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天使と悪魔の片翼の輪舞曲~One wing of them~  作者: 白築ノエル
4沈黙の夕焼け
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69海の後はお風呂と宿題




 洗面所で上着と水着を脱ぎ、風呂場へ入る。

 そこには立派な浴槽と海に面した大きな窓があった。


「わー! お風呂の窓すごーい! おーしゃんびゅー?ってやつ?」

「庶民とは違うよね~」

「別荘のお風呂は特に力を入れてデザインさせたと聞いています」


 リュドミラはやはり自分たちとは違う階級の人物だと再確認させられたのだった。


 髪の毛を洗い、体を洗う。

 最後に翼を洗うのだが、一人ではどうしても翼の付け根部分を洗うことが出来ない。

 そこでアリスに洗ってもらうことにした。


「アリスちゃん、ちょっと翼洗ってくれないかな?」

「いいですよ。塵……いえ、海塩1つ残らず落としてあげます」

「わ~。私も洗いたいな~。洗っちゃおー」


 2人に翼を泡まみれにされながら洗われるエルシア。

 羽が抜けないように優しく丁寧に洗う。

 

「やわらか~い。手触りバツグンだね~」

「エルシアさんの翼……良い」

「ちょっと? 洗ってないでしょ?」

「はっ! 今洗い流しますね」


 シャワーで翼の泡を洗い流す。

 バサバサと翼を広げ、水分を飛ばす。


「わ、わ」

「あ、ごめん。いつもの癖で」

「エルシアさんの翼水…… 良い」

「アリスちゃん?」


 風呂から上がると体を拭き、髪の毛も軽く拭う。

 エルシアは翼をタオルでやさしくポンポンと拭い取っていく。


「エルシアさん翼にドライヤーかけてあげます」

「ありがとー! いつも1人でやるとき大変なんだよね」


 ゴーっとドライヤーが温風を吹き出す。

 5分もかけていると水分も飛び、ふっくらとした羽になった。

 

「うん。翼も軽くなったし、ありがとね」

「いえ、別にいいんですよ。後は髪の毛乾かしましょう」

「3人で乾かしあおうよ~」

「あ! それいいかも」

「ドライヤーも3台ありますし、出来ますね」


 三人で三角になるように立ちドライヤーで互いの髪の毛を乾かし合う。

 エルシアの翼で時間が経っていたため、乾かすのはすぐに終わった。

 

「おーい、男どもー! お風呂だぞー」

「やっと上がったか。ソファーに座るに座れず立ってたんだ」

「ゲルトラウドさん、聞き耳立ててなかったですよね?」

「立ててねぇよ! 少しは俺のこと信じてくれてもいいだろぉ!?」


 ゲルトラウドが騒いでいると、そこへフローレンスがやって来た。

 手元にはおぼんが有り、果汁たっぷりの桃が切られて並んでいる。


「お風呂上がりの暑いときにどうぞ。冷やした桃です」

「フローレンスさんありがとうございます」

「わー! 美味しそう!」

「やったぁ~桃だあ~」


 桃は主に7から8月から収穫される物であり、早いものでは5月位から収穫される。

 食べ頃は夏から秋の物が一番美味しい。

 暖かい時期に実をつける桃は常温で置いておくのが良いが、食する1時間半ほど前に冷蔵庫に入れておくと丁度良い感じになる。


「うおぉぉ! 桃うまそっ! ファルト、さっさと風呂入ろうぜ」

「だな。翼が塩でパサパサだ」


 2人が風呂に入るとリビングでよく冷えた桃を食べる。


「桃美味しいね~」

「えぇ。フローレンスさんの目利きは一流です」

「恐縮です、アリス様」

「フローレンスさんって何でも出来ちゃうんだねー」

「なんでもはできませんよ、エルシア様。私でも苦手な事があります」

「なになに?」

「それは、裁縫です」


 フローレンスいわく、マチ針や縫い針が頻繁に指に刺さってしまう。

 料理も出来て食材の目利きも効くフローレンスだが裁縫だけはだめらしい。


 その後ファルトとゲルトラウドも風呂から上がり、桃を食べたのであった。


 桃を食べ終わった後は夏休みの宿題をする時間になった。

 午後の一番眠いときである。

 男子部屋に筆記用具と宿題を持ち移動する。


「ふわぁあ~眠い……」

「エルシアさん、駄目ですよ。宿題進んでないんですから進めないと」

「だりぃー」

「ゲルトラウド、お前も進んでないだろ」

「アリスさんが一番進んでそう~」


 実際一番進んでいるのはアリスだ。

 1日の行動予定をスケジュール化しているのだ。

 午前学園の宿題、午後鍛錬、マナー講座。

 日によっては政界のパーティーに出席等々。

 

「それじゃあ始めましょうか」

「は~い」


 アリスはペースを合わせるため、4人に自分の勧めた場所の問題を教えていく。

 リュドミラとファルトは難なくこなして行くが、エルシア、ゲルトラウドが躓く。


「うーん。この公式なんだっけ?」

「これで良いんじゃねぇ?」

「なるほど!」

「なるほど! じゃありません。そこの公式はこうです」


 エルシアが悩み、ゲルトラウドが予期しない公式を出す。

 それにアリスがツッコミを入れ正しい答えに導いていく。

 はっきり言ってアリスがとても疲れることだった。


「この問題の公式知ってる! これだよね?」

「ちげぇーよ、これだぞこれ」

「……2人とも間違っています」

「それじゃぁ次の問題だァ! これはこうだろ!」

「すっごーい! ゲルトラウド意外とやるねー」

「……違います……違うのです。2人とも授業を聞いていなかったのですか?」


 その問いかけに顔を背ける。

 思わずため息が出そうになったアリスだった。


「あー! この問題知ってる! この間の期末テストでやった問題だ。これは~こうでしょう」

「どれどれ……俺と答えがちぃっと違うな。間違ってるんじゃね?」

「ちょっと待ってください。今回ばかりはエルシアさんが正解です。よく覚えていましたね」


 珍しく問題が正解し、調子に乗るエルシア。

 早速次の問題でやらかすのだった。


 宿題を始めてから2時間程が経過した。

 エルシアはすでに夢の中だ。

 残った4人で宿題を進めていく。


「アリスさん、そろそろえるえる起こそうよ~」

「そうですね。エルシアさん、起きてください」

「……駄目だ」

「はい?」

「駄目なんだ。こうなったエルシアはベッドから落ちようにも目をさますことはない」

「……」


 アリスは察したのかエルシアを起こすのを諦めた。

 そしてもう1人、今にも同じく夢の中に旅たとうとしている人物がいた。

 コクリ、コクリと何度も頭を上下に揺らしているのはゲルトラウドだ。


「ぐぅー。むにゃ、寝てなぃ、ぞ……むにゃ」

「いやいや、寝てるじゃねーか!」

「アリスさんお願いしま~す」

「それでは失礼ながら。軽く行きます」


 アリスは立ち上がるとゲルトラウドの前に立った。

 そして軽く足を上げると、どことは言わないが男性の尊厳を思いっきり踏みつけたのだ。


「い゛っ゛!?!? あぎゃあああああ!?!?」

「起きましたか? まだ16時ですよ」

「これは酷い」


 ゲルトラウドはカクカクと体を震わせながら床に倒れていた。

 リュドミラはそれを見て大笑いしている。

 それを見ていたファルトは一層の事気を引き締めるのであった。


 10分もすれば痛みも引いてきてゲルトラウドは起き上がってきた。

 そしてエルシアを見て文句を言い始めた。


「アリスぅぅぅぅ! エルシアも寝てるじゃんかぁ! なんで俺だけ酷い目に……。てか今日の俺の扱いひどくね? なぁ、そう思うだろ? なぁファルト?」

「俺は知らん」

「んな!? リュドミラァ! 少しは何とか言え!」

「この間テレビでやってたの~。男の人のは60キロまでなら耐えられるって~。ゲルトラウドは頑丈そうだから大丈夫かな~って」

「この俺をなんだと思ってやがる……」


 そんな大騒ぎが起きているのにも関わらず、エルシアはのんびりの寝ているのであった。


 さらに2時間後、フローレンスは夕飯が出来上がったと部屋まで呼びに来た。

 リビングから香る食事のいい匂いにエルシアが目を覚ます。


「んん。眠い……ご飯?」

「はい。ご飯です。今日のところは宿題をここまでにしてリビングに行きましょうか」


 そうして5人はリビングに向かうのであった。






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