ゴーレムはひしゃげ行動を停止した。
それを見ていた憲兵達はまるで化け物を見たかのように同様しだす。
隊長は回転式拳銃を連射するように命じる。
「いいから撃ちまくれ! あの化け物を始末しろお!」
「死ねえ!」
「倒れろ!」
特殊弾が乱れ飛ぶがレジスタンス戦闘員達は涼しい顔だ。
悠然と歩み進む。
「て、撤退! 態勢を立て直す!」
憲兵達は車に乗り込むと撤退していった。
それを見ていた司令部はアンカーを射出する。
狙いはアヴァロン憲兵署だ。
『神格攻撃魔法ミーティアライト発動』
光がアヴァロン憲兵署を包み消えた。
しばらくしてからレジスタンス戦闘員の場所まで衝撃波と音が伝わってきた。
皆、神格防御魔法リフレクション・フォールンで守られているので大丈夫だったが野次馬がガラスで怪我をしたり音で鼓膜が破れている者も居た。
それでもレジスタンス戦闘員達は王宮へと進軍する。
唯一生き残った憲兵の一部は王宮に軍の出撃を要請していた。
しかし無線の応答は無くノイズが只々聞こえてくるだけであった。
「クソ! なんで軍の応答が無いんだ! このままでは王宮にあの化け物が……。他の支部に応援を要請するしか無いか」
隊長は直様他の支部へ緊急連絡を取る。
他の支部からは約30名、計150人の応援を呼ぶことが出来た。
だがエデルガーデン憲兵署には何度無線を飛ばしても最後まで応答することはなかった。
既に消滅しているとは知らず。
30分後他の支部から増援が到着した。
レジスタンス戦闘員達は未だに歩いて進んでおり、王宮400メートル手前にアヴァロン憲兵と増援150人、計250人が陣取る。
憲兵の総力戦が始まろうとしていた。
レジスタンス戦闘員達もデミ・ゴッドと共に憲兵達が待ち受けている地点まで移動してきた。
進軍を一時停止すると剣を構える。
「確保オオオ!」
「おおぉぉぉ!」
憲兵250人がレジスタンス戦闘員に突撃する。
それでも尚レジスタンス戦闘員達はヘラヘラしているのだ。
「全員ぶっ殺せ!」
「うおおおぉぉぉ!」
レジスタンス戦闘員も突撃してくる憲兵に剣を持って立ち向かう。
憲兵後方から攻撃魔法が飛来する。
レジスタンス戦闘員何名かに当たるが全くのノーダメージ。
手前で弾かれてしまう。
憲兵も負けずと身体強化の攻撃魔法を自らに施し剣を振るう。
鍔迫り合いになり憲兵はこれでもかと力を込める。
だが、レジスタンス戦闘員はまだヘラヘラしている。
「おたくさぁ? まさかこれが本気って言うのかな?」
「何!? ぐっ!」
次第に押し込まれ態勢が崩れる。
魔法が飛んでこようが、脇から剣が振るわれようが気にした様子はなく、そのまま剣を振り下ろす。
咄嗟に防御魔法を詠唱しレジスタンス戦闘員の剣撃から逃れようとしたが、防御魔法を物ともせず剣が突き刺さった。
「ぐあ……」
「よくも!」
同僚が殺られ、近距離で攻撃魔法が放たれた。
暴風が発生しレジスタンス戦闘員が空に吹き飛ばされ、10メートル程上空から地上に落ちた。
これには仇を取る事ができたと同僚に祈るが、自分の胸から剣が生えていることに気がついた。
「かはっ……ばか、な……」
「へへ。そんな攻撃痛くも痒くもないんだぜ?」
剣のグリップを強く握り憲兵を足蹴りにする。
憲兵から剣が抜け、血が広がる。
そこからは一方的な戦闘だった。
250が200に、200が150に。
憲兵の兵力が7割を切る。
それでも果敢に挑み続けた。
開戦から10分。
ついに最後の1人が討ち取られた。
『司令部から各戦闘員へ。障害は取り除かれた。王宮へ攻め入れ』
「了解」
レジスタンス戦闘員とデミ・ゴッドが王宮の大門の前に到着すると、王宮の大門が開かれた。
中に入ると軍隊を両脇に控えさせ、レッドカーペットの中央を歩くガブリーラが居たのだ。
「ようこそ。蛆虫共。私の王宮へ」
「なんだと! このクソアマ!!」
「おい、よせ!」
「うるせえ! どうせ俺たちには傷つけられないんだ! 最後はこのクソアマ殺すんだからいいだろ!」
そう言いながら身体強化された体でガブリーラに向けて突撃したのだった。
「☆☆☆☆☆」を押して応援していただけると嬉しいです!




