32ちょっとえっちなアリスとそれをみるファルト
学園生活2日目。
3人は朝食を食べ登校準備をしていた。
「ではファルトさん。着替えるので出ていってください」
「わかった」
「覗いちゃ駄目だよ!」
「覗かねーよ!」
扉がバタンと閉まり、扉に鍵をかけた。
「これで入ってこれませんね」
「だねー」
「では着替えましょうか」
一方ファルトは自室に戻り1人で着替えていた。
隣からはキャッキャと騒いでいる声が聞こえてくる。
「静かに着替えられないのか……ん? ベルトが無いぞ? 昨日まとめて掛けておいたんだけどな」
ベッドの下や間違えてエルシアのクローゼットに入っていないか確認をする。
しかし、どこにもベルトが無い。
「おかしいな。どこに行って――ん?」
クローゼットの中に一筋の光が漏れていた。
そこを覗き込むと、なんとアリスの部屋が覗けたのである。
しかもそこには自分のベルトが合ったのだ。
「あ、彼奴等俺のベルト持ってきやがったな!」
すぐに取り返しに行こうとした時、つい魔が差した。
(まぁ……もうちょっと覗いててもいいか)
「エルシアさん、少し目を閉じてくれますか?」
「え? うん」
「次に両手を前に出してください」
「こう?」
「そうです」
エルシアの手首にベルトを巻いていく。
巻き終わった途端、足払いを行い体制が崩れたエルシアを支える。
「わわ! アリスちゃん!?」
「しっ。 小声で話さないと隣に聞こえちゃいますよ。ふぅ~」
「ひゃん!? 耳は弱いのにぃ」
「まだ時間がありますので少し愛でてあげますよ」
「え! ちょっとまって!」
ファルトはいきなり始まったアリスの愛の空間に目が釘付けになる。
男の性には逆らえないものである。
これから何が起こるのか期待が膨らみ、思わず唾を飲む。
「ほら、エルシアさん。フォック外しますよ」
「いやぁ……あっ」
「きれいな肌ですね。でも」
アリスは脇腹の傷跡に手を滑らす。
「ここはいけませんね。ぜひ海に行くときは私が水着選んで差し上げます」
「くすぐったい……んんっ! そこはぁ!」
「ふふっ。感じてるんですか?」
「感じてなんかないもん!」
「じゃあ、耳と一緒に愛でてあげる」
小さなのぞき穴から見える光景に心臓が次第に高鳴る。
徐々にエスカレートしていくアリスの手付きに目が釘付けになる。
ここでふっとアリスと視線が合った。
その顔は笑っていた。
(あいつ! このだけのためにベルト隠して壁に穴開けやがったな! そうとなれば止めに行かないと)
「あっ! だめ! そこはおしっこが出る場所だから汚いよ! あっあっ。お゛う゛ぅ!」
「!?」
クローゼットから出ようとした瞬間に聞こえてきたワードに思考を奪われた。
「(おいおい。おしっこが出る場所って言ったら1つしかねーだろ……)ゴクリっ」
色欲がファルトを蝕む。
父親の言葉が脳内で再生される。
「覗きは限界まで見てから去る! イエス覗き、ノータッチ!」
「イエス除き、ノータッチ……イエス覗き、ノータッチ……」
小声で同じ言葉を繰り返しながら壁にしがみつき、ファルトと再び覗き出した。
「ほら、エルシアさん、この手を縛っているのはファルトさんのベルトですよ。実質ファルトさんに縛られているのと同じではないですか? さぁ、私をファルトさんだと思ってください」
「ふ、ファルトのベルト……? んん! いやぁ……そこ、は!」
「感じやすいんですね。もう濡れてきてますよ」
「あぁ……やぁ、あっ! らめぇ……あそこがきゅんきゅんしてなにか来るぅ! あっあっあっあ! もう来ちゃう!」
「はい。おしまいです。下着変えて学校行きましょう」
寸前で止められ、なんとも言えない気持ちのエルシア。
そして覗いていたファルトも同じような気持ちになっていたのであった。
学園に登校するとあちらこちらに部活動の勧誘ポスターが張り巡らされていた。
「昨日は無かったよな?」
「そうですね。早く来て張ったんでしょうね」
「……(ほえ~変な気持ち)」
教室に移動すると教室内はどの部活に入るかで話題が持ちきりだった。
3人は鞄を置くと、アリスは早速知り合いに話しかけていた。
そしてエルシアの元にはリュドミラがやって来た。
「おはよ~えるえる~」
「おはよ~みらみら~」
「いえーい!」「いえーい!」
「部活どこにする~? 私はね~ってえるえる顔赤くない?」
「えっ? そそそ、そんな事無いよ!」
「そう~? なんか色っぽく見えるんだよね~」
(みらみら意外と鋭い!)
ちなみにお互いあだ名で呼び合っているが、友だちになってまだ2日である。
2人が話しているのを横目で見ていたファルトだが、突然机に両手を叩きつけてくるクラスメイトが居た。
「うわ、何だお前」
「俺を忘れたか!? お前の攻撃魔法で発狂させられた挙げ句そのへんの奴らにボコられた俺を!」
「……あぁ。そういえば居たな」
「ゲルトラウド・ドーレスだ! いつかお前を地べたに沈めてやるからな!」
「それじゃあ、まずアリスと戦ってこい」
「え? 無理」
ゲルトラウドが即否定した。
流石にファルトよりインパクトの有ったアリスには畏怖の念を抱いているようだ。
チャイムが鳴り、グルルト教員が教室へと入ってきた。
「やあ! 昨日は大変だったね! 俺の代わりに謝ってくれた生徒が居たみたいで俺は嬉しいぞ!」
(ぶっ殺すぞ)
「さて今日は部活動を決めてもらう! いや、決められると言ったほうがいいか」
言葉を言い換えたグルルトにクラスメイトが反応した。
「決められるってどういう意味ですか?」
「あと5分でわかるぞ! さあ、自分の希望する部活がある場合急いだほうがいいぞ? では散らばれ!」
そう言うとアリスが一足早く動き出した。
エルシアとファルトを引っ張り出すと教室をでた。
その時リュドミラとゲルトラウドが一緒にくっついて来た。
「いいですか? 絶対捕まってはいけませんよ?」
「どういう意味だ?」
「この学園伝統の部活動勧誘戦争が有りまして、学園公認で上級生が強制スカウトに来るのです」
「え~私は~天体観測部がいいです~」
「みらみら意外だねー」
「とにかく教室を離れますよ」
それと同時にチャイムが鳴り響き、教室から出たアリスたちには中央階段から聞こえてくる大勢の足音を捉えた。
「うおおおおおお! サッカー部! サッカー部に興味はあるかあああああああ!」
「バスケ部も新入生大歓迎だよ!」
「いやいや、ぜひ陸上部! 絶対陸上部!」
「女の子に興味はないかああああ!! 水泳部! 女の子の水着見放題! 水泳部はどうだああああ!!!」
学校中に響き渡る勧誘戦争の大声にアリス達以外も流石にざわめき出した。
「ひっ! 逃げなきゃ!」
「我の威を示せ、 ダブルフィジカルブースト」
4人は身体強化を掛け一斉に逃げ始めた。
しかし、エルシアは身体強化が出来ないため逃げ遅れたのである。
「まってー! 置いてかないでー! ファルトぉ!」
「すまん! エルシア!」
「裏切り者~! 我の威を示せ! プロテクション=エモート壁!」
魔法を発動しておき時間稼ぎをする。
更に置いてきぼりにされた恨みから4人に魔法をかける。
「我の威を示せ! ジェネトイトダンジョン!」
これは幻覚作用のある結界である。
掛けられた本人はそれに気が付きにくく永遠と走り回ることとなる厄介なタイプである。
出口は1つだけ存在し、術者が指定した場所につながる。
エルシアは自らも結界の中に飛び込み自分の結界の出口へと向かった。
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