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天使と悪魔の片翼の輪舞曲~One wing of them~  作者: 白築ノエル
3動き出す悪意
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51生徒会宣言準備





 火曜日、朝登校すると下駄箱で副学園長に会った。

 職員会議の結果を知らせに来てくれたらしい。


「例の件、生徒会に一任したわ。先生も学園内監視するけど多分生徒会の方が助けになってくれる」

「ありがとうございます。副学園長先生」

「危なくなったら先生を頼ってね?」


 そう言うと職員室へ戻っていった。

 

 そして朝礼の時間が来た。


「皆席につけ~。朝礼始めるぞ」

(なんか先生テンション低くない?)

(だね。何かあったのかな?)

「そこ! やっぱりテンションが低いと心配になるよな!? あーよかった! がはは!」

(うっわ……心配して損した)


 クラス内の空気が凍り付いた。

 しかし、そんなことも気にせずに話しを続ける。


「今日は全クラス特別課外授業だ! 1年はギルドに登録に行くって話だ!」

「うおおおおおおおおお!」

「キタコレ!」


 手でざわついたクラスメイトを静めた。

 

「ただし! 事前の登録調査で登録済みの委員長2人は留守番だ!」

「委員長どんまい!」

「今度良いことあると良いね」


 この後の行動予定をグルルトが話し、クラスメイトが準備を始めた。


「そうそう、委員長。これから生徒会準備室に行ってくれな! 例の件だ!」

「分かりました」

「じゃ! おとなしくしててくれな!」

「エルシアさん、ファルトさん。私もギルド登録まだなので行ってまいります」

「アリスちゃんいってらっしゃ~い」


 グルルトから教室の鍵を預かると、全員が出たことを確認し教室の鍵を締めた。

 2人は生徒会準備室に向かって歩き出した。

 場所は2階の職員室の向かい側だ。


「ここだよな?」

「うん」

「失礼す……します」

「失礼しまーす」


 中に入ると入学式で見た熱い男が“回”に置かれた机の正面に座っていた。

 左右にはこの間の試合で立ち会ってくれたルシア風紀委員長が座っている。

 その他には風紀委員の腕章を着けているためルシアの配下と思われる。


「座ってくれ! エルシア君! ファルト君!」

「はい」


 2人は椅子に座るとすぐに生徒会側が話しかけてきた。


「私の名前はハロルド・ハーデンだ。今学園に居る生徒は我々を除いて全てギルドに行っている! さぁ、襲撃の反撃にでようではないか!」

「以前細工された機械式魔道具の犯人はほぼ固まってるよ。後は尻尾を出すのを待つだけだ」


 どうやら風紀委員はあの時細工された機械式魔道具の犯人の情報を掴んでいるようだ。


「それで俺たちは何をすれば良いん……ですか?」

「君たち2人には少し戦ってもらうよ。もちろん敵の妨害も入ってくるでしょうけど」

「そ、それはどういうことですか?」

「それはね……」


 生徒会準備室から出たのは昼休みに入った時だった。

 2人とも座って真剣に話していたのは1時間ほどだ。

 それからは集中力が切れてしまいイマイチ頭に入ってこなかった。


「つまりどういうことだ?」

「んー。生徒会長が早期解散して次の指名に私達を使うってことでしょ?」


 ハロルドが立てた計画はこうだ。

 まず全校集会で生徒会の早期解散を発表する。

 次にエルシア、ファルトを倒したものにその座を譲ると宣言。

 発言力のある生徒会を潰しに来るであろう敵をそこで捕縛、尋問に掛ける。

 裏にいる組織を摘発、憲兵に通報することである。


 決行日は来週の月曜日の朝礼で発信する。

 それまでにエルシア、ファルトはできるだけ力を着け、負けないようにすることが大切だ。

 その計画を知っている教員は午後の自習に対人訓練のカリキュラムを入れた。


「今回の対人訓練はギルドランクB以上かそれ相当の戦士、魔法使いの身体データが記録された魔道具を持って行う。2人は2体の分身を倒してもらう」


 魔道具を起動させると黒い影が立ち上がり剣と杖を向けてきた。


「ファルト! 戦士は任せて! 魔法使いをやっちゃって!」

「了解。大丈夫か?」

「大丈夫!」

「それではスタート!」


 すぐに影が動き出し攻撃をしてきた。

 2人も魔法を展開し反撃に移る。


「我の威を示せ! アイギス=エモートセイバー!」

「我の威を示せ、アルティメットフィジカルブースト」

「お前の相手は私ぃー!」


 ファルトに迫った戦士の影をエモート防御魔法で攻撃する。

 初見殺しの一撃だが、咄嗟に体を撚ると回避してみせた。

 しかしそれだけで十分だった。

 戦士の影はエルシアを敵だとはっきりと認識したのだ。


「我の威を示せ、スピカステイシス! 我の威を示せ! アイギス=エモートハンマー!」


 2つの魔法を発動させる。

 光り輝く鎖が戦士の影を捕縛しようとするが剣で断ち切られてしまう。

 そこにエモート防御魔法が振り下ろされ戦士の影を押しつぶす。

 だがしかし、身体強化でも付与したのか片手で持ち上げている。

 

「我の威を示せ、エレキ=リコネクト、我の威を示せ、チャージ=リコネクト、我の威を示せ! アイギス=エモートレールガン!」


 先日ファルトが使用した両手を使用した魔法の行使。

 一見簡単そうに見えるが、魔法を同時に発動することは先に発動している魔法の魔力制御を乱さずに行使することになる。

 少しでも失敗すればファルトの様に腕を負傷してしまう。


 戦士の影は直ちにハンマーの範囲から出ると防御魔法を展開する。

 それと同時にローレンツ力により防御魔法の弾丸が撃ちだされた。


 戦士の影が展開した多重防御魔法の壁を複数枚突き破るが、それでも本体には届かなかった。

 しかし今の攻撃は戦士の影にとってもかなりの脅威になるようだ。


「我の威を示せ、スフィアシールド=エモート榴弾!」


 エモートアーチャーの様に丸い防御魔法が飛んで行くが、戦士の影目の前で砕け、いくつもの破片となり降り注ぐ。

 防御魔法の発動と同時に破片が到達する。


「やった!」


 そう思ったのも束の間、防御魔法の破片が中途半端に刺さっていたのが落ち、回復魔法を使ったのか、傷跡がなくなったのだ。


「ずるい! 我の威を示せ、アイギス=エモートセイバー」


 鍔競り合い状態になるがギルドランクBの戦士に力負けし徐々に押し込まれる。

 エモートセイバーは腕の角度と防御魔法が同期しているため弾かれれば無防備な胸を晒すことになる。


「うっ……ぐっ……」

「エルシア!」

「こ、来ないで……! 何とか……するから! そっちの相手して!」


 言っている間にも押し込まれていく。

 2つ目の魔法を発動しようにも、もはや片手では戦士の影を抑えきれない。

 今腕を押さえている手を離してしまったら完全に弾かれ一撃を受けてしまう。


「う゛う゛っ……!」


 現実が急速に色あせていく。

 時間が経つのが遅くなり、思考が加速する。 

 どうすれば良いか頭の中で何度も試行される。

 しかしどれも結局弾かれ切られてしまう。

 ふっとファルトの身体強化が目に入った。


「(そうだ……。身体強化だ。手から放つんじゃなくて体から!)……っ。我の威を示せ、ボディアーマー=エモートオーバードライブ!」


 エルシアの体を防御魔法が包み、エモート防御魔法が体を無理やり動かす。

 この状態では体を動かすことが出来ず、エモート防御魔法を制御し体を動かす必要がある。

 魔法の制御が体の制御なのだ。


「まだうまくできないけど……! 押し返すぐらいなら!」


 エルシアの刃が徐々に押し返し始める。

 もう片方の手で太ももに着けているダガーナイフホルダーからナイフを取り出し投擲した。

 戦士の影に刺さり一気に態勢が崩れ、制御しきれていないエモートオーバードライブがそのまま戦士の影を両断してしまったのだ。


「勝った!」


 エルシアは魔法を解除するとファルトの方へ向き直ったのだった。






 


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