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天使と悪魔の片翼の輪舞曲~One wing of them~  作者: 白築ノエル
2人間の街と学園
42/113

42学校の怪談 其の弐





 エデルガーデン某所祓い屋派遣会社。

 今日アークホワイト学園から女子トイレに現れる魔獣の幽霊調査と除霊を頼まれた。


「魔獣かよ。人間ならまだしも。めんどくせえからさっさと終わらせるか」

「お、そうだな。どうせ骨でも埋まってるんだろ。掘り返して除霊させて終わりだな」

「その後どうする? 飲みに行くか?」

「いいぜ、お前のおごりな~」


 祓い屋の2人はそんな事を言いながら道具を持ち、アークホワイト学園へと向かった。

 しかし、2人の素行の悪さが大惨事を起こしてしまうとは、この世界の誰もが知り得なかった。





 シルヒハッセ家玄関にてルルに見送りされながら3人が学園に登校を始めていた。


「今日のお弁当はー! お稲荷さん!」

「おいなりさん?」

「油揚げに酢を垂らした白米をつめたものよ。美味しいから食べてみてね」

「はーい!」

「では行ってきます。お母さん」

「行ってらっしゃい。気をつけるのよー」


 家を出ると学園への道を辿る。

 途中昨日の魔獣の幽霊について話していた。

 そもそもなぜ魔獣などと言うものが街の中に幽霊として存在しているのか。

 それが不思議だった。


「なぜ校舎なんでしょうね」

「知らね。直ぐに解決するだろ」

「そう言えばみらみらあの後どうしたんだろ~」

「そうですね。リュドミラさん大丈夫だったでしょうか。トラウマになってなければ良いのですけど」


 幽霊とリュドミラの話をしながら街の中を通り抜ける。

 その間に話題はスイーツやら洋服の話にすり替わっていた。


 学園に到着すると、1階女子トイレが工事中になってしまっていた。

 入り口には三角コーンがおかれている。

 アリスは調査が早いなと思いつつ教室に向かった。


「おはよー、みらみら」

「……」

「みらみら?」

「……ん? (私のことだよ~。えるえるだよ~)おはよう」

「昨日は大丈夫だった?」

「大丈夫じゃなかったな」


 エルシアは若干ふてくされると思い、また後で声を掛けようとしていた。

 離れようとしたその時、リュドミラから声を掛けられた。


「えるえる。昨日の撫で回すのは今後やめてくれ」

「? わ、わかった?」

「へーい! 時間だぞ! 席につけーい! 委員長、朝礼!」

「あ、はい。きりーつ、おはようございます!」


 朝礼が始まり、担任のグルルトから1階女子トイレは工事で使えないと話を聞き、2階のトイレを使うように言われ、後はグルルトの無駄話で朝礼が終わった。

 一、二限の授業は基礎体力の向上の体育だ。

 体操着に着替えグランドへ集合すると、一周約400メートルのトラックを走り込むことになった。

 そしていつもどおりエルシアとリュドミラが最下位になっていた。


「この体鈍ってるぞ……(だって~体力そこまでないもんね~)」

「みらみらおつかれ~。これきついよね」

「全盛期の私ならこの程度どうって言うことはない」

「全盛期?」

「10分休憩したら次やるぞ! 最下位の2人は特に遅いから自主トレもするように!」


 その後も授業は続き、昼休みになった。

 いつもどおり5人集まり弁当を食べる……とはならず、リュドミラだけが1人で食べていた。


「なぁ。これデジャブか?」

「そうだな」

「えー。何のこと?」

(エルシアさんの事です。なんて言えないですね)

「お稲荷さんおいしい」





女子トイレにて払いの工事をしていた2人は地面を掘っていた。

4メートルほど掘り返すと明らかに人工物の階段が見えてきた。


「お? なんか出てきたぞ」

「階段だぁ? 入ってみるか」

「後で片付けがめんどくせ」


 2人は懐中電灯を点灯させ中へ入っていくと、狛犬の石像があった。

 二対あったはずの狛犬の石像は片方が完全に砕けていた。

 

「魔獣ってこの狛犬の付喪神何じゃね?」

「めんどくさいものが憑いてんな、この際こっちも壊せばいいんじゃね?」

「そうすっか」


 そう言うと階段を登り、ツルハシを持ち出したのだ。

 もう1人は奥へと進み何かの祭壇へとたどり着いた。


「何だこれ? 錆びた刀身?」


 祓い屋がそれを触るがただの錆びた刀身にしか思えなかった。

 そして後ろでは狛犬の石像に向かって思い切りツルハシを振り上げている。


「どっこいしょっと!」


 狛犬の石像の頭が砕かれた。





「!!」


午後の授業が始まって20分ほど経った時リュドミラが行き成り立ち上がり、頭を押さえながら教室から飛び出していった。


「おい、リュドミラ戻りなさい!」

「みらみらどうしたんだろ?」


 教室から出たリュドミラは真っ直ぐ女子トイレへと向かっている。

 そこにリュドミラの意識が出てきた。


(ねぇねぇ~! 授業中だよ~どうしたの~?)

「うるさい! 誰かが私を砕いた! あの場所は聖域だ。人間がただで入っていいわけじゃない!」


走って女子トイレ前まで到着する頃には額に大量の汗を掻いていた。

そのまま入り口においてあった三角コーンを乱暴に振り払うと中に入り、祓い屋が堀にいた階段へと降りていく。

そしてリュドミラの目には砕かれた狛犬の石像と、置かれていた錆びた刀身を持つ2人の男が居たのである。


「貴様ら! ここを何処と思っている! 寄りにも寄って祭壇を荒らしおって」

「女の子? 今は授業中じゃないか。ここは立入禁止だぜ」

「貴様、その汚れた手を天羽々斬から手を離せ!」

「天羽々斬? この錆びた刀身が? 面白いジョークだ」

「……許さん、許さんぞ! その身に呪いを受けろ!」


 リュドミラから魔獣、いや付喪神が離れ実体化する。

 それには男たちも驚き、一歩後ずさりをした。

 直ぐに意識を取り戻したリュドミラが見た光景は頭から血を流し、邪気を放つ付喪神の姿であった。





 女子トイレの三角コーンが振り払われ音が聞こえてきてから暫くたったB組。

一番近いB組は突然の事に恐怖することとなる。

 

「ウギャアアアアアアアア!!」

「ひ!?」


 扉の近くに居た生徒が乱暴に扉を開けて入ってきた男に驚き硬直してしまった。


「$%#$“%”“!&$」

「イヤー! 痛い、痛い!」


 この状況に教員がすぐに反応を示し、襲いかかってきた男に向かい結界魔法を行使した。

 しかし、今度は前の扉から違う男が現れ、教員に襲いかかったのだ。


「こ、の! うぐ、ぼへ、あがっ!」


 あっという間に教員は伸され、結界魔法で束縛していた最初の1人が解き放たれてしまった。

 教員が伸された事に生徒たちは慌てふためいた。

一部、アーノルドとその取り巻きは攻撃魔法の準備を始めていた。


「暴徒を鎮圧しろ! 我の威を示せ、サンダーボルト」

「アーノルドさん任してください! 我の威を示せ、ウインドバスター」


 アーノルドとその取り巻きが攻撃魔法を行使し、襲いかかってきた男2人に魔法が命中する。

 だが、攻撃魔法を身に受けてもそのまま迫ってくる。


「殺すつもりで撃ち込め! 我の威を示せ、エレクトロン=リコネクト、我の威を示せ、サンダーロード!」

「我の威を示せ、アブソリュートゼロ!」


 立て続けに確実に致命傷になる攻撃魔法を2人の男に浴びせていく。

 魔法の影響で教室内の床が削れ、埃が舞っている。


「やったか!?」


 そこには体を抉られながらも立ち上がり、こちらに迫ってくる2人の男が目に入った。

 

「うっ……おええ」

「う、嘘だろ?」

「狼狽えるな! 粉微塵にしてしまえ。我の威を示せ、エクスプロージョン=リコネクト 我の威を示せ、マナスーパーノヴァ」


 後ろから入ってきた男に魔法が炸裂し、一瞬にして血煙に変わった。

 周囲には爆発の際に吹き飛んだ肉が広がっている。

 そして取り巻きが教員に襲いかかった男を消し飛ばした。


「今度こそやったか」

「アーノルド、本当に殺してよかったのかよ」

「何を言っている。俺がルールだ」


 アーノルドが後片付けの指示をしていると2人の女子学生が蹲った。

 そしてそれを見たクラスメイトが声をかけた瞬間、唸り声と共に周りの生徒に襲いかかり始めたのだった。








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