表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
天使と悪魔の片翼の輪舞曲~One wing of them~  作者: 白築ノエル
4沈黙の夕焼け
74/113

74真・肝試し(上)




 夕食を食べ終わった一同は男子女子の部屋でゆったりとしていた。

 誰もが気を抜いて油断していた時だった。

 突然電気が消えたのである。


「何事―!」

「皆さん、ヒューズが焼ききれたのでしょう。直ぐに回復すると思いますよ」

「はーい」


 停電から5分が経過しても復旧せずアリスが様子を見に行こうとした時、1階から悲鳴が上がったのである。

 それはフローレンスの声だった。

 アリスはその声を聞くと我先に飛び出していった。


「アリスちゃん!」

「私も行こうか」

「え? 私も行く~」


 アリスに続きエルシア、リンネ、リュドミラも続いて飛び出していく。

 部屋を出る際リンネがミルキーにアイコンタクトを送っていた。

 部屋が暗くそれに気がつくものはいなかった。


 1階に駆け下りたアリスはすぐに配電盤がある部屋へと向かった。

 配電盤の前にはフローレンスが倒れており白い靄のような物が壁をすり抜けて出ていく様子がアリスには見て取れた。


「誰ッ! フローレンスさん大丈夫ですか! 誰にやられましたか!?」

「うぅ……」


 アリスがフローレンスを介抱しているとリュドミラがトイレに行きたいと言う。

 懐中電灯を渡すとエルシアと一緒にトイレに行くのであった。

 リンネは焼ききれたヒューズを交換しようと工具箱を開けるが、どこにも予備のヒューズが無い。


「アリス君ヒューズが無いようだが、どこにあるか知ってるかい?」

「そこの工具箱にあるはずですが……。ありませんか?」

「無いようだ。もしかすると管理人さんを襲った何者かが持ち去ったのかもしれないね」

「一体何が起き――」

「ひぎゃあああぁぁぁ!」


 今度はリュドミラの悲鳴が上がった。

 リンネはトイレに向かった2人の元へと移動する。

 トイレの前ではエルシアが扉を叩き、リュドミラの名前を呼んでいた。


「みらみら! 大丈夫!? みらみら!」

「エルシア君大丈夫かい? リュドミラちゃんは……」

「悲鳴が有ってから反応がないんです」

「ここは任せたまえ」


 リンネはトイレのドアノブに何やらガチャガチャと弄ると鍵が空いた。

 扉を開けるとそこには誰もいなかったのだ。


「あれっ!?」

「ん? リュドミラちゃんはトイレに入っていたんじゃないのかい?」

「たしかに入ってました! でもなんで……」


 そこまで話しているとファルト達もやってきた。

 明かりの生活魔法を使って周囲を照らしている。


「さっきからどうした?」

「実は……」


 リンネが今までの出来事を話した。


「何者かに襲われているのか。一体誰が……」


 ファルトは視界の端に白い靄のような物を見た。

 すぐにそれを追いかける。


「ファルトどこに行くの?」

「今なにかが見えた! 問い詰めてやる!」

「あっ! 待って! ……行っちゃった」





「おい! 待て!」


 白い靄は別荘から出ると敷地内の雑木林の中へと逃げ行く。

 ちょうど雑木林の半分まで来た所で白い靄が止まる。

 追いかけてきたファルトと対峙しているようにも見える。


「変な魔法で隠れやがって、正体を表わせ! 我の威を示せ、キャストブレイク!」


 白い靄の魔法を解除させるべくキャストブレイクにて終唱(ラストワード)を定義破綻させる。

 しかし白い靄は解除されずそのまま宙を漂っている。

 魔法の行使に失敗したのかと再度キャストブレイクを掛ける。

 だが何も変化はない。


「何だ? 魔法の類じゃないのか?」

「――」

「何を言ってる? ッ! こっちに来るのか!」


 白い靄が徐々にファルトに迫る。

 それを攻撃魔法で迎撃する。


「我の威を示せ、ウインドカッター!」


 白い靄を少しかき乱しただけで攻撃魔法は終わってしまう。

 ダメージはゼロだ。

 色々な攻撃魔法を試すが何も効かず徐々に追い詰められてしまう。

 追う側が追われる側に変わってしまっている。


「クソ! 何なんだこいつは!」


 後ろに下がり続け遂には背中が木に当たる。


「クッ! 来るな! 来る……うがああああ!!」


 白い靄がファルトの中に入り込み、激しい痛みがファルトを襲う。

 数秒それが続くと白い靄はファルトから弾かれるように出る。

 想像を絶した痛みにより白目を剥き気絶してしまった。


「――」


 白い靄は再び別荘の方向へと向かう。





 別荘ではアリスがゲート建屋でカレンに新しいヒューズを買ってくるように頼んでいた。


「20アンペアのヒューズを買ってきてください。アレスさんはここの守りを」

「わかったぜ! 任せな!」

「……」

「カレンさん?」

「あ! はい! すぐに買ってきます」


 カレンは車庫に向かい車を出そうとシャッターを開けた時すぐ近くの木々が揺れだした。


「……?」


 いつの間にかあれほど煩かったセミの声は何処にもなく、静寂がカレンを包んでいた。

 カレンの経験か本能か、腰に帯剣していた剣を抜剣する。

 五感が研ぎ澄まされほんの少しの兆候を逃さない。


「誰っ! 出てきなさい!」


 カレンはあたりに声を張る。

 そして木々の間から白い靄が現れた。

 カレンの表情が強ばるが、すぐに真剣な表情へと戻る。


「何者か! ここはシルヒハッセ家の敷地! 不法侵入は大罪わよ!」

「――」

「口を割らないか! 不法侵入の容疑で成敗してあげる! まずはその姿を見せなさい! 我の威を示せ、キャストブレイク!」


 カレンはファルトと同じ行動をしているが本人にはわかるはずがない。

 当然のごとくキャストブレイクは効果がないのだった。


「魔法じゃないですって? ならこれでどう? 我の威を示せ、エンチャントホーリーレイ! はあぁ!」


 正義に憧れたカレンの剣技は刀身に神聖属性のエンチャントを施し相手を斬り刻むのだ。

 白い靄はカレンの剣に触れた途端無いはずの体を震わせるかのように靄を震わせる。

 効いていると確信し、更に攻め続ける。


「セイッ! ヤア!」

「――!」

「うっ!?」


 白い靄は一瞬にして赤くなると、カレンの剣に斬られながらもカレンに飛び込んできたのだ。

 靄はカレンの体に入り込むとカレンの手から剣がカランと音を立て落ちた。


「……フフフ……」


 今までの戦いが嘘だったかのように剣を捨て幽鬼の様に彷徨い歩いていってしまった。





 別荘に戻ったアリスはエルシアに預けていたフローレンスの容態を聞いた。

 依然意識を取り戻していないフローレンス。

 エルシアは呪いの類ではないと言う。


「困りましたね。フローレンスさん大丈夫でしょうか……」

「みらみらもどこ行っちゃったんだろう……。ファルトも戻ってこないし……」

「全く、こんな暗いのにどこほっつき歩いてんだぁ?」

「そういえばリンネ部長。ミルキー先輩はどうしたのですか?」


 リンネがその問いかけにピクリと反応した。

 動揺しないようにいつもどおりに受け答えをする。


「ミルキーなら疲れたと言って部屋で寝てるよ。呼んで来るかい?」

「はい。何があるかわからない今、バラバラで居るのは危険です」

「呼んでくるよ。トラヴィス、私の護衛を」


 ミルキーを呼びにリンネとトラヴィスが2階に上がっていく。

 その間にフローレンスに回復魔法を掛ける。


「我の威を示せ、ハイフリートヒール。我の威を示せ、ボディーカルテ」


 体の状態を診断すると異常なしと情報が頭に流れ込む。

 目が覚めないのは気力の問題なのだろう。


「やることはやったし、あとは待つだけだね」


 一方ミルキーを呼びに2階に上がったリンネとトラヴィスはミルキーの手腕に感心していた。


「ミルキー居るかい?」

「あ、部長。どうしたのですか?」

「いやね、アリス君にバレる前に君を呼んでこようとしてたんだ。それにしてもミルキーやるね。特に白い靄のやつはどうやったんだい?」

「白い靄? まだ私はリュドミラさんしか襲っていませんが」

「え?」

「え?」






「☆☆☆☆☆」を押して応援していただけると嬉しいです!


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ