90部活の出し物とレジスタンスの野望
金曜日の放課後。
オカルト研究部の部員達は部室である資料保管室に集まっていた。
「夏休みは満足したかね? 我々オカルト研究部は海よりもふかーい仲で結ばれている。海に置いてきぼりにされたことなど微塵も感じていないのだ!」
(ウソつけ)
(絶対嘘だ~)
アリス達はリンネが言っている事を嘘だと見抜いていた。
否、これは当てつけだ。
「では本題に入ろう! ミルキー、説明をしたまえ!」
「今年も文化祭の時期がやってきました。オカルト研究部が発足して以来3度目の文化祭です。今日は出し物を決めたいと思います。ちなみに去年は部員も少なく、予算が割り当てられずに流れてしまいました」
(今年は私達が入ったから予算が降りたのですね)
「では出し物を決めたいと思います。僭越ながら私からBLハウスなんてどうでしょうか? ここに男3人居ますので、××××××とか! 生の声を仕切りで挟んで!」
「ここからは俺が仕切るぞー。ミルキーは病気なんだ」
トラヴィスがミルキーの代わりに進行する。
その間にもミルキーは1人で妄想に浸っていた。
リンネも文句は言わずに進行を任せるようだ。
「では誰か出したいものはあるか?」
「私は王道のお化け屋敷を提案する!」
リンネの声を張った提案にトラヴィスは資料保管室に置かれていた黒板に書き込んでいく。
「次、誰かあるか?」
「むしろオカルト研究部でお化け屋敷意外の選択肢はあるのか?」
ファルトがぶっきらぼうにツッコミを入れる。
その答えにリンネが不敵な笑みを浮かべる。
そしてこう言った。
「お化け屋敷以外にないじゃないか! 部長権限発動! 今年の出し物はお化け屋敷だ!」
当然の如く全く違和感なくお化け屋敷と言う選択肢に収まった。
次は配役を決める。
お化け屋敷にお化け役が居なかったらただの暗いだけの屋敷だ。
「配役を決めたいと思う。ミルキーは魔法で演出は確定っと」
「トラヴィス先輩はゾンビ人形動かすんですか~?」
「そうだな。俺はゾンビ君を操作する。ほかは居ないか?」
と言ってもお化け屋敷など行ったことがない面々ばかりで、どの様な役があるか分かっていないのだ。
そこでリンネがまた声を上げる。
「では私が教えてあげよう。アリス君は死装束で脅かし役! ファルト君は唐傘の操作! ゲルトラウド君は冷やしこんにゃくを吊るしてくっつける役!」
「なんか俺だけ適当じゃね?」
「気のせいだよ! エルシア君とリュドミラちゃんは客寄せ! これ大事。そして私は受付!」
そう言うとリンネは後ろにあった箱から衣装を取り出した。
いわゆるコスプレと言うやつだ。
三角帽子と外套で組み合わせた魔女の衣装、ネジのカチューシャを頭につけビンテージスーツを着るフランケンシュタインの衣装。
「2人にはこれを着てもらうよ!」
「き、着るだけなら~」
「よし! 文化祭まで残り3週間! ファルト君には唐傘の操作技術を習得してもらうよ。詳しくはトラヴィスから聞いてほしい」
「わかった」
オカルト研究部が文化祭に出す物は決まった。
予算が降りた今オカルト研究部を止められるものは居ない。
コスプレ専門店に衣装をレンタルするのであった。
★
文化祭で学園が盛り上がっている中、違う場所では違う盛り上がりをしていた。
それはレジスタンスだ
レジスタンスエデルガーデン支部はシルヒハッセ邸関係者襲撃事件から数日後に行動を始めていた。
ことの発端は王国がアリスの蘇りの真相を知ってからだ。
王国はその力を利用するための技術を開発していたのだ。
「フレドリックさん。例の魔法術式が届いた様だ」
「ご苦労。ルーファス早速ルビーに渡して開発を急いでくれ」
王国に潜ませたスパイ。
今度情報をリークさせたのは秘密技術局のデータであった。
リークされた物は魔法。
名を魔法外部補助術八式対神格能力減退魔法である。
「ルビー。これをお前に渡すぞ」
「おやー? 新技術ですかー? 良いですねー。いつの世も新技術を取り入れてこその技術職です。今回の新技術はなんですかー?」
「神へと至る力を制御する技術らしい」
「神と来ましたか! 私は技術者で神なんてものは信じていませんが、居るなら利用しない手はありませんねー! ……この技術書にはエネルギー源が書いていませんが、どうしてですかー?」
ルビーが尋ねる。
それにルーファスが忘れていたのか、手を叩いて声を発した。
「そうだそうだ。エネルギー源はこのエデルガーデンにいる片翼の2人らしいぞ。そいつらが神の力と繋がっているらしい。で、そいつらを組み込んで初めて完成する魔法技術だってさ」
「なんと素晴らしい! 我々は遂に禁忌を犯そうとしているのですね! いいですねー、私もここの開発長として是非この魔法技術を会得したい。その為なら1人や2人犠牲になっても何の問題でもないですねー!」
ルビーは技術者としての感が告げていた。
この技術は世界を変えると。
ルーファスを置き去りにすると独り言を呟きながら研究室へと入っていく。
「さて! 早速開発に取り掛かりましょう。ベースは以前データを取ったゴーレム・エクス・マキナを参考にしましょうか。あれは消費魔力が多く、実用には耐えられませんでしたがこの術式があれば欠点を克服するどころか兵装を追加装備させられますね!」
ゴーレム・エクス・マキナの設計図を引っ張り出し机に広げる。そして更に上に紙を広げた。
そこに新しいゴーレム・エクス・マキナの設計図を書き込んでいく。
魔法を収める魔石は最高品質の物を利用し、エネルギースキームを考えていく。
「出来る。私なら神に至る力を制御できる! 腕の見せ所ですねぇ! やはりレジスタンスに入ってよかった。私の技術は世間一般的には型に当てはまらないからね」
相変わらずの独り言を呟きながらも手は止まらず、まるで以前から存在していた技術の様にそれを組み立てていく。
魔石に魔法を使って魔法外部補助術八式対神格能力減退魔法を書き入れていく。
今のルビーの瞳には狂気すら浮かんでいた。
「前回のように核を破壊されないように外側はチタン合金、内側はイリジウム合金で熱への対策を施しましょう。骨格はチタン合金、アクチュエータは油圧に! 全長は4メートルでいいですかね。2人片翼を内蔵するのでそれぐらいが良いでしょう。後起きないように麻酔と栄養剤を付けましょうか」
素材の値段を考えないで設計していく。
どうせ素材は盗んでくるため値段は気にしていないのだ。
「フレドリックさん、ルビーに渡したら早速研究室に籠もったぜ」
「それで良い。彼女はそれが一番使えるのだ。ルーファスも思わないか?」
「当然。あいつには研究室がお似合いだな。だが無茶な要求されるぜ?」
「それを何とかするのが俺たちだろ?」
だがこの時王国もレジスタンスも気づいていなかった。
たかがどこかの神と高をくくっていたのだ。
エルシアとファルトが行使する神の力の原点は決して触れてはいけない神だということに。
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