44学校の怪談 其の四
「エルシアさん! 先程の歌でリュドミラさんを!」
「う、うん〈聖なる言霊よ、我が歌を以って浄化の聖歌となれ。私は貴方の悲しみを感じ、大切なあなたを救いたい。穢れし魂よ、原初の海へとおかえりなさい。そして全てに救いを与えられん〉」
浄化の聖歌によりリュドミラから邪気が取り払われるが、直ぐに邪気が集まりもとに戻ってしまう。
「ああ! 元凶をどうにかしないと無理っぽい」
「リュドミラちゃんには悪いけど少し黙っててもらおうかね。 我の威を示せ、マナバインド!」
「我の威を示せ! グラウンドストーンバインド!」
魔力の鎖がリュドミラに巻き付き地面から生えた岩が更にリュドミラを囲む。
2人かかりの拘束になり、全員の視線は元凶であるモノに向いた。
「本体を攻撃しろ! 我の威を示せ、サンダーストーム」
「我の威を示せ、オーシャン=リコネクト。我の威を示せ、エレクトロン=リコネクト。我の威を示せ! ハイドロジェンジェネレート」
「リュドミラさんを返していただきます。我の威を示せ、ファイア=リコネクト。我の威を示せ! ファイアアークシュート」
「我の威を示せ! アイギス=エモートアーチャー」
ゲルトラウドの雷が降り注ぎ、ファルトの魔法で水素が敵の周りに大量に生成され、アリスの攻撃魔法で起爆し大爆発を起こしたのだ。
「やったか!」
「……その程度の攻撃魔法で私を倒せると思ったのか?」
「嘘だろおぃ!」
「ゲルトラウドさんが余計なこというから……」
「なんでや!」
そんなコントをしている間にリュドミラを拘束していたリンネとミルキーが苦言を上げる。
「すまないがリュドミラちゃんの抵抗が激しい。結界魔法が壊れる!」
「こっちも無理です。破壊されます……!」
その言葉と同時に結界から開放されたリュドミラ。
アリスが直様肉薄すると回し蹴りで首を蹴飛ばした。
「これで――」
「気絶させたところで動かなくなると思ったか?」
ムクリと起き上がり、アリスに攻撃を加えてきた。
なんとかそれを避けるとバックステップで距離を取る。
するとこちらに手を向けてきた。
「われのいをしめせ、まぐなむばすたー」
「我の威を示せ! アイギス」
ゴウンっと鈍い音がし、エルシアの防御魔法に亀裂を入れた。
「我のいをしめせ、マグナムぶれいかー」
先程より強力な攻撃魔法が炸裂し防御魔法に致命的な亀裂を入れたのだ。
そして何か行動をするたびにリュドミラの論理的思考や滑舌が良くなっていく。
「我の威を示せ、ファントムバスター」
「わ、きゃあ!」
「大丈夫かエルシア」
「うん。ファルトありがと」
防御魔法が破られ、後ろに転びそうになったところにファルトが手を差し出して支えた。
敵は愉快そうな声を上げて楽しんでいる。
そんな中一番うしろで魔導書を開き何やら探しているミルキーが居た。
「これでもない……これも違う……」
「ミルキー何を探してるんだい?」
「リンネ部長。あの霊に関してです。まだ情報はありません」
「そうか。エルシアちゃん、元凶に先程の浄化をしてみてはどうかね」
「やってみます!」
「よし、皆でエルシア君を守れ!」
エルシアが聖歌の準備に入ると、リュドミラが身体強化無しで素早く近づいてくる。
その速さはアリス並だ。
浄化の聖歌が紡がれている間にもリュドミラは絶えず攻撃を仕掛けてくる。
近接攻撃はアリスが担当し、攻撃魔法はファルト達が応戦する。
「〈――全てに救いを与えられん〉」
「ぬ、グオオオオオオオ!!」
「リンネ部長これは効果有りと受け取っても良いのでしょうか」
「わからん」
元凶は原初の海に飲まれ、邪気が消え失せた事をエルシアが感じ取った。
だが次の瞬間、爆発的な邪気が発生し元凶は再び元の状態に戻ってしまったのだった。
「これは……そういうことですか。皆さん! そこにある石像を壊してください! 本体はそれです」
「どういう意味なのかね?」
「敵は付喪神です。長い年月を経て道具に霊魂などが宿る現象です。おそらくはここを守る役割だた石像が長い年月を経て宿ったのでしょう。そして石像のそばにツルハシが落ちている事からここに来た業者が壊そうとして怒りを買ってしまったのが推測されます」
付喪神はリュドミラを石像の前に移動させ防御態勢を取った。
この事から元凶である付喪神の弱点は石像で有ることが明白になった。
石像の痛み方からして攻撃魔法が一発でも命中すれば砕けると予想したファルトはリンネとミルキーに結界魔法を再びリュドミラに使ってもらうように頼んだ。
残ったアリスとゲルトラウドで石像に攻撃を開始する。
「我の威を示せ! フルメタルバインド!」
「我の威を示せ、ステイシススパイク」
二重結界がリュドミラをその場に拘束する。
3人はサイドに回り込むと攻撃魔法の準備を始めた。
「よし今だ! 石像を狙え。我の威を示せ、ペインブレイク」
「終わりです。我の威を示せ、ライトニングエレメント=リコネクト、我の威を示せ、バーストスパークフィジカルブースト!」
「よっしゃ! 続くぜ! 我の威を示せ! マグナムストライク!」
攻撃魔法が一点に集中する。
付喪神も恐れたのか、リュドミラを強制的に結界魔法から抜け出すと攻撃魔法の遊撃に回ったのだ。
しかし、付喪神は1つ誤りを犯した。
アリスと言う近距離アタッカーが居たのを。
「我の威を示せ、バリアブルアイギス」
攻撃魔法は防御魔法に邪魔され届かなかったが、アリスが直様トップギアで石像に行き、身体強化と雷を宿した蹴りで粉砕したのだった。
「そ、そんな、我が、消え、る」
付喪神が消えた瞬間には邪気は飛散し、リュドミラも開放された。
アリスは付喪神が居た周囲を調べていると、一振りの錆びた刀身が見つかった。
一応父アンソニーのコネで調査部があるので持ち帰って調べてもらおうと錆びた刀身を拾い上げた。
「みらみら大丈夫?」
「う、う~ん。あれ? えるえる? あ! 幽霊は!?」
倒した事を告げると一安心したのか倒れ込んでしまった。
「痛い痛い!」
「ど、どうしたの?」
「体中が痛い~!」
「すぐ直すからね。我の威を示せ、ボディーカルテ。……ふむ。我の威を示せ、ハイフリートヒール」
「ぬふ~癒やされる~」
この後教員にすべてを話し、後処理をお願いした。
学園は当面休校になるようだ。
生徒のメンタルケアや校舎の修繕などやることが多い。
アリスは錆びた刀身を家に持ち帰り土曜日の夜帰宅したアンソニーに調査を頼んだのだった。
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