28入学式が来た!
入学式当日。
エルシア、ファルト、アリスはアークホワイト学園の制服を着ていた。
アリスの入学式にはアンソニーも帰ってきて参加するようだ。
「アリス忘れ物はないか?」
「大丈夫です。それより……」
「制服ー! 鞄! 靴! 学園~!」
「エルシア落ち着いて。それでは周りから笑われてしまうぞ」
「だって、学園行くの初めてだもん!」
一向に落ち着きがないエルシアをアリスが落ち着かせにかかる。
笑顔でエルシアに素早く近づくと、エルシアの耳元で囁き甘噛をした。
「エルシアさん落ち着いて? はむ……」
「ひゃん!? 耳は弱いのぉ」
へなへなと座り込むエルシア。
ファルトとアンソニーは微妙な目で見ていたのだった。
「お待たせしました! お化粧に時間かかちゃって」
「ルルも準備できたし学園に行こうか」
「私達はどうしていればよろしいでしょうか!」
「カレンとアレスは家で待っててくれないかな? せっかくの入学式に護衛は無粋だろ」
「わかりました」
「旦那が言うなら俺は銃の整備でもしてるぜー」
5人は歩いていくことにした。
何せアリスが車嫌いで車に乗ろうとしないのである。
学園近くの大通りでは大勢のアークホワイト学園制服を着た生徒がいた。
親と来ているのは入学式に出る入学生だろう。
「結構いるんだな」
「アークホワイト学園は一流で有名なのですよ」
「へー! そうなんだ」
「だからあんなに難しかったのか……」
道を歩いていると制服を仕立てに行った時に会った占い師が居た。
エルシアは気が付き声をかける。
「占い師の人! 今日は占いやってないの?」
「ひっひっひ。今日は休みだよ。でも、特別に占ってあげよう」
「わくわく!」
「おぉ……厄介事が強まっているねぇ。もうすぐなにかがあるんじゃないか?」
「えー。私達厄介事になるようなことしてないんだけどなぁ」
「そういうことだ。気をつけるんだね。ひっひっひ」
そう言うと占い師は去っていった。
アンソニーやルルに今の人はだれかと聞かれたエルシアは"すごい占い師さんだよ!”と答えていた。
そしてアークホワイト学園の正門前まで来ると、メガホンを持った生徒が新入学生を誘導していた。
「入学生の皆さんは正門入って右側の体育館に進んでください!」
「右か。あのでかい建物か」
「そうですね。行きましょうか」
5人が進んでいくと体育館前に待機列ができていた。
そこに並ぶと徐々に前に進んでいく。
先頭まで来ると受付があり名簿を持った生徒が立っている。
「お名前は?」
「アリス・シルヒハッセです」
「エルシア・エル・シフォーニだよ!」
「ファルト・ニールだ」
「確認しますので少々お待ち下さい…………はい。確認できました。こちらをどうぞ」
手渡されたのはクリップに造花が着けられているアクセサリーだった。
話によると新入生の証らしい。
造花を胸ポケットに着ける。
「親御さんは左の入り口からお入りください。新入生は右の入り口からよろしくおねがいします」
「それじゃ、3人共また後で」
「見てるわよ~」
アンソニーとルルは左の入口に入っていった。
少し速歩だったのはいい席を取るためだろう。
「たくさん新入生がいるね!」
「これでもエリートが多いんですよ」
「エリート……ねぇ」
「とりあえず空いている椅子に座りましょうか」
3人は偶然空いていた椅子に腰掛けると始まるまで暫し話をしていた。
スピーカーから音がなりマイクを持った教員が話し始める。
「これから入学式が始まります。ご両親の皆様椅子に座って待つようにしてください。新入生はそのまま椅子に座ってください」
体育館が徐々に静寂に包まれていく。
再びスピーカーから声が発せられた。
「これから入学式を始めます。オズウエル学園長からの挨拶です」
「新入学生の皆さんはじめまして。私の名前はオズウエル・フェルデンです。我が校は代々国や地域に献上すべく生徒を輩出してきました。そもそもの成り立ちは――」
淡々と語られていく長いエピソード。
この場に集った新入学生は察した。
(これ、長いやつだ)
「で、あるからにして国や企業ともパイプが太く、優秀な冒険者として名を馳せる者も居ます。なので……ああ! 新入生の皆さん私の悪い癖で長話してしまったな。一言でまとめると……我が校は凄い」
「……以上でオズウエル学園長の挨拶を終わりにします。次に生徒会会長からの挨拶です」
オズウエルと交代するように現れた生徒会長。
マイク越しに聞こえる息を吸う音。
「ッスー! 新入生の諸君! ようこそアークホワイト学園へ!」
マイクがハウリングを起こし、体育館に甲高い音が響き渡った。
一部の新入生は居眠りをしていたが今のでビクっと体が飛び跳ねた。
「うるさい~!」
「エルシアさん、わかってても言ってはいけませんよ」
「そうだぞ。声だけ大きくて残念な人も居るんだからな」
そんな話をヒソヒソと話している間にもマイクがハウリングを起こす程の大声で話が続いていた。
あまりのうるささにスピーカー近くの新入生は耳を両手で塞いでいる。
「我が生徒会は! 優秀な人材を募集している! 新入生の諸君でも入れる可能性があるぞ!」
煩すぎて教員が途中で割り込み生徒会会長の話を強制的に終わらせたのである。
本人はまだ話し足りないと言っていたが3人がかりで抑え込み退場させたのであった。
「変な人だったね」
「あぁ」
「でも生徒会長です。きっと頭はあれでもお強いのでしょう」
そんな世にも変わった入学式が終わり体育館の外へ出る。
アンソニーとルルに合流し学園中央にある噴水の前でエルシア、ファルト、アリスの3人で記念撮影をした。
「では私とルルは先に帰るよ。気をつけて帰ってきなさい」
「わかりました」
「新入生は校舎ロビーにてクラス分けを見て、各クラスに移動してください!」
「それじゃ」
2人と分かれると3人で校舎ロビーに移動した。
そこには大きな紙にズラズラと名前が書かれていた。
自分の名前を探して居ると、ファルトが先に見つけた。
「お、3人共同じクラスだ。1年A組だそうだ」
「3人一緒!」
「それじゃ移動――」
「おいどけ!」
「きゃ!」
エルシアが腕で吹き飛ばされた。
ファルトは咄嗟にエルシアを支え、相手を睨みつけた。
「何かと思えばヒトモドキじゃないか。人間様の邪魔をするなよ。おい、そっちのヒトモドキ! 何だその目は!」
「お前こそなんだ! このデブ野郎!」
「なんだと! 俺を誰だと思っている! 国の8割を占める商会のユード商会のアーノルドだぞ!」
「そんなものは知らん!」
ファルトとアーノルドが睨み合っている中アリスは記憶をたどっていた。
「あら、そういえばアーノルドさんでしたね。この間の社交界ではどうも」
「ん? 貴様は……シルヒハッセのアリスか!」
「改めて聞きますが……いえ、聞くまでも有りませんか。片翼の保護活動に参加いただけない迫害派のアーノルド・ユードさん。ここで事を起こすのであれば私の蹴りが貴方の顔面を捉えることになりますが」
「……チッ!」
アーノルドは舌打ちをするとクラス分けの紙から自分の名前を探し当てると周りに当たりながらクラスへと向かっていった。
エルシアはファルトに捕まりながら起き上がると、アリスに礼を言う。
「アリスちゃんありがと……」
「いえいえ、ファルトさんに言ってあげてくださいな」
「ファルトもありがと」
「おう」
3人は気を取り直してA組に向かって校舎内に入っていくのであった。
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