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天使と悪魔の片翼の輪舞曲~One wing of them~  作者: 白築ノエル
5崩れる封印
92/113

92文化祭当日





 文化祭当日。

 1日目は校内向けのイベントだ。

 A組は飲食をするに当たって他の生徒より早く登校していた。

 レンタルしていたメイド服20着は前日に学園に届いており、既に女子生徒が着ていた。


「……ねえ? これスカートの丈短くない?」

「私も思った! これ絶対短いよね」

「男子たちに任せたのが失敗だわ」


 女子はイヤイヤ言いながらもメイド服を着て更衣室から出てきた。

 幸いなことに教室には男子が居らず、女子は机を2つに合わせテーブルクロスを引いていた。


 男子はと言うと家庭科室で料理を作っている。

 そこは普段料理をしない男子が料理をする戦場と化していた。


「なぁ、オムライスってどうやって作るんだ?」

「知らねーよ! そこの本に書いてあるだろ」

「油はどこだ?」

「見ろよ。ジャガイモがこんなに小さくなったぞ」


 男子が悪戦苦闘するなか1人の救世主が現れた。

 その人物はゲルトラウドだ。


「お前らぁ! 料理を舐めんじゃねえぞぉ! これはこうやって作るんだ」

「おお!」

「お前意外と家庭的なんだな。見直したぜ!」


 夏休みでの海旅行もそうだったが、ゲルトラウドは料理上手だ。

 困っていたオムライスやポテトの揚げ、ジャガイモの皮むきなど器用にこなして行く。

 唯一進んでいたカレーライスも完成したのだった。

 完成した料理は運ばれるまでの間冷蔵庫にて保存される。

 注文が入った時に電子レンジで温められ提供される。


「ふぅ。これだけ作ればいいだろ」

「助かったぜ! ゲルトラウド!」

「良いってことよ。さあ! 皆でメイド服の女子を見に行こう!」

「おう!」


 そこだけは変わらないゲルトラウドだった。


 男子が教室へ赴くと、そこには制服を着た女子の姿があった。

 一瞬呆けてしまったが直ぐに持ち直した。


「な、なんでメイド服じゃないんだ!」

「まだホームルームもあるのよ。残念だったわね。てか、あのメイド服スカート短すぎよ!」

「そうよそうよ!」

「ぐふふ! 俺たちが周りに周って探し当てたメイド服だからな。この日のためにカメラも用意したしな!」

「サイテー!」


 女子からブーイングが上がる。

 そして何故かファルトは女子側に就いていた。


「ファルト! お前なんで女子側に就いてんだ?」

「ファルト君は私たちの事あなたたちと違っていやらしい目で見ないからね」

「俺はエルシアのメイド服以外興味ないからな。エルシアが着ないなら他は興味ない」

「それってつまり……好きって事? キャー! 告白よー!」


 女子の中でファルトの好感度が上がり、逆にほかの男子たちの好感度が下がっていく。

 これではいけないと察し、直ぐに話題をそらすことにした。


「そ、そうだ。料理できたぞ!」

「本当に? 生ごみが出来たんじゃなくて?」

「失礼な。こいつ、ゲルトラウドが作ったんだぞ」


 アリスがふと思い出したのか声を漏らした。


「ゲルトラウドさんは料理が上手でしたね」

 

 そして何とか話題そらすことに成功したのだった。

 女子の一部が家庭科室に移動しカレーの味見をする。

 意外に上手に出来ていることに感心したのか、これなら出せると言っている。


 教室に戻る頃には他の生徒も登校していた。

 もちろん他のクラスの出し物がある生徒は早めに登校している。

 そしてホームルーム。


「はい。文化祭1日目が始まります。ハメを外し過ぎないように気をつけましょう」


 それだけ言うとシルフィーは職員室へと戻っていった。

 文化祭でもいつもどうりのテンションである。


「よし! 女子はメイド服に着替えて準備だ!」

「男子が仕切らない!」

「誰が仕切るんだよ!」

「このクラスには委員長が2人居るでしょ。丁度男女でね。っていう事でよろしくね!」


 エルシアとファルトに注目が集まる。

 いつもと同じくエルシアはテンションを上げて行く。


「じゃあ! 担当の女子は着替えよー!」

「はーい」

「男子の料理担当は行くぞー。俺部活の方で呼ばれてるからがんばれよ」

「おう! こっちにはゲルトラウドが居るからな!」

「あ、わりぃ。俺もだわ」

「はぁー!?」

「みんなー! エルシアさんの特製メイド服ギリギリ間に合ったよー!」

「えっ? エルシアのメイド服だと!?」

「おい、ファルト部室行くぞ」


 ゲルトラウドに制服を引っ張られながら部室に連行されるファルト。

 そして料理のリーダーを失った男子たち。

 再び戦場と化した家庭科室で男子たちは見様見真似で料理を作り始めるのであった。

 唯一出来た料理はジャガバターだった。


「うーん。これにあってるのかなぁ?」

「エルシアさん素敵ー!」

「似合ってるわよ」

「そうかなー?」


 エルシアは更衣室の鏡の前でメイド服に着替えた自分を見ていた。

 頭にはフリフリのカチューシャを着けている。

 本人には自覚はないが周りからの分類は美人に入るエルシアである。

 体に残っている傷跡はニーソックスで隠す。

 腕の傷跡はメイド服で隠れるので良しとした。

 そしてエルシアの傷跡を見たクラスメイトの女子達はその理由を聞いたが、エルシアはそれとなく誤魔化して対処した。


 着替え終わった午前担当の女子達は教室に戻ると開始の合図を待った。

 そして校内放送が流れ、遂に文化祭1日目が始まったのだ。





「おかえりなさいませ、ご主人さま」

「オーダー入ります!」

「おいしくなーれ! 萌え萌えキュン!」


 最初は反対していた女子であったが、始まってみればノリノリで接客する女子であった。

 そして来店した生徒たちから噂が広まったのか、美人がいると校内中に囁かれた。

 それを見に1年A組には男子生徒の長蛇の列が出来ていたのだった。


「なんか混んでない?」

「噂が流れてるらしいよ。美人が居るって」

「それって……」

「エルシアさんだよね」


 待機していたクラスメイトが見たのは他のクラスメイトと同じく丈が短いスカートと背中が大胆に開いたメイド服を着るエルシアだ。


「あれは反則よね」

「髪が揺れるたびにチラ見する背筋とうなじ。実にけしからん」

「ちょっと、変態っぽいよ!」

「私は健全!」


 2人がそんな話をしていると客から声がかかった。

 返事をし、直ぐに駆けつけるのであった。

 そんな中エルシア以外にも注目を浴びている人物が居た。


「おかえりなさいませ。御主人様」

「おぉ……。これがロイヤルメイド……!」


 アリスである。

 新人には真似できない礼儀作法。

 日頃社交界に出て学んでいるアリスだからこそ出来る事だ。

 この学園にも政界関係者は居るが、メイド喫茶をやっているのは1年A組だけである。


 そして午後。

 遂に男子がメイド服を着るときがやってきた。

 手の空いている女子が担当の男子を引っ張ってきたのだ。


「本当に着なきゃ駄目か?」

「着なきゃ駄目! 絶対!」

「これは覚悟を決めるしか無いか……」


 校内に新たな噂が流れた。

 先程まで美女が居たメイド喫茶が女装喫茶になったと言う噂だ。

 それはすぐに広まり今度は女子生徒の長蛇の列が出来たのだ。


「メイドさ~ん」

「ご、ご主人さまぉょ……」

「声が小さーい! 私達はなんだっけ~?」

「クッ……ご、ご主人さまお呼びでしょうか」

「……ぷっ! アイスコーヒー1つ持ってきて」

「(こいつ……)かしこまりました。ご主人さま」


 等々。

 男子には屈辱的な体験になったとか。


 1日目の文化祭が終了し、次の日に備えて準備をしていた。

 使い終わったフォークや箸、皿、調理器具を洗い、余った料理は次の日に持ち越せない物のみ男子が責任を持って食べたのであった。





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