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天使と悪魔の片翼の輪舞曲~One wing of them~  作者: 白築ノエル
3動き出す悪意
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57撃退と夏休みの予定





「徹底的にやってやる! オラァ!」


 超強化された身体能力による物理攻撃によりゴーレムの体を無理やり引き千切り、魔力の牙で頭部を潰す。

 ゴーレムは魔力回路の断線により魔力不足を起こし動作不良に陥り、頭部破損により視覚センサー、聴覚センサー、プロセッサコアが破損、動作停止になった。

 ゴーレム達は陣形を組み一斉に襲いかかろうとするが、魔力の尻尾に薙ぎ倒される。


「甘いんだよ! ゴーレム風情が調子のんな!」


 魔力の爪で防御魔法を引き裂きゴーレムを破壊し、魔力の尻尾で叩き潰したりと割とやりたい放題壊していると、戦法を切り替えたのか攻撃魔法を放ってきたのだ。

 ファルトはそれを回避すると一瞬で近づき、爪で胴体を切り裂いた。

 圧倒的な強さでゴーレムを蹂躙していくファルト。

 もはやエモート防御魔法対策、自律性の強化など意味を成さない。


「雑魚どもが、俺を襲撃しようなんざ700年早いぞ!」


 ファルトが暴れ、ゴーレムが壊れる。

 当然のことながらそれが続けばゴーレムは減る。

 10分も暴れた末に全て破壊し終えた。

 

 周りの生徒達も落ち着きを取り戻し、壊れたゴーレムを触ったりしていた。

 証拠の1つでも持ち帰ろうとゴーレムをバラそうとした時、一瞬気が飛んだ感覚がし、気がついたときにはゴーレムの残骸や戦闘痕は一切無くなっていた。

 周りに居た生徒たちも白昼夢でも見たような表情になっている。


「なん、だ? 確かにゴーレムを倒したはずだ。なのに何で何もないんだ?」


 その時エルシアの声が聞こえてきた。


「おーい! ファルト~おまたせ~」

「すみません。遅くなりました」

「お、おう」

「? なんかみんなぽかーんってしてるね」

「あー。それなんだが、歩きながら話さないか?」


 そう言うと3人は歩き出した。

 そして要領を得ないファルトの話が始まった。

 先程あったことを2人に話す。


「え? 襲撃に有ったの!?」

「ファルトさん大丈夫でしたか?」

「ああ。有ったし大丈夫だ」

「ゴーレムでしたか?」

「そうだ。エルシアの時より多分丈夫に出来てたな」

「敵も一筋縄じゃないって事ですね。今回も証拠は回収出来ず?」

「残念ながら、な」

「そうですか……」


 ファルトはアリスにも注意をするように声を掛けた。

 エルシア、ファルトと来たら次に対象になるのはシルヒハッセ家でアリスが一番確率が高いのだ。


「えぇ。分かっています。ゴーレムなどに遅れは取りませんよ」

「しばらくの間3人固まって動こう」


 帰り道の途中に有ったスイーツ店にエルシアが興味を惹かれていた。


「ねえねえ。今度このスイーツ店に入らない? 美味しそう……じゅるり」

「おいおい、今の話の流れでそうなるか? 普通ならないよな」

「まあまあ。ファルトさんなら大丈夫だと思われているのでしょう。私はパフェ食べたいですね」

「お前もか……」


 そんなこんな有りながらも帰宅した3人だった。


 翌日。

 今日は土曜日だ。

 エルシアとアリスはリュドミラを誘って買い物に出かけようとしていた。


「夏休みの海に行くための水着を買うのだ!」

「あら、夏休み海行くの? 海沿いに別荘があるから使ってもいいわよ」

「ありがとうございます、ルルさん!」

「アレスを護衛に付かせるからな」

「アレスさんなら私も我慢します。それに他のご家庭の事もありますし」

「それじゃみらみらに電話してデパート行こう!」


 リュドミラ宅に電話をすると喫茶店に行く前のリュドミラに繋がった。

 デパートで夏休みの水着を買いに行こうと言うと喜んで買い物に行くと言った。

 デパートの入り口を待ち合わせ場所にすると受話器を置き買い物にでかけて行く。

 1人残されたファルトはゲルトラウドに電話を掛け、自分たちも水着を買いに行くことにしたのだった。


 16分ほど歩きデパートまでやって来たエルシアとアリス。

 リュドミラはまだ来ていないようだ。


「思ったより早く着いちゃったね」

「そうですね。リュドミラさんはこのデパートからちょっと遠い場所に住んでいるようなので少し時間が掛かりますね」

「そうなんだ~。そういえば最近ごたごたしててギルド行けてないんだよね。お金消費ばっかりで稼がないと大変だぁ」

「襲撃やら暗殺やらが有った後にはギルドで依頼を受け遠くに行くのが危険ですからね」

「そうなんだよね~。迷惑しちゃうよ」


 最近あった事など話しながら待っているとリュドミラがやって来た。

 肩からポーチを下げ小走りで2人に声を掛けた。


「おまたせ~。待っちゃったかな~?」

「大丈夫だよ、さっき来たところ」

「では買い物しますか」

「さんせーい」


 3人はデパートの中に入りレディースファッションコーナーへ赴く。

 そこには今年のトレンドから最新コーデまで揃っている。

 エルシア達はそれぞれ水着を選ぶことにした。


「うーん。どんな水着がいいんだろう……」

「自分が可愛いと思える物を選べば大丈夫だよ~」

「可愛いもの……」


 一時間後……

 女性は男性と比べ買い物に時間を掛ける傾向がある。

 それは脳内ホルモンとも言われるが、人により様々だ。


「うーん。この2着のどっちにしよう」

「試着してみましょう」

「うんうん、着てみたらいいんだよ~」

「じゃあ着てみる!」


 水着を2着持って試着室へと入っていった。

 試着室の前にはアリスとリュドミラが待っている。

 3分ほどして試着室のカーテンが開かれた。


「これ……どうかな?」

「えるえる……」

「え? 似合わないかな?」


 エルシアがもじもじしていると、リュドミラが口を開いた。


「似合ってるけど……その傷跡って……」

「これ? ファルトに助けてもらった証だよ」


 リュドミラは以前ファルトが語っていたことを思い出していた。

 “俺が見つけたときには魔獣に食われかけてたんだ”

 その言葉と実際に見たエルシアの傷跡は魔物の歯型かつ焼いて塞いだ事を察した。


「普段見えない所だから驚いちゃった。ごめんね~」

「ううん。いいの、大丈夫だよ」

「水着似合ってるよ~。フリフリついてて可愛いし黒色の大人の色気もいいかも~」

「本当? 嬉しいな~、じゃ、次の着るからちょっとまってて」


 再び試着室のカーテンが閉じる。

 リュドミラはふと横を見るとアリスが満面の笑みを浮かべていた。


「いいものを見ました。ぜひ写真に収めたいですね」

「アリスさん?」

「あ、なんでも無いですよ」


 数分後今度はピンク色の水着を着たエルシアが出てきた。

 アリスはコレも有りと言わんばかりに頷いている。

 リュドミラも黒よりピンクが似合うと絶賛していた。


「それじゃピンク色の水着買うね」

「私も試着してみようかしら」


 その後、アリスとリュドミラも水着を決め3人で会計に進むのだった。





 その頃男2人は。


「なぁファルト。3人はどんな水着を買うと思う?」

「そうだな……」


 ファルトはふっと頭の片隅から記憶を掘り出す。

 ふっといつぞやのテレビCMで見た水着が思い出された。


「フリルの付いたやつがいいな」

「ファルト、お前はまだまだだな。俺ならマイクロビキニを推すぜ!」

「なん……だと……マイクロビキニを着たエルシア……」


 思わず妄想を掻き立てるワードにファルトの鼻息が荒くなる。


「落ち着けよファルト。男はいつでもクールだぜ?」

「落ち着け、落ち着け俺……よし。もう大丈夫だ」

「それじゃ俺たちも買いに行こうぜぇ!

「おうよ!」


 ファルトとゲルトラウドはエルシア達と同じデパートへと入っていった。

 目的の水着を見つけるとさっさと会計を済まし買い物を終えた。

 その間20分程だった。


「久しぶりにデパートなんか来たなぁ」

「あっという間に終わったがな」


 実にあっさりとした買い物だった。






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