25ギルド登録 ~家が特定された!?~
無事に家に帰れた2人。
アリスが居なかったらとてもくだらない奇跡で家に帰るところだった。
「お母さんただいま」
「あら、見つけるの早かったのね。2人ともどこに行ってたの!」
「あ、いや、それはだな……」
「色々あったんです!」
そんな言い訳も聞かず、1時間正座の説教が待っていた。
アリスは2人を温かい目で見守ることにし、自身はシャワーを浴びに風呂へと向かったのだった。
「…………で、わかった?」
「わぁった! 分かったから!」
「ごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさい」
「分かってくれて嬉しい! さ、少し遅いお昼にしましょう!」
ルルはパンっと手を鳴らすと、2人に立つように命じた。
しかし既にエルシアもファルトも足の感覚がない。
「? もう立っていいのよ?」
「あ、いや、もう少し待ってくれ」
そこへアリスが戻ってきた。
2人の状況を見たアリスは小悪魔的な笑顔を浮かべるとルルに話しかけた。
「お母さん私がエルシアさんとファルトさんを連れて行くからお昼の準備お願い」
「あら、そう? じゃ、先に準備してるわね」
ルルが先にキッチンへと向かうと、アリスはエルシアに近寄っていった。
エルシアは不思議そうにアリスが近寄ってくるのを見る。
顔が笑っていない。
エルシアは焦り始める。
「アリスちゃん! 今は待って!」
「エルシアさん。前にもこういう事ありましたよね?」
「あの時は悪気は……」
「そーれ」
アリスはエルシアを押し倒すと、両手を拘束する。
徐々に足に感覚が戻り始めジンジンとした痺れが広がっていく。
「アリスちゃん……だめぇ」
「ふふ。可愛いですねエルシアさん」
そっと耳に息を吹きかける。
ビクッとエルシアの体が反応し、痺れが襲いかかる。
更に追撃と言わんばかりか足を絡ませ余計に刺激していく。
「あっ、あっ」
「こんなのはどうかしら?」
「え、ひぅ!?」
アリスはエルシアの首筋を舐め回しながら足も動かす。
調子に乗ってきたアリスにファルトが咳払いした。
「ああ、ファルトさんは大丈夫ですよ。同じ足の痺れを味わった仲間ですから」
「そうじゃない! アリスも空気が読めないのか!?」
「あら、男の人ってこういうの好きじゃないのかしら?」
「……」
「否定しないって言うことはファルトさんも好きなのですね」
とっさに否定が出来なかったファルトは黙り込み、足の痺れと戦うことで無心になろうとしていた。
アリスは更に過激になっていき、エルシアを攻め立てる。
「あひ、お゛!」
「ふふ。次は……」
その後エルシアがどうなったのかは無心になっていたファルトと、攻めていたアリスと攻められていたエルシアしかしらない。
昼食後、ルルはニュースを見ていた。
『今日の正午のニュースです。大通りで起こった交通事故。運転手を含む8人が負傷した事故ですが、幸いにも死者はおらず軽症でした。現場に居合わした通行人によると翼が生えた人が救助をしていたと言っており負傷者が少ない原因として憲兵が調査を進めています。』
「あら、2人ったら人助けをしていたのね」
『次のニュースです。マンションから落下しかけていた子供を救出した翼の人と言う噂が立っています。これもまた憲兵が調査を始めました』
「あらあら、電話しなくちゃ!」
ルルが起こす行動でこの後エルシアとファルトがまさかの展開になるとは誰も思わなかった。
エルシアとファルトが自室にてのんびりとしているとファルトが声をかけてきた。
「エルシア……その、なんだ。お前って結構エロ――」
「この! へんたいおおかみさん!」
ファルトの顔面に枕が飛んできた。
エルシアの顔は真っ赤である。
原因はもちろんアリスだ。
(うっー! 足が痺れてただけなのに、こんなわけのわからない気持になっちゃうなんてへんたいおおかみさんだよぅ)
ベッドの上で顔を埋め足をバタバタしていた。
そっと枕を戻すとサッっと枕を持ち顔を埋めたのだった。
(これは重症だな……。エルシアにとっては初体験だからな。癖にならなきゃいいけど)
ファルトはエルシアがどうなるか考えながら昼寝をした。
エルシアといえばベッドで悶ていたがパタンと足を伸ばし動かなくなった。
1時間ほど時間が経った頃だろうか、チャイムの音がなった。
リビングでテレビを見ていたルルが対応した。
「はい、シルヒハッセです」
『連絡をもらった憲兵です。お話を伺いに来ました』
「あ、憲兵さんでしたか! 今開けますね」
パタパタと玄関ホールへと走っていく。
玄関の鍵を開けると外に出て門を開け放った。
憲兵は帽子を取り挨拶をする。
「これはシルヒハッセ家の奥さんこんにちは」
「憲兵さんもご苦労さまです。家の中にどうぞ」
「中に例の子供が?」
「はい! 今は部屋で休んでいると思います。応接間にどうぞ。すぐに呼んできますね」
ルルは2人がいる部屋に行き扉をノックする。
中からの反応はなく、中からも音がしない。
「入るわよ~……あら!」
そこにはベッドでうつ伏せで伸びているエルシアと壁に折りかかりながら寝ているファルトの姿があった。
「色々あって疲れちゃったのかしら? ほら、エルシア起きなさい。ファルトも起きて!」
「なんだぁ……飯なら食ったぞ……」
「寝惚けないの! さ! 起きて!」
ルルに無理やり起こされたファルトは少しイライラしていた。
だがファルトもそこは我慢した。
次にエルシアを起こそうとしていたルルにファルトは少しイタズラを仕掛けた。
「耳元で囁いてやるといいぜ」
「本当? エルシアお、き、て」
「ひゃうううう!」
「あら本当!」
結局我慢ができなかったファルトだった。
ルルに連れて行かれたのは初日でも使った応接間だ。
エルシアとファルトは人が会いに来る話など聞いていないがルルがニコニコしているのを見ると何故か不安になる。
「失礼する……ぜ!?」
「どうしたの? あっ!」
「待て! 我々は君たちを逮捕にしに来たわけじゃない!」
「本当だろうな?」
「本当だ」
ファルトは黙り込んだが辺りに潜んでいるわけでもないように感じ取った。
エルシアに目配せすると中に入りソファーに座る。
その動作を行っている間も目を離さずガンを飛ばしていた。
「……なぜ自分たちの居場所がよくわかったと言う顔だ」
「追っては撒いたはずだ。帰るときも人目につかずに帰った」
「君たちは派手に動いたようだね。交通事故の件、マンションの件。どれだけの人が見ていたかわかるか? 今ではニュースに取り上げられるほどだ」
「何が言いたい?」
「……君たちを……表彰したいんだよ!!」
2人は暫くの沈黙し、言葉を発した。
「は?」
「え?」
突然言われたことでポカーンっと口を開けてしまったがファルトがすぐに聞き返した。
「なんのだよ?」
「交通事故の迅速な救命活動、マンションから転落しそうになっていた子供の救助。救急がすぐに間に合わなかったあ可能性のある事件だ」
「……それだけで追いかけてきたのか?」
「とんでもない、君たちが勝手に逃げたんだよ」
「じゃ、家は?」
「テレビを見ていた奥さんから」
「……」
ファルトが無言でルルを睨む。
それを気にせず微笑みを浮かべているルルであった。
憲兵はすぐに本部へ連絡をすると、エルシアとファルトを連れ車に乗った。
ルルには憲兵本部で表彰式を行うと告げ車を走らせた。
「そんなに表彰することかよ」
「当然のことしただけだよね?」
「いやいや、その当然としたことが咄嗟にできる人間が何人いるかわからない。人には得意分野がある。例えば交通事故の事だ。あの回復魔法は医者も絶賛していたよ。冒険者でも使える物は限られるだろう」
「えへへ、そうかなぁ?」
こうしてエルシアとファルトは憲兵本部へと表彰状を授与されることとなったのだった。
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