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天使と悪魔の片翼の輪舞曲~One wing of them~  作者: 白築ノエル
1出会い
9/113

9神之命





「守護神を降臨させる場合、何が起きるのか儂にもわからん!」

「えっ!」

「おい!?」

「とりあえず守護神に侮れない様に気をつけるだけかの? まあなんとかなる!」


 最後は注意を放り出して気合論に走った。

 それには2人共心配になってきた。


(本当に大丈夫か……?)

(師匠大丈夫なのかなぁ? 心配……)

「ほれ、魔法を発動させい」

「は、はい! ファルト行くよ!」

「おーけーおーけ。 エルシアも行くぞ」


 2人が魔力を込めると魔法陣が光だした。

 次第に魔力が高まりだし光も強く、輝き始めてくる。


 その時異変に気がついたのはエルシアだった。


「あ、あれ?」


 先程まで魔法陣を制御していた魔力が唐突に自分の元から離れ、魔力だけが消費され始めたのだ。

 流石にこれはファルトも気が付き、ネルガンへ声を出した。


「お、おい! なんか変だぞ!」

「なんじゃ? 何があった?」

「魔力の制御が俺たちから離れて……魔法が暴走してる!」

「い、いかん! すぐに魔法を止めるんだ!」


 言葉を交わしている間にも異変は進行していた。

 空には雲がかかり、暴風が吹き荒れる。


「どうやって止めるんだ!?」

「魔法陣を消すのだ! 一部でもいい! 早くするんじゃ!」


 ファルトはとっさにつま先を使い魔法陣の一部を蹴り崩そうとした。

 が、魔法陣は発動し続けより一層光が強くなる。


「消えないぞ! どうすんだ!」

「ファルト……これ暴走したら爆発するの?」

「大丈夫だ。俺がなんとかする! しっかり俺にしがみつけ!」

「う、うん」

「いくぞ! 我の威を示せ! グランドブレイク!」


 魔法陣に放たれた攻撃魔法が地形に直接干渉し、ファルトの周り一帯の地面を破壊し尽くす。

 これにはファルトもネルガンも魔法陣は消滅したと思った。


「ねぇ……土煙の……周りが明るいよ! 魔法陣が消えてない!」

「なん……! 魔法陣の外に出るぞ!」


 魔法陣を出ようと外に踏み出そうとした瞬間、なにか透明な壁にぶつかったのだ。

 それに手を伸ばし、何かの壁があることを確認すると魔法陣すべての方向へ手を伸ばした。

 結果、魔法陣を囲むように魔法の壁が生成されていたのだ。


「結界魔法か! クソっ! なんとかエルシアだけでも逃さないと……!」

「だめじゃ! 爆発するぞ! 急いでなんとかして逃げるんじゃ!」

「クソっ! 今あるありったけの全力だ! 我が威を示せ! マナ・エクスプロージョン!」


 全身から魔力が抜ける感覚が走り、魔力が大爆発を起こした。

 それと同時に前に駆け出し魔法陣から抜け出そうとする。


「うおおお! ガッ!」

「きゃ!」


 そこにはファルトが今ある全力で放ったマナ・エクスプロージョンを物ともせずにある結界。

 流石にファルトも覚悟を決めエルシアに覆いかぶさった。


「エルシア! ファルト!」


 結界の外からネルガンの声が聞こえてくる。

 すでに目も開けていられないほどの光りに包まれ、迫りくる魔力の暴走という爆発の結果に耐えようとしたその時、光が天を突いた。

 雲は円形に吹き飛び暴風は止んだ。


「な、なんじゃ……何がどうなった?」

「……? 爆発……しない?」

「魔力が安定してる? 私達助かったの?」


 2人は立ち上がると辺りを見回した。

 光が2人を囲み空へと伸びている。

 そして空には巨大な門が現界している。


 その門は静かに開くと、桜の花びらがひらりひらりと降り注いだ。

 そして門の中から何かが現れたのだ。


『私を呼んだのはお前たちか?』


 直接頭の中に声が響いてくる。


「だ、誰だ!」

『先から失礼な小童共だ。この私を呼び出しておいてこれか』

「もしかして私達の魔法で降臨した守護神様ですか?」

『守護神? 否。 私は現世(うつしよ)幽世(かくりよ)の渡守仕る大御神が一柱たる*****様の代行者』

「? 今なんて言った?」

『まだその境地には至っていないか』


 何かを発音したようだが、エルシアとファルトにはノイズがかかったかのように聞き取る事ができなかった。

 そこまで話し終えると次第にその姿が顕になった。

 金色の髪の毛と九尾の尾、耳を持つどこか神聖な礼装を纏った女性だ。

 そこまで認識が及ぶと辺り一帯に重く伸し掛かるプレッシャーが放たれた。


『私をこの現世に召喚させし者に試練を与える』

「ぅぁ……」

「くぅ……なんていうプレッシャーだ」


 思わず2人は膝をついてしまう。

 それを見下す代行者。

 その場に動ける者は居ないかと思われたが1人立ち上がった。


「儂の……教え子に何をしてくれる!」

『ほう。脆弱な人の子の部外者が立ち上がるか』

「先程の魔力制御の件、結界魔法の件。お主が仕組んだ事じゃろ!」

『然り。私を呼び出す者が居るという事実に干渉した』

「それでこれは何事か! すでに恐怖と覚悟を決めさせておいてまだ試練などと言うのか!」

『人の子が私に楯突くか。私に楯突くことは大御神*******様への侮辱。ここに天命を言い渡す』


 そう言うと代行者は人差し指をネルガンに向けた。

 その刹那瞬間光が貫いたのだった。

 ゆっくりと身体が傾き、その場で倒れ伏してしまった。


「あ……がぁ」

「し、師匠……!」

「お、おい! 爺さん!」

『天命は死。明日の24時のタイミングでその魂は輪廻へと戻る』

「そ、そんな……師匠!」

「お前……くぅ」


 反抗する意思はあるもののプレッシャーと言う圧が2人を押しつぶし続ける。

 それを黙って見続ける代行者。

 最初にエルシアが動いた。


「ぐぬぬ……! 良くも師匠を!」


 エルシアの片足が上がった。

 ゆっくりとだが確実に立ち上がっていく。

 それを見たファルトも負けずと立ち上がる。


「エルシアだけにかっこいいのを見せられると、俺も頑張らないと示しがつかないよな」

『ほう。立ち上がるか』

「俺たち」

「私たちを」

「侮るな!」「侮らないで!」


 それを聞き届けると、重く伸し掛っていたプレッシャーを消した。

 その時初めて表情に変化が現れた。

 少し表情が柔らかくなり、拍手している。


『素晴らしい。さすが私達と同じフラグメントの子らだ。いや、2人合わせて同じか』

「一体何を言っているんだ? 俺はカオスのフラグメントだぞ?」

『お前たちは自分がどういう存在か理解できていない。基礎となる人、そして大御神が分けた悪魔のカオスと天使のコスモスのフラグメント。お前達は2人で1つのフラグメントを共有している』

「私達が2人で1つのフラグメント?」

『そうだ。1人でハーフオールのフラグメント。2人でオールのフラグメントになる。そして2人が子をなせば完全なオールのフラグメント』


 聞いた途端エルシアの耳が赤くなった。

 ファルトもそっぽ向いている。


『初いな。さて私を召喚した話だが――』

「ゴホゴホ!」

「エルシア?」

『?』

「ファルトごめん……私、また……」


 口から血を溢れ出し再び倒れてしまった。

 前回はネルガンが居たため重症になる前に助かったが、今ネルガンは倒れている。

 そしてファルトも回復魔法が使えないため詰んでしてしまっていた。


「おい! しっかりしろ! エルシア!」

『病か。ファルトと言ったか。エルシアを助けたいか? 私にはその方法を持っている』

「本当か!? すぐに助けてくれ!」

『奇跡には代償が付き物だ。それでも尚奇跡を望むか?』

「どんな代償だって受け入れてやる! だからエルシアを頼む……!」

『その覚悟しかと見届けた』


 パンっと手のひらを合わせ奇跡を発動させた。





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