77帰ってからの魔力探知の練習
翌朝、昨日倒れたばかりであるフローレンスだったが朝早くキッチンに立っていた。
昨晩のうちに仕込みができなかったため今日の朝食はサンドイッチにしようと気合を入れて作っている。
使う素材はどれも高級な野菜、卵ばかりである。
唯一仕込みがあったのは1日目の夜に食べたマグロを使ったツナである。
出来たてのパンにマヨネーズとツナを混ぜトッピングをする。
他にも卵を茹で卵にし、細かくスライスしたものにマヨネーズと黒胡椒を加えた物。
きゅうりやレタスを挟んだ物など3種類を用意した。
「おはようございます。フローレンスさん」
「アリスお嬢様、おはようございます。気分はいかがですか?」
「私は大丈夫ですが、フローレンスさんこそ大丈夫ですか?」
「私は大丈夫です。朝食の用意がちょうど出来上がっています。おすわりになってお待ち下さい」
そう言うとフローレンスは2階に上がってエルシア達を起こしに行ったのであった。
「なにこれ~。このツナマヨサンドイッチって言うの美味しすぎる~」
「それには一昨日食べた魚が使われています。ヘルシーで美味しいですよ」
「なにそれ~! 万能すぎる~!」
リュドミラが感動しきっている横でエルシアもツナマヨサンドイッチを頬張っていた。
(美味しい! こんなに美味しいのにもう帰るのね……残念)
「エルシア頬に付いてるぞ」
「ん? ひょっへ」
「食いながら喋るな。ほら布巾だ」
「むぐむぐ……ありがと!」
エルシアは口に含んでいたサンドイッチを飲み込むとファルトに感謝を述べた。
朝食を食べ終えたエルシア達は荷物をまとめていた。
10時には車を出す予定で、それまでに鞄から出した荷物を詰め込んでいるのだ。
「歯ブラシ、タオル、櫛、洗濯した着替えと水着……その他よし!」
「忘れても届けてもらえますから大丈夫ですよ」
「わかった!」
エルシア達が荷物をまとめている中、ファルト達男性陣はすでに荷物を詰め終わり1階リビングで談笑していた。
基本荷物は少ないのである。
「はー、色々有ったが楽しかったなぁ」
「そうだな。魔物騒ぎがなかったらもっと楽しかったかもしれないな」
「なんだファルト。まだ根に持っているのか?」
「そうだぞファルト。根に持つのは良くないぞぉ?」
「……所で先輩はどうやって帰るんですか?」
自分たちはシルヒハッセ家のワゴン車で帰ると言うとひょんな表情を浮かべていた。
差も当然かのようにこう言った。
「え? 君たちが車出してくれるんじゃないのか?」
「は? 乗る場所無いぞ」
エルシア達が荷物を詰め終わり1階に降りてきた。
それを待っていたかの如くトラヴィスがアリスに詰め寄ったのだ。
「アリス! 俺たちオカルト研究部は友だよな!?」
「え、ええ。それがどうかしましたか?」
「もちろん車にも乗せてくれるよな!?」
「車には運転手のアレスさん、助手席にカレンさん。そして荷物分の場所で5人しか乗れません。今からでは車の手配も間に合いませんので先輩方にはバスと徒歩で帰ってもらうしか……」
「なんだって!? 我々は放り出されるのか!?」
「せっかく薄い本の新刊が読めると思ったのに!?」
リンネ達は帰りは楽に車で帰れる事で居たらしい。
この暑い中バスを日向で待つのは耐えきれないようだ。
なんとか車に乗ろうとアリスを説得しているが法律の観点からも積載方法違反になる為断られたのだった。
「クッ! だが我々オカルト研究部も諦めないぞ! アリス君! 電話を貸してもらいたい!」
「どうぞ」
リンネは黒電話のダイヤルを回すと、とある所に電話した。
「はい。エデルガーデンタクシーです」
タクシー会社であった。
アレスが車庫から車を出している最中にアリスはタクシーが来るまでリンネ達を別荘に滞在させておくようにフローレンスに言葉をかけていた。
フローレンスもこの猛暑の中外に立っているのは辛かろうとそれを承諾した。
車を出し終えたアレスは玄関先に車を回しクラクションを鳴らす。
「では行きましょう」
「先輩方お達者でぇ~」
「ふんすふんす!」
カレンは助手席に、エルシア達は後ろに乗り込むと3時間かけてシルヒハッセ家へと帰宅したのであった。
帰宅して早々にエルシアとファルトには魔力探知の練習が待っていた。
トレーニング施設へと入り早速練習を始める。
別荘での練習を活かし対象に魔力を纏わりつかせ位置を把握する。
それを少しずつ薄くしていき最後には無くす。
「難しいー!」
「……」
「ファルトさん上手ですね。後少しで無くせますよ」
「えー! ファルトに負けるのはいやー!」
「なんだよそれ」
ファルトはあれほど出来なかった魔力探知をものにしようとしていた。
だが魔力波探知がその先にあるのだが。
ファルトはコツを掴んだのか、トントン拍子で上達していく。
エルシアが手をこまねいている間に随分と上達した。
次の日、朝から再びトレーニング施設に3人は居た。
始めてから2時間。
遂にファルトが魔力探知を習得したのだった。
「やりましたね、ファルトさん。おめでとうございます」
「くやしー!」
「やったぜ」
「コツとかないの!?」
「教えてやらん」
「えー!」
その後もエルシアは魔力探知の練習を続けた。
夕方になり朝の時よりかは上達したが、完全にマスターしたとは言えない出来だ。
夕食後1人で練習していた時だった。
魔力探知を使っていたエルシアは遠くで膨大な魔力が爆発したようなものを探知した。
これはエルシアの技量でも探知できる程大きかったのだ。
「何今の? 魔力が大爆発したような感覚……。それで言い表せるのかなぁ? もっとこう、ドーンと言った感じだったけど」
1人で考えていても仕方がないとアリスに聞きに行くことにした。
アリスは部屋で読書をしていた。
そこにエルシアは訪ねた。
「アリスちゃん。さっき凄い魔力の爆発が有ったんだけど」
「? すみません。読書に集中したくて魔力波探知を使っていませんでした。それでどのくらいの規模の爆発なのでしょうか?」
「私でも感じ取れる……ここから遠くで起こったみたい」
「エルシアさんの技量でも感じ取れる魔力爆発。ニュースを聞いてみましょうか」
アリスは自室にあるラジオの周波数を合わせる。
色々な番組に合わしたがエルシアが言っていた様なニュースは一切報道していなかった。
「ニュースやっていませんね。明日テレビでも確認してみましょうか」
「う、うん」
この後も1人で練習をし、ぱっとしないまま翌朝を迎えてしまった。
朝食を食べる前にアリスがニュース番組にテレビのチャンネルを合わせた。
ニュース番組は昨日から今日の番組を放送していた。
やはりエルシアが言っていた様な出来事はニュースにはなっていなかったのだった。
(うーん。昨日の勘違いだったのかなぁ)
「エルシアさん。今日もビシバシ練習していきますよ」
「はーい」
「ファルトさんは魔力波探知の練習ですよ」
「あんなに難しかったのにまた難しいのか……」
朝食を食べ終えると再びトレーニング施設へと足を運んだ。
エルシアは魔力探知の練習を、ファルトは魔力波探知の練習。
魔力探知のコツは教えたので魔力波探知のコツを教える。
「いいですか。魔力波探知は魔力探知と違って空白を知るのではなく、相手が発している魔力を自分の魔力で探知することです。コツとしては魔力探知では相手に魔力を纏わりつかせましたが、魔力波探知では相手の発している魔力に纏わりつかせてください」
アリスはそう言うとファルトのアクセサリーに魔力をわざと纏わりつかせた。
ファルトは腕に着けているアクセサリーからアリスの魔力が纏わりついているのを感じ取った。
「ふむ。やってみるか」
ファルトは魔力波探知を行ってみたが、魔力探知と同じく最初はさっぱり出来なかったのであった。
「☆☆☆☆☆」を押して応援していただけると嬉しいです!




