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天使と悪魔の片翼の輪舞曲~One wing of them~  作者: 白築ノエル
4沈黙の夕焼け
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67いざ海へ




 海への出発日、シルヒハッセ宅前にはワゴン車が駐められていた。

 運転席にはアレス・ディアロードが座っていた。

 出発までの間タバコを吹かせ休憩している。


「海かー。青春だねぇ。そう思わないか?」


 アレスは助手席に座るカレン・シルフィードに話しかけていた。


「そうね。私も昔は友達と遊んだわよ。今は誰かさんがタバコ休憩ばかりするから忙しくてしょうがないわね」

「はて、誰のことだ?」

あなた(アレス)の事よ!」


 カレンは愚痴を本人の目の前で並び立てるが、アレスはそれほど気にしていないようだ。

 呑気にタバコを吹かせている。


「少しは人の話を聞きなさーい!」


 一方家の中ではファルトとエルシアが出発準備をしていた。

 

「ファルトー、宿題持ったー?」

「ああ、持ったよ」

「水着はー?」

「持った持った」

「着替えはー?」

「お前は俺のオフクロか!」


 そんな2人を覗く視線があった。

 ドアの僅かな隙間からアリスが覗いていたのだ。


(寒気がする。なんだろう)

「準備できたからトイレ行ってくるわ」


 ファルトが扉を開けようとすると、開ける前にアリスが扉を開いた。


「準備はできましたか?」

「できたよー」

「おう。ちょっくらトイレだわ」

「はい。ゆっくりしてらっしゃい」

「? ああ」


 ファルトが出ていくとアリスは部屋の扉を閉めた。

 そして鍵を閉める。

 それを見たエルシアは久しぶりにアリスから距離を取る。


「あ、アリスちゃん? もしかして、またなの?」

「最近は愛でれなかったので今のうちに可愛い成分を補給しようかと思いまして」

「ひぇ。誰か助け――」

「呼ばせませんよ!」

「んあー!!」


 その後5分ほどでファルトが戻ってきたとき、アリスは何事もなかったかのように自分の部屋に戻っていたのだった。

 

 午前8時頃インターホンが鳴った。

 アリスが取るとリュドミラとゲルトラウドだった。

 直ぐに表に出ると言うと受話器を掛けた。


「エルシアさん、ファルトさん行きますよ」

「うっし。行くか」

「うん……」


 3人は表に出ると外で待っている2人をワゴン車まで案内する。


「アレスさん、カレンさん3日間よろしくおねがいします」

「おうよ。アリスお嬢さん、このアレスにおまかせあれ」

「何言ってるのよ。3日間護衛を務めさせていただきます」

「それでは皆さん車に乗ってください」


 エルシア達は車に乗り込むと、最後にアリスが乗り込んだ。

 ドアを閉めると車はゆっくりと発進する。

 こうして欲望? が渦巻く海へと出発したのだった。


 3時間程車を走らせ海沿いに出た。

 海辺は沢山の人々で溢れかえっている。

 別荘はそんな海辺の端に建てられていた。


「海すご~い! 凄い大きい!」

「えるえるは初めて海見るんだっけ~。大きいよね~」


 エルシアは車の窓から海を眺めていた。

 車は別荘の中へ入っていくと、備え付けられていた車庫へ入る。


「よ~し。アリスお嬢さん方着いたぜ」

「何か買ってくるものとかありますか?」

「それではバーベキューの具材と焼き肉用のお肉をお願いします」

「わかりました。アレスを置いていきますので、あまり別荘の外に出ないようにしてください」


 カレンはそれだけ言うと皆を車からおろし、近場の店へ出かけていった。

 建物の中に入ると、管理人が出迎えた。


「いらっしゃいませ、アリス様方」

「フローレンスさんご苦労さまです」


 フローレンス・ウォーカー、シルヒハッセ家別荘の管理人である。

 歳は49歳で10年前から別荘の管理を受け持っている。


「別荘凄いなぁ。でけーし」

「だな」

「お飲み物をご用意しています、リビングへどうぞ。先にお荷物をどうぞ。お部屋に運び入れておきます。」

「アザース!」

「ありがとうございます~」


 アリス達は荷物を預けるとリビングへと移動した。


「出た。金持ち特有の天井プロペラ」

「これはシーリングファンと言います」

「へぇ~。そんな名前なのかぁ」


 ソファーに腰掛けると飲み物を飲む。


「りんごジュースかぁ。自販機で売ってるのよりうめぇな!」


 入れたばかりの様にキンキンに冷えていた。

 カップはスチールで出来ており、外と中とで二重構造で出来ている。

 保温、保冷カップだ。


「冷えてて美味しい~」

「これはブルーフォレスト州で採れたりんごですね。それを下ろして絞ったものです」

「それもフローレンスさんが~?」

「そうです。フローレンスさんの手作りです」


 フローレンスの事を褒めちぎるゲルトラウド。

 よほど手作りのりんごジュースが気に入ったようだ。

 全員がそれを飲み干すとフローレンスがやってきた。


「皆様、お部屋にお荷物を運び入れておきました。男性は2階手前の部屋。女性は奥の部屋になります」

「ありがとうございます。フローレンスさん」

「ひゃっはーじゃ! 早速海行こうぜ! 海!」

「海だー!」


 男子と女子に別れ部屋へと入る。

 部屋の中で水着に着替えるのだ。


 男子の部屋では奇妙なことが起きていた。

 2人して壁に耳を当て、奥の女子部屋の音を探っていたのだ。


「我の威を示せ、コンバージェンスサウンド」


 生活魔法に分類サれる魔法を使用し音を極限まで増幅する。

 すると女子部屋の音がより鮮明に聞こえてきた。


「……えるやっぱり大きいね~、何食べてるの~?」

「え!? な、ななな何言ってるのみらみら!?」


 ゲルトラウドはそれを聞いて鼻の下を伸ばしていた。


「うひょー! エルシアは大きいのか!」

「おい、エルシアに手を出すなよ。俺のエルシアだ」

「ファルトぉ~”俺のエルシア”かぁ? やるなぁ」

「う、うるさい!」


 ファルトは思わず口に出してしまった事に後悔した。

 ゲルトラウドがしつこく聞いてくるのだ。

 

「俺のエルシア。ああ! 俺のエルシア! だはは!」

「だー! うるさいうるさい!」

「そう興奮するなって。さて続きはっと」


 壁に耳を当てた瞬間別荘中に大声が轟いた。

 音を増幅しているファルトとゲルトラウドは思わず耳を押さえ床にのたうち回った。


「ファ~ルト! 何聞き耳立ててるの! このへんたいおおかみさん!」

「耳がー! 耳がー!」

「なんで俺だけなんだー!」





 別荘のプライベートビーチへやって来たエルシア達。


「海だー!」


 エルシアは海の方へ駆け出そうとしたがアリスに止められた。


「エルシアさん。海に入る前は準備運動が大切ですよ」

「そうだよ~えるえる~。足が攣ったら溺れちゃうからね~」

「ムムム……」


 女子3人が準備運動をしている中、男子2人はパラソルの下で眺めていた。

 もちろん水着が目当てである。

 舐め回す様な視線で女子を見ている。


「ぐへへ。さっきは災難だったが、これは格別だなぁ!」

「ああ、最高だな。やべ、鼻血が――」


 ファルトが鼻血を出した瞬間、ビーチボールが飛んできたのだ。


「ふべら!?」

「フ、ファルト!? はっ!?」

「ゲルトラウド~!」

「へげ!?」


 そこには顔を赤らめ谷間を隠しているエルシアとリュドミラが居た。

 ビーチボールは2人の顔面にクリーンヒットしており、後ろへ倒れているのであった。


「そんな気持ち悪い視線に気が付かないと思ったの!」

「最低~!」

「ぬぅん! 失礼なぁ! 俺たちがいついやらしい視線で見たっていうんだ!?」

「そうだぞ! この暑さで鼻血が出ただけだ!」


 等々ファルトとゲルトラウドは反論するが、エルシアとリュドミラには通じなかった。

 なぜならどちらの視線も未だバスト、ウエスト、ヒップなどの部位に注がれているからだ。

 更にそこへアリスも参戦する。


「もしかして……今回の海ってそういう目的のために計画しましたか?」

「うっ!?」

「やだー! ファルトさいて~」

「ば、バカ! 表情に出すなァ!」


 こうして男の欲望の海は終わった。


「なぁ、俺たち悪くないよな?」

「いや、最初から計画した時点で終わってたんだ……」


 プライベートビーチに首まで埋められ反省を促されているのであった。







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