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天使と悪魔の片翼の輪舞曲~One wing of them~  作者: 白築ノエル
3動き出す悪意
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45レジスタンスの暗躍





 エデルガーデン廃材施設地下。

 レジスタンスの一味が活動していた。

 年の層は10代から70代後半まで幅広い人で溢れている。


「ゴーレム・エクス・マキナはどうした?」

「あぁ。データも取れたし証拠の処分もバッチリだぜ。ありゃあデカすぎて魔力の流入が間に合ってねーな。現地工作員が魔力不足で食われちまった。敵城に放りこんで使うのが良さそうだな」

「そうか……革命のために志半ばで逝った仲間に感謝を。対象の音声解析は終わっているか?」

「もちろん。後はオートマタに搭載するだけだ」

「よし。オートマタは最後の手段だ。国から抜いた魔法技術とゴーレムを使ってまずは攻める」


 会話していた2人は20代から30代の若者であり

 ローブのフードを深く被っているため顔はわからない。

 声からして2人が男であることはわかる。

 

「しっかしよくもまぁ情報抜けたなぁ。これ極秘レベルのだろ」

「そこは潜入してる仲間のおかげだな」

「じゃ、ちょっくら準備してくるわ」


男は上司らしき者から離れると地下のその下、地下2階へと足を運んだ。

そこにはゴーレムが停止状態で保管されており、何人かの人間がゴーレムをメンテナンスしていた。

そもそもここにあるゴーレムは国が破棄した物を盗んできたものだらけである。


「よお、ルビー。準備のほどはどうなってる?」


 男が話しかけた相手も顔が見えないが体格から女性だろう。

 名前はルビー・サーナイトと言う。


「あらー? 誰かと思ったらあなたですか。もしかして準備ができてるかっとか聞いちゃう系ですか?」

「うぅん。まぁそうだな」

「ゴーレムはいつでも出せますよー。新しく仕入れた魔法技術の魔道具化はまだ80%と言ったところかねー。オートマタの準備は音声の微調整ですね。操作系に難があるのでマスタースレーブ方式に転換中―」

「ゴーレムってどれくらい強いんだ?」

「そうですねー。私が考え開発した魔法カートリッジシステムでマグナムブレイカーを5回分撃てます。近接攻撃には元となったゴーレムが国の旧式ですが通常の汎用ゴーレムに比べて40倍の出力を得てますねー」


 必要な情報をペラペラと早口で喋った彼女はどこか自慢げな雰囲気を醸し出している。


「お前、得意な事となるといつも早口になるな」

「だって、この興奮を、素晴らしさを、誰よりも早く伝えたいじゃないですか」

「そ、そうか……」

「ところで、そちらの準備はどうですー?」


 そう言われると男は順調だと答えた。

 すでに工作員が潜入済みだと言う。


「それは良かったですー。私の傑作の前座になってくださいね。では私は戻るんで~」

「はいよ。俺も仕事すっか」


 そう言うと腰につけていた無線機を手に持った。

 周波数をあわせ工作員に連絡を入れる。


「あーあー。聞こえてるか?」


 無線に乗ったノイズから声が聞こえてくる。


『班長聞こえています』

「お前のクラスにアーノルドってガキ居たよな? そいつを唆してターゲットと争わせろ。理由なんてなんでもいい。それっぽく仕立て上げろ」

『了解しました。日時はどうしましょうか?』

「明日から早速動いてもらう。準備は大丈夫か?」

『はい。大丈夫です』

「よし。吉報を待ってる」


 そう言うと無線を切り、腰のホルダーにしまった。

 





 仕事を任された工作員はアーノルドの正確を利用する手を思いつき早速行動を始めた。

 紙とボールペンを取り出し、アーノルドの気に障るであろうことをズラズラと書き連ねていく。

 小一時間ほど考え、書き連ねた後弓矢と紙を持って家の外に出る。

 この家もレジスタンスが用意したものだ。


「さてと、アーノルドの家はっと」


 裏路地や人の少ない道を当たり前のように歩いていく。

 そして誰一人にも見られること無くアーノルドの家まで到着すると、壁を登り邸内に侵入をした。

 邸内には私兵が居たが明け方だった為かあくびをしている者も居た。


「アーノルドの部屋は……我の威を示せ、サーチアイ」


 生活魔法であるこの魔法は魔力が維持できる距離までならどこでも見ることができる代物だ。

 窓から中を覗きアーノルドの部屋を探す。

 

 2階の右端の部屋の窓から寝ているアーノルドの姿を見つけた。

 魔法を解除し右側に移動すると、弓を引き絞り矢文を放った。

 ガラスが割れる音がし、部屋の明かりがついた。

 それだけ見た工作員は邸内から脱出していたのである。


「何だ!? 何事だ!」


 アーノルドが騒いでいると私兵がやって来た。


「アーノルド様どうかなされましたか?」

「お前ら入ってこい!」


 アーノルドが部屋の照明を点けると私兵が部屋に入ってきた。

 私兵は部屋に入るなり壁に刺さっていた矢文を引き抜く。

 そして矢に着けられた紙を外して読む。


「どうした?」

「いや~。これは見ないほうがいいですよ」

「いいからよこせ」


 紙を奪い取り、書かれている文字を読んでいくとみるみる顔が赤くなっていく。

 怒りの限界を迎えたアーノルドは紙を破り捨て私兵に命令を下した。


「今すぐこれを書いたクソ野郎を連れてこい! 二度とこんな事掛けないようにへし折ってやる! さっさと行け!」

「は、はい!」


 しかしいくら探しても見たものはおらず、捜索は打ち切られた。

 

 これが2日3日と続き、警備を増やしても矢文は射られ、その度に犯人に逃げられると言うサイクルができていた。

 アーノルドは嫌がらせから学園でも常にストレスを貯めておりいつ爆発してもおかしくなくなっていた。





「(そろそろ頃合いか? 起爆剤はターゲットだ。内容としてはこの間の付喪神の件で行くか)アーノルドさん! この間有った付喪神の呪いであの片翼(ハーフ)が活躍したそうですよ。アーノルドさんを差し置いて!」

「この俺がヒトモドキに劣るだと! そんな事はありえない! 有ってはならないのだ!」

「(自尊心の塊だからちょっと煽ると火が付く。ちょろいな)一層のことどっちが上かハッキリさせちゃいましょうよ!」

「よし! 今日の放課後にあのヒトモドキに鉄槌を下してやる」


 そう言うとズカズカと職員室へ向かっていくのであった。

 取り巻きの一部はA組に向かいエルシアとファルとを呼び出していた。


「お前らアーノルドの取り巻きだろ。何のようだ?」

「お前たち2人に宣戦布告に来たんだよ! 今日の放課後にグラウンドでアーノルドさんと模擬戦がある。もちろん逃げないよな?」

「いいだろう。いつかのエルシアの借りを返してやるよ」

「言ったな? 覚悟しろよな!」


 そう言うと取り巻き達はB組に帰っていった。

 後ろで聞いていたアリスはファルトに事情を聞いている。

 エルシアも話すが今回のことは思い当たる節は無い。

 また厄介なことに巻き込まれましたね、とアリスが2人を慰めるのであった。


(よし、次は身代わりの腕輪の細工だな)


 機械式魔道具の身代わりの腕輪はダメージを一定量肩代わりしてくれる物だ。

 エルシアとファルトの身代わりの腕輪は特別性になっており2人でダメージを共有するタイプになっている。

 それ故に細工がしやすいのだ。


 誰にも見られずに授業準備室へと入り込むと早速細工をし始めた。

 最初は通常通り機能するが、一定時間後に腕輪のダメージ身代わり効果がなくなるという細工だ。

 

「ふう。こんなところか。さて……どんな戦い方を見せてくれるか楽しみだ」


 それだけ言い残すと授業準備室から誰にも見られずに出ていったのであった。






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