52早期解散からのー
「よくやった! 俺も仕留めないとな! 我の威を示せ、エレメンタルソード。我の威を示せ! フィジカルブーストフルドライブ!」
魔法剣を作り上げ、身体強化を許容量上限一杯まで付与すると素早く魔法使いの影の懐に飛び込む。
そのまま魔法剣を振り抜くが、激しい明滅の後傷もつかず後退される。
だがそのまま逃がすこと無く食いついていく。
「離れた所で! っ!」
至近距離で魔法が炸裂する。
発動速度と効果効率が高い電撃系だ。
「ぐっ!?」
ファルトの動きが一瞬止まった。
ギルドランクBの冒険者にはそれだけで十分だったのかすぐに魔法が飛んでくる。
今度は威力の高い炎系の魔法だ。
ファルトの頭の上でマナ・エクスプロージョンが行使された。
「うっ?」
「まったく! ファルトこそ大丈夫なの?」
エルシアが防御魔法を間に合わせたのだ。
防御魔法アイギスは非常に固く、防御魔法の中でも最上級の硬さを誇る。
「我の威を示せ、アイギス=エモートアーチャー! ――今だよ!」
「おう!」
エルシアが魔法使いの影を牽制し、ファルトが今一度肉薄する。
今度は相手を掴み魔法剣を突き立てた。
「これで終わりだ! 我の威を示せ! エンチャントブレイブバーン!」
魔法剣が激しく燃え上がり魔法使いの影の防御魔法を食い破る。
「そこまで! よく頑張ったな。ギルドランクBと同等の戦闘成績だ。これで大抵の生徒には負けないだろうな」
「ありがとうございます。先生」
「よし、後は耐えきるだけだな」
「そろそろ教室に戻るんだ。生徒が帰ってくる時間だぞ」
一礼すると教室に戻り、鍵を開けクラスメイト達の帰りを待つ。
5分もすると下駄箱の方から話し声が聞こえ始めてきた。
そしてテンションが高くなっているクラスメイトが帰ってきたのだ。
「ファルト、エルシア! ギルド面白かった!」
「ゲルトラウドテンション高いぞ」
「だってよお! ギルドポイント上げればバンバン戦えるようになるんだぜ! テンションが上がらないわけないぜ!」
「みらみらはどうだったー?」
エルシアがリュドミラに声を掛けた。
リュドミラもテンションが高いと思っていたエルシアだったが、当の本人は溜息をついていた。
「私はね~。親が両方とも冒険者だからギルドの事はよく聞いてるんだ~。だから今更~って感じ~」
「そ、そうだったのね」
「2人はどうしてたの~?」
リュドミラに聞かれ、今はまだ黙っていたほうが良さそうだったので適当に誤魔化すことにした。
「復習から予習大変だったよ~」
「お、そうだな」
しばらくしてグルルトが教室に入ってきた。
相変わらずテンションが高いグルルトは適当な生徒を指名し、ギルドに行った感想を聞き出していた。
それが3人ほど続いた後話が終わり、下校となった。
「アリスちゃん帰ろー!」
「ええ。帰りましょうか」
「みらみらとゲルトラウドもまたねー」
「おう」
「またね~」
学園を後にし、帰路についた。
家では来週に迫った生徒会の罠と言える早期解散を説明していた。
「なるほど。分かりました。ですが見え見えの罠に飛び込んでくるのでしょうか」
「そこは生徒会に丸投げ」
(大丈夫なのでしょうか……)
何かを待っている時はあっという間に時間は流れていく。
時間が流れるに連れエルシアの緊張は膨らんでいった。
月曜日、朝の学園体育館。
臨時全校集会と言う建前の襲撃反撃作戦が開始されようとしていた。
「これより臨時全校集会を始めます。生徒会より発表があります。生徒会会長ハロルド君」
「会長のハロルドだ! 今日は皆に知らせることがある!」
周りからは様々な声が上がっていた。
「あ、入学式のうるさい人だ」
「生徒会とか興味ないしー」
「いつも生徒会の臨時全校集会って良いことないんだよな……」
等など。
ハロルドが片手を上げ、静粛を促す。
「アークホワイト学園生徒会会長の宣言である! 本日を持って生徒会を解散とする!」
その言葉に学園の生徒たちがざわりと騒いだ。
「次の会長任命には生徒総会での投票ではなく、1年A組エルシア・エル・シフォーニ、ファルト・ニールの両名を集団戦闘で勝利した者を会長に任命することとする!」
視線の矛先が2人に集中する。
ファルトは平気なようだが、エルシアは緊張でガチガチになっていた。
「日程は後日張り出させてもらう! それまでには攻撃禁止だぞ! 規則を守れない奴は生徒会には要らないからな!」
「以上生徒会からの発表でした。次に副学園長からの発表です」
「副学園長です。オズウエル学園長の体調不良により当面の間私が臨時学園長になります。生徒諸君も体調には注意してください。以上で全校集会を終わりにします」
臨時全校集会が終わると、エルシア、ファルトへの視線が更にあらゆる方向から突き刺さる。
「なぁファルト! なんで言ってくれなかったんだ? すごいじゃないか!」
「そうか? 言ってもしょうが無いことだったしな」
「生徒会からひと目置かれるのはいいな。俺もお前達の相手になろうかな」
「本気で止めとけ。怪我するぞ」
「言ってくれるな~」
ゲルトラウドはあくまでも集団戦闘に参戦するようだ。
アリスは作戦の内容を知っているため参戦せず。
リュドミラは興味がなさそうだ。
★
深夜、とある場所でアークホワイト学園の制服を来た人物とローブを羽織っている人物が路地裏で密会していた。
「報告します。生徒会が解散を発表しました」
「ほーう。で?」
「おそらく我々の存在が生徒会に感づかれた可能性があります。その証拠に次の会長はターゲットを集団戦で倒した者に継がれます」
「体の良いあぶり出しか。それでお前たちはどうする?」
「このまま何もしないことが1番の策ですが、2年B組にエデルガーデン憲兵支部総隊長の息子が居るので今後の活動に妨害が出ないように、今のうちに工作する必要があります」
生徒会の隠し玉である虎の子を事前に把握している学園生徒。
その生徒をどうにかしないと今後の活動に支障が出ると言う。
「我々が介入しない場合、時期生徒会長はその生徒が入るでしょう。介入した場合8割の確率で捕捉されます」
「どうするんだ?」
「直接介入するのではなく間接的に介入します。事前に金で素行が悪い生徒をコマにし、後が付かないように処理させます」
「よし、それで行け」
「分かりました班長」
そう言うとローブを羽織っている人物は闇へと消えていった。
残された学園生徒もローブを着ると素行が悪い生徒へとコンタクトを取る事にした。
夜の繁華街に彷徨くアークホワイト学園の生徒がいた。
そこにローブ姿の工作員が近寄っていく。
「やぁ、君たちアークホワイト学園の生徒だよね」
「あぁ? 何だ?」
「別に怪しいものじゃないよ。君たちにやってもらいたい事があるんだ」
3人は工作員を囲むと路地裏へと引きずり込んだ。
それも予想の範囲内なのか工作員は焦る事はない。
「前金として4万ビル払うけどどうだい?」
「いい金もってんじゃねえか。で? 俺たちに何してもらいたいんだ?」
「この魔道具を授業準備室の前で使ってほしいんだ。監視カメラとか機械式魔道具に気をつけて。それが出来たらまた1万ビルをあげるよ。また同じ時間にこの場所に居るからまた来てね」
「簡単じゃねーか! そんなことで4万ビル貰えるならやってやるよ!」
「明日さっさとやって追加の1万ビルも貰おうぜ」
「それだけあれば半年は食ってられる!」
「くれぐれも気をつけてね」
工作員はそれだけ言うと路地裏の暗闇へと消えていく。
前金を貰った3人は引き続き夜の繁華街にくり出すのであった。
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