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天使と悪魔の片翼の輪舞曲~One wing of them~  作者: 白築ノエル
1出会い
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4お互いの話(エルシア)





 森で傷を癒やすこと5日が過ぎた。

 エルシアの傷は次第に回復していき、歩く程度は出来るようになっていたのである。


「ファルトー! 歩ける程度まで回復したよー」

「おう。その調子で傷癒やしていけよ」

「うん!」

「そう言えば……エルシアはどんな感じの家庭で育ったんだ?」


 ファルトが不意にエルシアの育った環境に興味を示した。


「私の家庭? いいよ、教えてあげるね。まずはお父さんとお母さんが会ったときのお話かな?」


 エルシアが昔の記憶を頼りに話し始めた。





「私と付き合ってください!」

「それは……禁忌だぞ? わかっているのか?」

「分かっています! バレなければ問題ないのです」

「あのなぁ」


 カリエラ・エル・シフォーニが初めて人に告白した瞬間である。

 その後もカリエラの告白は続き、何度目かの告白の末エルシアの父親であるアドルフ・アンダーソンを射止める事ができたのだ。


 天界で人間という生物はとても目立つ。

 天使は基本的に翼が生えているため気にはならないが、人間には翼など無い。

 周りからしてみれば無いほうが異常に思える。


 ましてやカリエラの様な一般天使の家に出入りするとなると余計に目立つのだ。

 そこでアドルフは天界の文化を知りたいと天界騎士団ドリアドに申請を出しカリエラの家に住まう許可を得たのだ。

 これで形式上出入りすることは問題なくなった。


「おーい、カリエラ。扉を開けてくれ。手が塞がってるんだ」


 両手に買い出しに行った食料品を持ちカリエラの家に叫ぶアドルフ。

 中からは、はーいと声が聞こえパタパタと走ってくる音が聞こえる。


「アドルフおかえりなさい。大変だったでしょ? 一緒に休みましょ」

「そうだな。ゆっくりするか」


 食料品をテーブルの上に置くと、カリエラがテキパキと仕舞い込んでいく。

 アドルフは椅子に腰掛け腰につけていた剣を壁に立て掛けた。


「ふぅ。一応監視は付いてるみたいだな。ドリアドも馬鹿じゃないという訳だ」

「ごめんね、私のわがままで」

「大丈夫、カリエラは悪くないさ」


 食料品を仕舞終えたカリエラが紅茶が入ったティーカップを2つ持ってキッチンからリビングへと歩いてくる。

 テーブルにティーカップを置くと、2人で紅茶を飲み始めた。


「明日どこ行こっか?」

「そうだな、天界の観光スポットってところか。天界騎士団の方でも訓練があるから夜ぐらいになるが大丈夫か?」

「大丈夫よ。そうなるとお泊りだね! 用意しなくちゃ!」


 言い終わるやいなやすぐに自室に向かってパタパタと走っていく。

 アドルフはティーカップを手に苦笑いをしていた。


 翌朝、天界騎士団本部に行くために準備をしているとカリエラがやってきた。


「アドルフ、お昼ご飯ね! 今日はサンドイッチだよ」

「お、ありがたいな。今日も美味しく食べさせてもらうよ。それじゃ行ってくる」

「行ってらっしゃい、アドルフ」


 家を出ると城に向かい歩いていく。

 途中天界騎士団所属同期の天使がアドルフに声をかけてきた。


「よう! アドルフ。新婚生活はどうだぁ?」

「うるさい。新婚ではない、文化交流だ!」







「なるほど。エルシアの性格はオフクロ譲りか」

「? なんのこと?」

「いや、なんでもない」


 エルシアには自覚がないようだ。

 ファルトは頭を掻きむしりながら、話の続きをするように促した。


「続きね。えっと、あれはお母さんが私を妊娠した時が大変だったみたい」

「ほう。そりゃあ人間がいる家でいきなり天使が妊娠などしたら――」

「コウノトリさんをどこで迎えるかすっごく悩んだみたい!」


 ファルトはずっこけた。

 エルシアは家で何と聞かされているのか。

 仮にも16歳だ、性教育があっても良いのではないかと思う年頃だ。


(まぁ、純粋無垢な所も可愛いけどな!)

「んん? どうしたの?」

「なんでもないぞ。続きを話してくれ」

「じゃあ、私とお母さんとお父さんのお話!」






「エルシアの10歳の誕生日だぞー。今日はお母さんの手作りケーキだ!」

「わーい! お母さんのケーキ大好き!」

「ふふふ、嬉しいわ~。今回はイチゴ多めのイチゴ沢山ケーキよ!」


 カリエラはケーキが乗った皿を運んでくる。

 それを三等分、正確にはエルシアの分を大きく切ると配膳していく。

 目をキラキラしながら片手にフォークを持ち、食べる瞬間を待っていた。


「さぁ! エルシア、食べていいよ! 誕生日おめでとう!」

「もぐ! もぐもぐもぐ!」

「こら、もっと味わって食べろ。せっかくお母さんが作ってくれたケーキだぞ?」

「んっ! 味わってるよ! いつもより美味しいね!」

「お母さんうれしい!」


 3人で食卓を囲み、誕生日の日はカリエラがケーキを作り祝う。

 これがシフォーニ家の日常だ。

 唯一違うところがあるとすれば、エルシアは学校に行っていないことだけ。

 カリエラが家事の合間で教え込んでいる。


「ふわぁ~美味しかったぁ」

「良かったなエルシア。ほら、お母さんに言うことがあるだろ?」

「お母さんありがと!」

「お母さんうれしい! 次も美味しいケーキ作っちゃうんだからね!」

「やった! お母さん大好き!」


 そんな2人をニコニコしながら見つめているアドルフ。

 するとエルシアがアドルフの方へ向き。


「お父さんも大好きだよ!」

「そうか! エルシアはきっと将来偉人になるぞ!」

「いじんってなーに?」

「とってもすごい人の事だぞ。例えばそうだな、家から見える城の王様みたいな人だ」

「なれるかなぁ~?」


 その後もエルシアの誕生日にはケーキが出され、何もない日は一日中家の中で勉強をしていた。

 エルシア本人も外に出てはいけないことを理解しているためカリエラの心配も軽減されている。

 その他に家にも魔法をかけてある。

 エルシアが赤ん坊の時の泣き声を消すため防音の生活魔法、万が一窓から覗かれた時の対策に窓ガラス全てにコーティングの生活魔法。

 あまりガチガチに掛けすぎても不審がられるため程々にかけてあるのだ。


 そしてエルシアが16歳の誕生日。


「エルシア、誕生日おめでとう!」

「やっと16歳だな。おめでとう」

「ありがとう! お母さん、お父さん!」

「さぁ、ケーキケーキ! 今持ってくるからね!」


 カリエラがキッチンに戻っている間にアドルフがエルシアに話しかける。


「これからお父さん仕事の方で忙しくなるからお母さんの事手伝ってやるんだぞ?」

「うん! お勉強早く終わらせて家事とか手伝ってあげる!」

「偉いぞ」


 そこにケーキを持ってカリエラが戻ってきた。

 毎年恒例のケーキを三等分にする。

 もちろんエルシアが一番大きい。


「今年はチキンもあるの! アドルフも食べるでしょ?」

「ああ、貰うよ」

「買って来たかいが有った!」


 3人が椅子に座ると食事が始まったのだった。


 翌朝エルシアが目を覚ますと、リビングから話し声がわずかに聞こえてきた。


「最近……団……ぎまわ……。……シア……ない」

「……わ。アドルフ……けて――」

「お母さん? お父さん? 何話してるの?」

「エ、エルシアおはよう」

「あら? 今日は早いのね! 早起きできていい子いい子!」





「この後天界騎士団に家が襲われて……お父さんが戦ってる間にお母さんと私を逃してくれたの」

「そうか。エルシアは幸せな家庭で育ったんだな。それにしても天界でも魔界でも俺たち見たいのは迫害されるのか」


 しばらくの沈黙の後ファルトが口を開いた。


「エルシアばかり話させたな。次は俺の話でもしようか」

「ファルトの? 聞きたいな」

「言っておくが、俺はエルシアみたいな幸せな家庭じゃないぞ? ちょっと過激な家庭だ」


 するとファルトは話し始めたのだった。






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