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天使と悪魔の片翼の輪舞曲~One wing of them~  作者: 白築ノエル
2人間の街と学園
27/113

27入学準備





 表彰式から2ヶ月。

 エルシアとファルトはくま目になりながら学園からの合否を待っていた。


「この日のために……徹夜漬けで勉強してきたんだ……絶対受かってる……」

「眠い……お父さんとお母さんが手を振ってるぅ……」

「ファルトさん、エルシアさん。遂に今日合否が決まりますね。合格してると嬉しいです」


 9時、10時、11時、12時となりチャイムが鳴った。

 アリスが外に出ると2枚の書類を抱えていた。

 リビングに急ぐと、今にも寝落ちしそうな2人に書類を渡す。


「これ学園からの書類です。早く開けてみてください!」

「合格合格合格……」

「眠……」


2人は封を開けると書類を取り出した。


「……合格……合格だぜええええ!」

「いやったああああ! おやすみなさーい!」


 2人はそれだけを確認するとテーブルに突っ伏した。

 それを見ていたアリスは2人にそっとブランケットを掛けるのであった。


「流石にここ2ヶ月間ほぼ徹夜で勉強は堪えましたね。でも私に御学友が……!」

「嬉しそうねアリス」

「はい! お母さん。今までは他の人達と距離を置かれていましたが、これからは楽しく過ごせそうです!」

「ふぁい! さんえっくすれしゅ……むにゃ」

「ふふ、可愛いですね」

「……われのいをしめせ、まな・えくすぷろーじょ」

「――それはだめですよ! ファルトさん!」


 2人は夕方まで寝続け夕飯の匂いに惹かれて目を覚ました。

 起きた当初は頭が働かず、ここはどこ私は誰状態だったが次第に覚醒する。


「ふぁ~る~とぉ~!」

「ふがっ!」


 エルシアが眠気眼でファルトにダイブしたのだ。

 その際にたまたま位置が悪かったのか、はたまた幸運なのかはわからないがファルトの頭の位置にエルシアの胸が覆いかぶさってきた。

 一瞬何が起きたのかわからずジタバタとしていたが、顔に柔らかい感触が伝わり、思わず手が伸びた。


(何だこの感覚。それに重い……。この手触りは……)

「んんっ!」

(柔らかいな……もっと揉んでいたい)

「っ! ふぁるとぉ!」

(なんだ、うるさいな……)


 ファルトは目を開けると自分の上に乗っているエルシアと、その胸に手を伸ばしている自分の腕が目に入った。

 暫し硬直するファルト。

 次の瞬間脳がフル回転し、今の状況を分析し始めた。


「え、えええ、エルシア!? なんで俺の上に乗ってるんだ!?」

「寝惚けてファルトに倒れ込んだの。そしたらファルトが胸を揉み始めて……この

へんたいおおかみさんめ!」

「ぐほぉ!?」


 エルシアの拳が腹に突き刺さりもう一度意識を失ったのだった。

 その直後アリスが部屋に入ってきてもう一波乱があった。


 次の日の朝、珍しくアンソニーがリビングにいた。


「3人共おはよう。朝食ができてるよ」

「おはようございます、お父さん」

「おはよー!」

「ういっす」


 3人は朝飯を食べ始めるとアンソニーが話しかけてきた。


「今日はエルシアとファルトの制服を仕立てに行くといい。アリスはもう済ませてあるが、アリス案内を頼めるか?」

「はい、お父さん」

「お揃いの制服! 可愛いのがいいなぁ!」

「お揃いですよ。後下着なんかも揃えましょう。それもお揃いにしましょうか?」

「え! 一緒にしよう!」

「ぼそ(これで夜も大丈夫ですね)」

「え? どういう?」


 アリスは何でもないですよと言うと朝飯を食べすすめる。


 朝飯を食べ終えた3人は玄関ホールに集まっていた。

 今回はアンソニーが2人分の制服費用とその他の物を買うための費用も出してくれた。

 

「それじゃ、行きましょうか」

「おっけー!」

「うっす」


 屋敷から出ると学園指定の仕立て屋に向かった。

 仕立て屋は大通りの学園側に有り、アリスに学園への行き方を教わりながら行く。

 

 学園の通りには制服が展示されたショーウィンドウがあり、その店に入る。


「いらっしゃいませー!」

「2人分のアークホワイト学園制服を仕立ててください」

「わかりました。どうぞこちらへ」


エルシアとファルトは別々の個室に入ると女性の店員が2人の体を採寸する。

数十秒で採寸を終わらせると店員は個室から出ていった。

2人が服を着て個室から出るとアリスが店員と何か話していた。


「2人となると1時間程掛かります。当店でお待ちになられますか?」

「そうですね……また1時間後に来店します。日用雑貨なども揃えなければならないので」

「わかりました。お待ちしています」

「エルシアさん、ファルトさん、お買い物に行きましょう」


 そこからはファルトにとって最も長い時間だった。

 ファルトはさっさと私服と下着を買うとアリスとエルシアの様子を見に行くが、2人共いろいろな下着やら服やらを試していて一人店の前で待つことになった。


 30分後。やっと店から出てきたアリスとエルシア。

 もちろん荷物はファルトに渡され両手がふさがった。


「次どこ行く!」

「次は文房具を買いましょう」

「おっけー!」


 ノート数冊にボールペン、シャーペンなどの文房具をエルシアとファルトの物を購入。

 更に両手の荷物が増えていく。


「次はどこ行こっか!」

「次は――」

「次は武器屋だ! エルシアの身を守る武器がほしい。前も言っただろダガーナイフでも持っていたほうがいいって」

「そういえばそうだった!」

「では武器屋に行きましょうか」


 ギルドで活動する冒険者たちが訪れる武器屋に入店する。

 店の中は武器の種類別に区切られ、盗難防止にショーケースに入れられていた。

 ナイフの区画に進むと色々な形のナイフが売られている。


「どれにしようかなー」

「エルシアさんは小柄ですからショートソードは持てそうに有りませんね」

「だからダガーナイフなんだ。ナイフなら小さく、隠せるからな」

「暗器ですか。ならこれはどうでしょうか? ベルトがついてます。スカートの中に隠せそうです」

「なんかかっこいい! それにする!」


 そう言うと店員を呼び、ショーケースを開けてもらう。

 エルシアの太もものサイズに合わせたベルトとナイフを購入し店を出る。

 アリスが懐中時計をとりだすと既に1時間が過ぎていた。


「いけない。1時間過ぎてます。仕立て屋に戻りましょう」

「はーい」


 3人が仕立て屋に戻るとアリスの顔を見た店員が直ぐに気が付き声をかけてきた。


「お待ちしておりました。御2人専用のアークホワイト学園制服が出来上がっております。」

「ありがとうございます」

「一度着てみてください。微調整だけするのでそれほど時間はかかりません」

「はい!」

「うっす」


 2人は個室に入ると服を脱ぎ制服を着だした。

 ちなみにエルシアは先程買ったナイフを太ももにベルトで着けている。

 街中でもエルシアの装備は見えていない。


「お、おお! 背中が開いてるー! 翼が通しやすい!」


 エルシアが個室で叫んでいる。


 しばらくすると、制服を着た2人が出てきた。


「エルシアさん、ファルトさん似合ってますよ」

「本当!? ありがとー!」

「どこか制服で気になる点は有りませんか?」

「俺は大丈夫だ」

「私も大丈夫です」

「大丈夫みたいなのでお支払いします」

「はい。制服、指定靴込で20ビルです」


 アリスは会計を済ませると2人に制服を脱ぐように言った

 制服はオーダーメイドになる。

 帰り道で汚すなどあってはならない。


 普段着に着替えると制服はしっかりした箱の中に入れられ袋に入れ手渡された。


「またのご利用をお待ちしています」

「さて帰りますか」

「さんせーい!」


 帰り道を歩いていると人だかりができていた。

 エルシアはどうしても気になり覗き込んだ。


「あなたはさっき4ビル拾いましたね?」

「な、なんでわかったんだ!?」

「ひっひっひ。私にゃお見通しさね。それと右腕には注意したほうがいい」

「なんだよ。右腕がどうしたっていうんだ。俺は帰る」


そう言うと男性は歩道でない場所を渡っていった。

その時右から来た車と衝突したのだ。

幸いブレーキが踏まれており軽い打撲で済んだが、右腕を負傷していた。


「すごい! ねーねー、アリスちゃんにファルトもやってみようよ」

「どうせインチキだろ」

「あら? ファルトさんはこういうの信じなくて?」


 3人は占い師の前に行くと占い師から話しかけてきた。


「ひっひっひ、待ってましたよエルシア、ファルト、アリス。仕立て屋からの帰り道だね?」

「すごーい! あたってる!」

「荷物見ればわかるだろ……」

「ファルトは信じてないね? それでは試しにこの水晶玉に"あいうえお”といってごらん」

「なんだよ。たく。あいうえお」

「ふむ。今すぐ頭を守るんだね」

「一体何で――」

「ファルトさん! 危ない!」


アリスが咄嗟にファルトを引き押せるとファルトのいた場所に室外機が落ちてきたのだ。

よく見てみると根本が腐っており経年劣化で落ちてきたようだ。


「あ、あっぶね。頭おさえる所じゃねーぞ……」

「ひっひっひ。残りの2人も水晶玉に言ってご覧」

「あいうえお!」

「あいうえお」

「どれどれ。エルシアには厄介事に絡まれることになる。アリスはその道連れになるね。ファルトもそうだ」

「厄介事ってなんだろう?」

「さあ。わかりません」


 3人はその占いが近いうちに当たるとは思いもよらなかった。






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