43学校の怪談 其の参
「#$%&!“$‘$’”!」
「う、うわあ!」
「何だ!? そいつを取り押さえろ!」
アーノルドの取り巻きが女子クラスメイトを取り押さえる。
だが女子の細腕のどこに力があるのか、取り巻きの男子を振り払っていく。
「我の威を示せ、パラライズ」
「#%!」
「なっ! 魔法が効かないだと?」
「アーノルドさん任せてください。我の威を示せ、ボルテックスバスター!」
「やったか!」
「やりましたよ! アーノルドさん」
アーノルドの取り巻きが騒いでいる横で、クラスメイトが殺害されたことにショックを受けている者も居た。
流石にこれはマズイと思ったのか、複数人の生徒が職員室へと走っていく。
すると1人の生徒が後ろから来た生徒に転ばされた。
クラスの生徒全員がその人物を見ると、先程近距離で魔法を受けた女子生徒だった。
「な……なんで……え? 僕の足がああぁぁ!」
男子生徒の足は脛骨と腓骨が完全に砕かれ、骨が皮膚を突き破り露出している。
「なんでだ? 俺はさっき確実に魔法を当てたはずなのに……」
職員室に向かった残りの生徒をもう片方の女子生徒が追いかけていく。
階段を目指して走っていくと後ろから徐々に悲鳴が聞こえ始める。
一番先頭を走っていた生徒が後ろを振り向くと、最後尾からクラスメイトが倒されているのだ。
「足が早すぎる……。職員室に付く前に全員やられる! こうなったら……」
廊下で緊急事態を知らせる為の物。
それは火災報知器だ。
学園中に火災報知器の音が鳴り響く。
「よし、これで助けが……うわああ!」
★
「なんだ? さっきから煩いな。ちょっと先生は様子を見てくるから全員教科書に目を通して置くように」
そう言うと廊下へと出ていった。
(さっきから爆発音してたし、さっきの火災報知器……何なんだろうな~。ちょっとだけ見てみるのも……)
エルシアは席を立つとこっそり後ろの扉を開けた。
するとそこには教員6名が1人の生徒を拘束していた。
エルシアは扉を閉めるとファルトの元へ向かう。
「ねぇねぇ! 廊下で先生達が1人の生徒を拘束してたよ。何かあったんだよ」
「お前なぁ。厄介事に首突っ込むなよ? 厄介事はオカルト研究部だけで十分だ」
ファルトと話したあと席に戻ると校内放送が流れた。
それは焦っているような口調で全生徒に避難指示が発令された。
特に1年A組は非常口から出るように指示があった。
教室がざわめき始める
「(ここは委員長の出番!)みんなー! 慌てずに非常口に向かって! 慌てない、焦らない」
エルシアはA組の生徒を避難させ、無事に委員長としての役目を果たした。
そこに他のクラスの生徒も続々と集まってくる。
だが、教員の姿が少ないことに気がついた。
「アリスちゃん、先生少なくない?」
「そうですね。先程の校内放送でも焦っていましたし。何か教師が大勢関わらなければならない事になっているんでしょうか」
「……あっ」
「どうしました?」
「みらみらが居ないよ!」
アリスもリュドミラがどこかに行ったきり姿が無いことに気がついた。
その時である。
学園の壁の一部が吹き飛び教員が転がってきたのだ。
全員が目を向けた先には男性教員が他の教員を魔法で吹き飛ばす所だった。
「キャー!」
「せ、先生が……」
「嫌よ嫌! こんなところで死にたくない!」
生徒が混乱し始める中、避難してきた生徒を纏める教員達が生徒に被害を出さないために防御魔法を展開する。
「先生! A組の生徒1人がまだ校内にいるんです!」
「なんだって、だが今はここを守る事が精一杯だ」
おかしくなった男性教員が防御魔法に触れた。
バチっと言う音がし、手が弾かれる。
「わわわわわ、われののののの、のいいいいいい、しをしめせええええええ まぐなむばすたー」
その一撃は防御魔法を揺らし、ゼロ距離で放ったため攻撃魔法を発動させた腕の骨が外れた。
それを見ていたエルシアは、骨が外れ痛みもあるだろうと思っていたが平然としている男性教員を不思議に思った。
男性教員の目の前まで移動すると、暫く気を張って観察を始める。
ファルト、アリス、ゲルトラウドがやって来た。
「どうしたんだエルシア」
「エルシアさん何を」
「危ないから下がったほうがいいぞ」
更にそれに気がついたのかオカルト研究部の3人も来た。
「エルシア君、危ないから下がったほうがいいぞ」
「……これは……呪い?」
「呪いって誰がだ?」
「トラヴィス、この先生以外にいないでしょう」
エルシアが呪いの概要を説明していく。
そうしている間にオカルト研究部の3人はヒートアップしてきた。
特にリンネの反応が凄まじかった。
「魔法の類ではない呪いなんてオカルトの領域だ! それで呪いをかけている者はこの世のものか! それとも死霊の類か! もしかして――」
「リンネ先輩落ち着いてください」
アリスがリンネを止めた。
「とりあえずやることをやります!」
「一体何をするんだ?」
ゲルトラウドがアリスとファルト以外の代弁者になった。
「呪いを消滅させるの! 〈聖なる言霊よ、我が歌を以って浄化の聖歌となれ。私は貴方の悲しみを感じ、大切なあなたを救いたい。穢れし魂よ、原初の海へとおかえりなさい。そして全てに救いを与えられん〉」
エルシアが聖歌を紡ぐ。
すると男性教員の体から何かが抜け出し、原初の海へと帰った。
それと同時に呪われていた男性教員は泡を吹き倒れてしまう。
「な、なんだい今の?」
「今のって言われても……****様の祝福だけど」
「? 今なんて言った?」
「諦めるべきですよリンネ部長。エルシアは俺たちには聞き取れない名前を言っているで」
「オカルトかい!?」
またしてもリンネが食いついた。
それに続きトラヴィスとミルキーもだ。
「やはりエルシアちゃんには何かあるのではないか? ぜひファルト君も一緒にうちの秘密工房で身体検査を受けないかね!」
「部長! 独り占めは駄目だ! ここは皆でねっとりとじっくりと!」
「そうですよ! 私としては両方男であったほうが良いですが!」
「うわぁ……」
ゲルトラウドがあまりの食いつきに引いていた。
「そ、そんなことより呪いの元凶をどうにかしないといけないんだけど……」
「先生をどうにかすれば良いんだな?」
「トラヴィス先輩その通りです」
トラヴィスは防御魔法を展開していた教員の元へ行くと何やら話し始めた。
話し始めて1分もしないうちに防御魔法の一部が開かれた。
「よし、行こう」
「はい。リンネ部長に続け!」
6人は非常口から再び校内へと入った。
校内は攻撃魔法の痕跡が残っているが大勢居た教員の姿が見当たらない。
女子トイレ前まで行くと、エルシアが反応した。
「トイレの中から悪意を感じる」
「あら、でもここって幽霊が出るから対処を任せた所ですよね」
「アリス君、我々はもしや開けてはならないパンドラの箱を開けてしまったのかもしれないな……」
「先輩……何言ってるんですか」
「とりあえず入るか」
一同が女子トイレの中に入ると以前にも感じた空気が重たい感覚が何十倍、何百倍にも感じた。
それは目の前に空いた穴の中から溢れ出している。
念の為ファルトが先に入り、次にアリスが入っていった。
穴の中の階段を下るとミルキーが顔をしかめる。
「これは邪気ですね。これほどまでの邪気を抱え込むのに何があったのでしょうか……」
階段を下りきるとそこには居なくなっていたリュドミラの姿があった。
そしてその目の前には邪気に包まれた昨日の霊が居た。
ただ、違うとすれば大きさが魔獣並みにでかくなっているくらいだ。
「みらみら!」
「えるえる……きちゃだめぇ……」
「愚かなる人間よ。この宿主とは絆を結んだ友だったな。ならばその友に殺されると良い!!」
「嫌、いやあ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛」
リュドミラに邪気が集まり始め、肌の色が変色し始める。
そして目を見開いた時、瞳の色が反転した。
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