表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
天使と悪魔の片翼の輪舞曲~One wing of them~  作者: 白築ノエル
3動き出す悪意
49/113

49俺が蚊帳の外……だと?





「うー。昨日はひどい目にあった……」

「まさかエルシアさんのエモート防御魔法が原因でバグが出るなんて予想もしませんでした」


 2人はアリスの部屋に居た。

 昨日のトレーニングで予想もしない形で終わってしまった鬱憤を晴らしていたのだ。


「まったくだ」

「でもこれでエルシアさんのエモート防御魔法の秘密が1つ分かりましたね」

「?? 私何も隠してないよ?」

「いいえ。私もエモート防御魔法を習得しようとした時がありました。結果は失敗です。それはなぜか。リルーストが示しました。基本的にあの魔道具の魔法は模倣です。それをできないと言うことは魔法の基礎に沿ってないからです」


 エルシアは何のことだかさっぱり分かっていない。


「魔法の基礎。魔力を正しく制御することで初唱(ファーストワード)を唱える事ができます。続いて終唱(ラストワード)ですが、エルシアさんはこの時点で魔力制御を捻じ曲げ結果を変えています。普通なら定義破綻しますが、なぜだか通ってしまうんですね」

「授業でやったところだな」

「……そうだっけ?」


 アリスはエモート防御魔法を魔法のバグ(・・)と言い表した。


(そういえばあの時は怒ってましたね……)


 当時の授業を思い返していると1階から呼び声が聞こえてきた。


「アリスー。お友達よー!」

「誰でしょうか? ちょっと行ってきますね」

「ああ」

「いってらっしゃ~い」





 その日リュドミラは退屈していた。

 両親からはそのお花畑みたいな思考をやめろと言われ、休みの日は常に外出していたが今日に限って行き付けの喫茶店は閉まっており暇になったのだ。


「暇だな~何しようかな~」


 一瞬勉強机を見たがすぐに見なかったことにした。

 

 しばらく考え込んだ結果、誰かの家に行くことにするのであった。


「あ~もしもし? あ、久しぶり~今からそっち行ける~?」

『ごめん! 今日バイト入っちゃって。また今度誘って!』

「うん~。バイト頑張ってね~」


 受話器を置くと少し考え始めた。


「ん~。仲良かった友達少ないんだよね~。ん~、アリスさんはどうかな~? アリスさんの家の番号は~」


 ダイヤルを回し、受話器を取る。

 発信音の後相手が受話器をとった。


『はい、シルヒハッセです』

「あ、もしもし~アリスさんと同じクラスのリュドミラと言います~アリスさんはいらっしゃいますか~?」

『あら! アリスの御学友ね! ちょっとまってね』


 しばらくしてアリスが電話に出た。


『もしもし、リュドミラさん?』

「あ~、アリスさんおはよー。これから遊びに行っていい?」

『えぇ。大丈夫ですよ。家は分かります?』

「目立ってるからわかるよ~」

『ではお待ちしてますね』

「また後で~」


 受話器を置くと鞄を持ち家から出た。

 





アリスは部屋に戻ると座って待っていたエルシアとファルトに電話の事を伝えた。


「これからリュドミラさんが来るそうですよ」

「おー! アリスちゃんなんかソワソワしてるね」

「初めて御学友が出来て、初めて家で遊ぶので若干浮足立ってます」

「そんなもんか? ただ家に来るだけだろ?」

「このにぶちん!」

「いて! ビンタはねーだろエルシア」


 エルシアは如何に女の子の初めてが如何に大切か語り(小言)だした。

 10分に渡りエルシアの語りが続き途中からアリスも加わり、より一層ファルトへの語りが激しくなったのだった。


シルヒハッセ家にインターホンが鳴り響く。

 

「はーい。シルヒハッセです」

「こんにちは~。リュドミラです~」

「来たのね! 今門開けるから待っててね」


 そう言うとルルはインターホンの隣りにあったボタンを押した。

 すると、門が自動で開いていき門の前にいたゴーレムが動いたのだ。

 リュドミラが中にはいると、ゴーレムが検知し、これもまた自動で閉まっていった。


「ほえ~。お金持ちすご~い」


 玄関ドアをノックし、中から出てくるのを待っていると後ろを何かが横切った。

 リュドミラはそれを確認するためにドアに背を向ける。

 そこに居たのは猫だった。


「にゃ~ん」

「かわいい~猫ちゃ――」

「リュドミラちゃんおまたせ!」

 

 ルルがドアを開けると背を向けていたリュドミラを押してしまった。

 そのまま猫へ倒れかけていくと、そそくさと猫は逃げてしまい地面に顔をぶつけたのであった。


「ぶべっ!」

「あっ」


 リュドミラはルルに引かれて中に入ると、その広さに声が出た。


「ほわー。すごい広い~」

「そんなことないわよ! 普通よ。うふふ」

(これがお金持ちの感性か~)

「アリス呼んでくるわね」


 エントランスのソファーに座らせると、アリスを呼びに行った。

 ルルがアリスの部屋の扉をノックし、開けるとファルトが2人から小言を言われているのを目撃した。


「アリス~? 御学友来たわよ」

「あら。もうリュドミラさん来ましたか。エルシアさん、ファルトさん。少し待っててくださいね」


 アリスは部屋から出てルルと一緒にエントランスへ向かう。

 階段から降りているとリュドミラがアチラコチラをキョロキョロしているのが目に入った。


「リュドミラさんこんにちは」

「アリスさんこんにちは~。行き成りごめんね~」

「いえ。私は気にしませんよ。御学友が初めて家に来てくれたので、そういうのはピンっとこないのですが」

「ふふふ~。初ですな~」

「それじゃ私はお菓子でも持っていくからね」


 ルルは楽しそうにキッチンへ向かっていった。

 2人はそれを見届けると2階にある自室へ向かう。


「ここが私の部屋です。中にエルシアさんとファルトさんが居ます」

「えるえるとファルトさんですか~。そう言えば2人はアリスさんの家に身を寄せてるんだったね~」

「えぇ。さ、入って」


 中に入るとエルシアが足の痺れたファルトを小突いている場面だった。


「エルシア! や、やめろぉ!」

「ここが良いのか? ほれほれ」

「あら~。えるえる、ファルトさんと仲がいいんですね」

「あ、みらみら~。おいーす!」


 ハイタッチを交わす2人。

 ちょっとここ突いてみてと言われ痺れた足にリュドミラが指で突っついた。

 ファルトの苦しい声が漏れてきているがエルシアはそれを面白く笑っている。


「エルシア……! リュドミラも少しは加減をし……いぎゃああ!」


 そんな3人をアリスは苦笑いで見ていたのだった。


 しばらくしてルルが茶菓子を持ってアリスの部屋へとやってきた。


「お菓子とお茶持ってきたわよ~。ごゆっくり~」


 ルルは終始笑顔でお菓子とお茶を配ると笑顔で出ていった。


「アリスさんのお母さん笑顔がいいね~」

「今日は特に機嫌が良いみたいですね」

「あ、そう言えば~。学園近くの大通りに新しくオープンしたスイーツ店行きましたか~?」

「なになに? 甘いもの!?」


 エルシアが話題に食いついた。

 最近の食事事情は甘いもの3割である。


「アリスさんとえるえる今度行ってみる?」

「行く! アリスちゃんも行くよね!」

「えぇ。一度はそういう店に行ってみたかったのです」

「俺は?」


 女子3人衆が盛り上がってる中、1人男のファルトが声を出した。

 それを聞いた女子3人衆は少し考え込むとエルシアが返答をする。


「ファルト~。今まで甘いものあんまり食べてなかったけど、実はスイーツ系男子なの?」

「誰がスイーツ系男子じゃ!」

「じゃ、3人で行こうね~。どんなのがあるんだろうね~」

「噂によると30センチサイズのジャンボパフェがあるみたいだよ」

「ごくり……!」

「俺は蚊帳の外か……」


 ファルトは盛り上がっている3人を残しお茶だけ持つと部屋を出ていった。

 部屋から出てお茶を一口飲んだ時だった。

 ファルトの視線にルルが壁に耳を当て中の音を聞き耳していたのだ。


「ごっほっ! る、ルル!? 何してんだ?」

「あ、ファルト。話についていけずに出てきたわね」

「そ、そんなことはない」


 あくまでも話についていけずに出てきたとは言わないのであった。






「☆☆☆☆☆」を押して応援していただけると嬉しいです!



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ