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天使と悪魔の片翼の輪舞曲~One wing of them~  作者: 白築ノエル
5崩れる封印
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93平凡な日々の終わり





 文化祭2日目。

 今日は一般公開であり、日頃世話になっている地域の人々やアークホワイト学園への進学を考えている学生、生徒の家族などがやってくる日だ。

 そして今年の一般公開は例年にも増して警備が厳しい。

 新生徒会と新風紀委員会により警備が強化されたのだ。

 出入り口の校門には常に風紀員が常に4人で出入りする人物を監視する。

 校内にも警備会社から派遣された私服警備員を配置し、そのすべてを新生徒会会長のロビン・ジャックが統括する。


 学園にいち早く集まった新生徒会と風紀委員は校内をチェックして回る。

 各自が無線機を持ちロビンに報告を逐一する。


『1階異常なし』

『2階異常なし』

『3階異常なし』

『4階異常なし』

『体育館異常なし』

「了解。各自教室に戻り待機せよ」


 一旦ホームルームの為に各自が教室に戻る。

 




「はい。今日は文化祭2日目、一般公開の日です。学外から人が来ますので失礼が無いようにしてください。以上です」

「よし! 2日目も頑張っていこうか!」

「おー!」

「男子諸君、今日は俺も料理当番だから安心しとけよぉ!」

「よ、ゲルトラウド!」


 料理の男子メンバーをファルトが連れて行く。

 エルシア、アリス、リュドミラはオカルト研究部へと向かう。

 オカルト研究部の部室は現在お化け屋敷になっている。


「エルシア君、アリス君、リュドミラちゃん! 今日もよろしく」

「よろしくおねがいしまーす」


 3人は暗幕の裏でそれぞれの服に着替える。

 エルシアは魔女衣装、アリスは死装束衣装、リュドミラはフランケンシュタイン衣装。


「それじゃ将来有望な学生や子供を拐ってきてくれたまえ!」

「リンネ部長、言い方が悪いですよ」

「やっぱり魔女だから拐っちゃうって言う設定ですか?」


 エルシアは手をクワっと前に出し脅かす風を装っている。


「そうだよ! 設定は大切だアリス君!」

「そうですか」

「そうだ!」


 アリスは設定っと呟きながら髪の毛をすべて前へと下げる。

 更に目を見開き、肩を落とす。

 それを見ていたリンネはよく出来ていると褒めるのであった。

 

 3人共着替えが終わると同時に校内、校外放送が流れた。

 文化祭2日目の開始である。


 エルシアとリュドミラは部室から出ると、2人は別れて校内を回ることにした。

 学園入口まで移動すると既に一般人が校内に入っていた。

 エルシアはココぞとばかりにオカルト研究部のお化け屋敷を宣伝していく。

 学生受けは悪かったが、子供。

 特に男児には好評だった。


 いろいろな場所を回り続け宣伝活動に疲れたエルシアは尿意を催しトイレへと入った。

 一般人の親子だろうか、40代ほどの女性と子供が手を洗っていた。

 個室に入ると便器に座る。

 すると突然眠気に襲われた。


「ううん……文化祭で疲れたのかな……ねむ、い……」





 その日学園には20人の特務機関のエージェントが入り込んでいた。

 その全員が機械式魔道具の通信機を持っている。

 彼らエージェントは袖の中にマイクを仕込み、片耳にイヤホンを襟から出している。

機械式魔道具と機械の通信機では機械式魔道具の方が圧倒的に小さく携帯しやすい。

 メリットしか無いように思えるが、本体価格が機械より高いのがデメリットだ。

 しかし王国の機関には潤沢な資金源がある。


「ブラボー1対象発見。これから尾行するわ」

「ブラボー3同じく発見。こちらは支援する」

『了解、対象付近の私服警備員、風紀委員に留意せよ』

「了解」

「了解」


 2人のエージェントが対象エルシアを尾行し始める。

 尾行はするが視線は常にあちらこちらに向いている。

 常に一点を見ていたら不審がられるだろう。

 かと言って対象を見失わない様に視線の端には常に捉えているのだ。


「ブラボー1前方に私服警備員2名、風紀委員1名発見。留意されたし」

『了解』


 2人の男と1人の女子生徒とすれ違う。

 後ろには支援のエージェントがいる。

 報告をしてこないと言うことは怪しまれていないと言うことだろう。


「(対象はトイレね……)ブラボー3は離脱せよ」

『了解』

『ブラボー1は対象を確保後搬入口に居るチャーリー6に渡しもう1人の対象を探せ』

「了解」


 ブラボー1がトイレに入ると親子とすれ違った。

 出ていたことを確認するとズボンのポケットから瓶を取り出した。

 中には液体が入っている。


「我の威を示せ、ミスト。我の威を示せ、ウインド」


 生活魔法のミストとウインドを使い、瓶の中身を気化させ気化した液体を風で送る。

 10秒ほどすると個室からガンっと壁に何かが当たる音がした。

 ブラボー1は身体強化の攻撃魔法を使い、素早く個室に入り込む。

 対象エルシアを抱えると仲間が確保している搬入口へ魔道具を使い短距離転移する。


「チャーリー6。対象を頼む」

「了解」


 運送業者を装ったチャーリー6に対象エルシアを渡すと、エルシアからアクセサリーを剥ぎ取った。


「ブラボー1、これを持って校内を歩きまわれ」

「了解」


 チャーリー6はダンボールに対象エルシアを入れ、蓋を閉じるとガムテープで止める。

 そしてダンボールを抱え外に止めてあるトラックへと向かうのだった。


「アルファ2より各部隊へ。もう1人の対象は家庭科室に居る模様。他の生徒が居て手出しができない。制圧するか?」

『指揮車よりアルファ2。武力行使は許容出来ない。繰り返す、武力行使は許容出来ない』

「了解。対象の監視を続行する」


 数分後、現地協力者を確保したと通信が入る。

 アーノルドの取り巻きに付いていた女子生徒だ。

 攻撃魔法のブレインダウンにて催眠状態にし、アーノルドの役に立つと言葉巧みに誘導し手紙を持たせたのだ。


『指揮車より各隊。キルゾーンは校舎裏だ。手の空いている物は急行せよ』

『ブラボー5了解』

『チャーリー1了解』

『チャーリー3了解』

『アルファ1了解』

「アルファ2了解」


 アルファ2は家庭科室に手紙が届けられたことを確認し報告する。

 対象ファルトが家庭科室を出たのを見て尾行を開始した。

 尾行を開始してから予期せぬことが起きた。

 クラスメイトが茶々を出すために尾行していたのだ。

 アルファ2はそれをどうにかするべく尾行を一時辞め、尾行をしているクラスメイトに声をかける。


「すみません。3年C組はどこでしょうか? 私方向音痴でして……」

「え? あ。こっちっす」


 クラスメイトの尾行を止める事に成功しアルファ2は一旦対象ファルトから離れるのだった。





「ったく。校舎裏に呼び出すなんざ何だ? こういうのは定番の告白とか有りそうだが、俺はエルシアがいい」


 ファルトは待ち合わせ場所の校舎裏に到着すると辺りを見渡した。

 辺りには人1人居ない。


「まだ来てないのか」


 校舎に背を預け空をのんびりと眺めていた時だった。

 急に八咫鏡が具現化し、光を放ったのだ。

 それに驚いたファルトは思わず声が出た。


「うわ!? なんだ!?」

「制圧失敗。増援を送れ」

「お前ら何者だ!」


 何も答えずにファルトに襲いかかる。

 その動きは洗礼されており、戦うために鍛え上げられた体術を行使していた。

 3人がかり(・・・・・)でファルトを襲う。

 それぞれの動きが見事な連携をし魔法を使わせる機会を奪う。


「クソ! この!」


 ファルトは包囲網の甘い場所を突いて距離をとる。

 だがそれは計算された場所だった。

 突如後ろから首筋に強い打撃が加わる。


「ぐあ……」


 それは意識を刈り取るには十分だった。


「制圧完了」


 最後に聞いた言葉はそれだけだった。







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