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天使と悪魔の片翼の輪舞曲~One wing of them~  作者: 白築ノエル
4沈黙の夕焼け
86/113

86帰還





 ファルトは引きこもりの神、天照と話していた。


「だってぇ! 須佐之男命(スサノオノミコト)が怖かったんだもん! 私悪くないもん!」

「お前口調変わってんぞ」

「……コホン。そういう訳あって私は助けに行けなかったのよ」

(何だこの神)


 意外とポンコツな天照に呆気にとられたが直ぐに会話を戻す。


「人が来ていたのは分かっていたんだな?」

「分かっていたとも」

「なんでこの高天原だったか。その一部に人が引き込まれたんだ?」

「ああ、そのことね。私の不在を危惧した高天原の他の神が手頃な人間を引き入れたらしいよ。だって私は高天原を統べる神だからよ。ちなみに高天原以外にも弟。月読命(ツクヨミノミコト)が統治する夜之食国、クソ兄……須佐之男命(スサノオノミコト)が統治する海原がある」


 天照の話によるとこの世界に引き入れられた人は天照を引きずり出すメッセンジャーの役割を持っていたらしい。

 だが神はそれを伝えず手頃な人間を引き入れていたらしい。


「また身勝手な神も居るもんだな。何人死んだと思ってるんだ」

「それはそう。……この娘も異形に死にゆく人の子を殺したんだね。だいぶ心の重りになっているようだ」

「やっぱりか……」


 エルシアは気丈に振舞っていたが、だいぶ参っていたようだ。

 以前汽車での戦闘で人を殺した事は有ったが、それは悪人だったこともあり罪悪感はあまり感じなかった。

 だが今回は幼く無垢な子供だった。

 心に掛かる負荷は計り知れない。


「まあ、もう分かっていると思うけどこの場は私の引きこもり場所だよ。この娘に封印を解除されてしまったがね」

「駄目神」

「駄目神いうなー! 私だって好きで引きこもってる訳じゃないもん!」

「それが素なのか?」

「……」

「……」


 暫し沈黙が続き気まずい空気が漂う。

 それをかき消すかのように天照が喋りだす。


「そ、そうだ。外は夜になってたかい?」

「いや、夕方だ」

「そうか。まだ夜にはなってなかったか。私が居ないと高天原は闇に包まれてしまうからね」

「だったら引きこもるな駄目神」

「だから駄目神いうなー!」


 天照は若干涙目になりながら否定する。

 ついでにぽかぽかと胸板を叩いてくる。


「はいはい。で、今まだ精神体が死んでない人間は居るのか?」

「ぐず……。まだ10人残ってる」

「今すぐ元の世界に戻してやってくれ」

「分かった。たやすい御用だ」


 指をパチンと弾く。

 ただそれだけの動作ですべては事を済ませたのだ。

 以前涙目だが胸を張って自分のした事を自慢したいようだ。


「どう? 私だってできる神!」

「はいはい。で、いつになったらエルシアの体を返してもらえるんだ?」

「流すなー! ここまで馬鹿にされたのは初めてだよ。いつもほかの神からはもてはやされてるのに!」

「だろうな」

「もう! 八咫鏡はあげる! 私からのプレゼントと思いなさい!」


 そう言うと天照は八咫鏡をファルトへ押し付けてくる。

 邪魔だから要らないと言おうとしたが、また泣きそうだったのでファルトはそれを受け取るのだった。

 すると不思議なことに八咫鏡はファルトの体に吸い込まれていくように消えていく。


「お、おい。消えたぞ」

「お主の体と一体になったんだよ。これで私から出来ることは何もない。安心して帰るがいい。では去らばだ。会えてうれしかったよ、未来の英雄よ」

「それはどういう意味――」


 指を鳴らす。

 その次の瞬間にはファルトとエルシアは時計塔の前で立っていた。

 周りには子供連れの親子や散歩中の高齢者など様々な人がエデルガーデン記念公園にて歩いていた。


「戻ってきたのか?」

「……ほあ!? 私は一体何を?」


 ファルトは後ろを向くが、そこにはただの壁があった。

 地下へと続く階段も黒い扉も無くなっていたのだ。

 改めて元の世界に戻ってきたと実感した。


「はぁ~。疲れた」

「え? 戻ってきたの? 解決?」

「エルシア帰るぞ」

「う、うん」


 2人はバスに乗ってシルヒハッセ邸へと戻る。

 当然のことながらバスは法定速度で走っており最寄りのバス停まで30分で到着した。

 そこから歩いてシルヒハッセ邸へ。

 

 インターホンを鳴らすとルルが対応した。


『はい……って! エルシアとファルトじゃない! 今すぐ開けるからね。アリスー! 2人が帰ってきたわよー!』


 バタンとインターホンが置かれると門が開いていく。

 中に入るとエントランスの扉が開いた。


「エルシアさん! ファルトさん! ご無事でよかった。どこも怪我していませんか?」

「だいじょーぶ!」

「それはよかったです……。……? 何かファルトさんから感じます」

「ん? 俺から?」


 何か変わった事が有ったかと考えると1つ思い当たる事が有った。

 それは天照から貰った八咫鏡だ。

 何故か分からないが、アリスはファルトと一体となった八咫鏡を認識しているようだ。


「詳しい事は中に入って話さないか? 外は暑いからな」

「そうですね。私とした事が。気が動転していました」

「私お風呂入りたいー」


 3人は家の中へ入るとファルトとアリスはトレーニング施設へ。

 エルシアは風呂へと向かった。

 その前に着替えを出すようにと釘を刺すのであった。


 トレーニング施設へと移動したファルトは今まであったことを話す。

 高天原という場所に行ったこと、そこで出会った魔物もどきと少女、そして天照大御神の事。


「にわかに信じがたい事ですが2人が体験したのであれば真実なのでしょう。それで八咫鏡とは何でしょうか?」

「出せるか分からないが……出ろ! 八咫鏡!」

「……でませんね」

「いいから出せ! 駄目神!」


 するとファルトの前に光が集い始める。

 5秒ほどで光が弾け八咫鏡が具現化した。

 それを両手で持つと、アリスに見せた。


「何でしょう。体の奥から力が湧いてくる様な感じがします」

「これのせいか?」

「おそらくは。古くからの伝えで鏡は神の力を宿すと言います。ファルトさんとエルシアさんが行使した魔法で蘇った私の体が反応しているのかもしれません」


 ファルトはアリスの体が若干光っている様に見えた。

 それを伝えると自分の体をチェックしていた。


「本当に若干ですが光ってますね」

「八咫鏡仕舞ってみるぞ」


 消えろと念じると八咫鏡はファルトの体に溶けるように消えていった。

 それと同時にアリスの体から光が消えた。

 体の奥から湧いていた力も収まったと言う。


「やはり鏡ですね」

「だな」

「ちょっと興奮してしまいました。あれ程の力があれば私達に向けられる害意を折る事ができます。八咫鏡はどれくらい具現化した状態でいられますか?」

「わからん。具現化した状態で魔力は食わん買ったから消さない限り出し続けられるんじゃね?」

「それを聞いて安心しました。ファルトさん、私とその状態で手合わせしていただけませんか?」


 ただでさえ強いアリスに辛うじて勝てている今現在、それがスーパーアリスになりかなり強い状態のアリスとはあまり戦いたくないとファルトは思っていた。

 しかしアリスの目は真剣そのものであり、遊びで手合わせをお願いしているわけではないことがわかった。


「しょうが無いな。1回だけだぞ」

「ありがとうございます」

「出せ、駄目神」


 どこからか”駄目神いうなー!”と聞こえたと思ったが気のせいだと処理した。

 出した良いが両手が塞がったままでは戦えない。

 どうにかならないかと思っていたら手を使わなくても自律して浮かび上がり追従してくることが判明した。


「よし、これで戦えるな。さっさと終わらせて風呂入りたいぜ」

「ふふふ。手を抜いているとあっという間に地面とキスすることになりますよ」

「抜かせ」

「では行きますよ!」

「おう!」


 アリスとの手合わせがここに始まったのであった。







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