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天使と悪魔の片翼の輪舞曲~One wing of them~  作者: 白築ノエル
2人間の街と学園
24/113

24ギルド登録 ~帰るまでが登録~





 ギルド前。

 エルシアとファルトはやっとの思いでギルドに到着することができた。


「やっと着いたな……長かったな」

「うん……長かった……」


 中に入ると受付が3箇所に有り、その隣のスペースに国、民間と書かれたファイルが置かれており沢山の人が集まっていた。

 エルシアとファルトは受付に向かうと、やはり周りからの視線を向けられる。


「ギルド登録したいんだけど」

「はい。ギルドでの利用規約をお読みください。同意していただけたならこのハンドセンサーに触れてください」

「アンソニーさんの言ってたのと同じだね」

「ん? ギルドポイントってなんだ?」

「ギルドポイントとは依頼を受けるに当たっての目安になる物です。現在のギルドポイントと比べ難易度が低いと思われる依頼には低いギルドポイントしか付加されません」


 エルシアとファルトはなるほどと思いつつハンドセンサーに手を乗せた。

 少し魔力が吸われた感覚とともに隣りにある機械からカードが出てきた。

 それを手にした受付嬢はフラグメントの記載欄が空欄になっている事に疑問をいだき、もう一度ハンドセンサーに手を乗せるように促した。

 しかしもう一度行っても空欄になる。


「すみませんが少し聞き取りよろしいでしょうか?」

「いいぜ。来ると思ってたよ」

「まず……その翼は何でしょうか?」

「これか? 本物だぞ」

「パタパタ動くよー!」


 それを見て不思議な目をしている受付嬢。

 更に質問を続ける、


「……あなた方は人ですか……?」


 受付嬢の表情が変わり、恐ろしいものを見る表情になった。

 それに伴いギルド内の空気が張り詰めた。

 そっと冒険者が入り口に周り込む。

 それぞれいつでも攻撃できる体制に移っている。


「そう言われるとな……」

「あ! アンソニーさんに電話してください! それで解決します!」

「アンソニー……アンソニー・シルヒハッセさんですか?」

「そうそう!」


 受付嬢は怪しみながらも公共生活省へ連絡をした。


「もしもし、エデルガーデンギルド受付担当の者ですが身分を照会したく、アンソニー様にお電話をお繋げできますでしょうか?」

『少々お待ち下さい。ソフィア秘書にお繋ぎします』


 電話が繋がっている間にも状況は悪くなっていく。

 他の受付嬢から連絡を受けたギルド在中の警備員までもが出てきたのだ。

 手には電気が流れるスタンロッドを持っている。


「おいおい、俺たちまだ何もしてないぜ? この歓迎は如何なものかと思うぜ」

「動くな! それ以上動けば不審者として拘束する!」


 警備員と言い合っている間に電話ではソフィアと受付嬢が話していた。


『お電話変わりました。アンソニー官僚秘書ソフィアです』

「お忙しいところ申し訳ありません。エデルガーデンギルド受付です。ただいまギルドに登録しに来た2人組についてアンソニー・シルヒハッセさんに確認していただきたい事項がありまして」

『……もしかして翼が生えた人物ですか?』

「そうです。何故おわかりに?」

『本日ギルドへ向かうようにアンソニー官僚からの指示が出ています。名前はエルシア・エル・シフォーニとファルト・ニールです。』

「はい。合っています。フラグメントが空白かつ人か不明なため現在登録保留中です」

『その方たちは片翼(ハーフ)と呼ばれる人です。フラグメントに関してはこちらでも不明です。保護者はアンソニー・シルヒハッセになっているため何も問題はありません』

「わかりました。ありがとうございました。失礼します」


 受話器を置いた受付嬢は手続きを開始した。

 アンソニーには繋がらなかったが秘書に聞けたので良しとしたのだ。


「先程は失礼しました。これよりギルド本登録を始めさせていただきます」

「お? 分かってくれたか」

「……フラグメントが空欄の為ギルドのシステムに登録出来ないため仮のフラグメントを設定します。エルシア様はコスモス、ファルト様はカオスでよろしいでしょうか?」

「いいぜ」

「おっけー!」

「登録させていただきました。こちらがギルドカードになります。再発行には王国紙幣8ビル掛かりますのでご注意ください」


 エルシアとファルトは金の事をすっかり忘れていた。

 ネルガンから預かったキャッシュカードと書類がそのままだ

 ギルドカードを2枚受け取ると後ろを向いて張り詰めた空気を何とかすることにした。


「おい、見ろよ。ギルドカードだぜ? ギルドが認めた証だ、お前ら武器を納めろよ」

「そうだよ! みんな落ち着こ? ね? 私達ちょっと変わってるけど危なくないよー!」

「ギルドが認めたならいいか」

「そうだな。ま、何かあったらギルドから分捕れそうだしな」

「……職務に戻る」


 囲んでいた警備員や冒険者もいつもどおりに戻りギルド内はいつも通りの営業に戻ったのだった。

 元に戻ったことを確認した2人は受付に再度振り返り、ルルから預かった依頼書を提出した。


「これ受けたいんだけど」

「拝見いたします。依頼主はアンソニー・シルヒハッセ様。内容は娘の警護、でよろしいですね」

「おう」

「契約期間は学園を卒業するまでの3年間で契約させていただきます」


 そう言うと依頼書をなにかの機械に入れると白黒のブラウン管モニターに依頼が登録された。

 エルシアはそれを不思議そうな目で見ている。


「どうしました?」

「あ! ちょっとそのきかい?が気になって」

「不思議な人? ですね。これは機械式魔道具、通称コンピューターですよ」

「!! ちょっとほしい! カタカタターンってやりたい!」

「お高いですよ。一番安いタイプでも10万ビルしますよ」


 エルシアには10万ビルがどのくらい高いのか分かっていなかった。

 

 その後ギルドを出ると、今度は目印を逆に辿って家に帰る。

 はずだった。


 エルシアとファルトは今なぜか憲兵に追われていたのである。


「そこの2人待ちなさい!」

「俺たち何もしてないだろうが!」

「もう私へろへろ~」

「おい! 我の威を示せ、 サードフィジカルブースト」


エルシアを抱きかかえると、そのまま逃げ始める。

狭い路地裏を抜けたり人が多い大通りを駆け抜け、歩行者信号では跳躍をし振り切ろうとした。


「ま、待ちなさい! はぁはぁ。待ちなさーい!」

「待てと言われて、待つやつが、どこに、いると思うんだ!」


 そのまま再び路地裏に入ると、途中で曲がり憲兵を撒いたのだった。

 だが、追いかけ回されて現在地が何処かわからなくなってしまった。


「これどうするんだ……」

「どうしようね……」


 その時エルシアの腹が鳴った。


「お腹へったぁ~。喉乾いた~。ファルト飲み物~」

「金ねーよ! 少しは我慢しろ」


 そう言った途端にファルトの腹が鳴った。

 なんとも言えない雰囲気が流れたが、ファルトはなかったことにした。

 

 とりあえず憲兵に見つからないように移動を開始する。

 目印を探すため、街の案内板を表通りで探す。

 エルシアは監視係でファルトは案内板を積極的に探す担当だ。


「うーん。よく見えない~」

「しっかり憲兵こないか周り見てろよ」


 エルシアはピョンピョンしながら辺りを見ているがはたから見れば余計に目立つ行為だった。

 そんなこととは知らず相変わらず辺りを見渡して見ると遠くからこちらに憲兵が2人走ってくるのが視界に入った。


「憲兵発見! 私達に気がついてるよ!」

「なん――」


 ファルトは"なんだと”と言いつつ振り返ろうとした時、バレた原因がわかった。

 まだエルシアは跳ねているのだ。


「あほか! そんなに跳ねてたら見つかるだろ!」

「だって見えないんだもん!」

「ああ、もう! 逃げるぞ!」


 2人は適当に路地に入ると色々と道を変えながら逃げ回った。

 結果、人気が全くない場所まで来てしまったのだ。


「ファルトぉここどこぉ」

「知るか! こうなったらあれ(・・)使うぞ」

「えっ、あれ(・・)使うの?」

「どうせくだらない奇跡だ。寿命も100も持ってかれないだろ」


 ファルトが魔力を操作しだすとエルシアも釣られて魔力を操作し始めた。

 そして発動寸前になった時ストンっと誰かが屋根から飛び降りてきたのだ。

 エルシアはそれにびっくりし、魔力が乱れ発動はしなかった。


「見つけました。こんな場所で何をやっているんです?」

「アリスか。驚かせるなよ」

「びびび、びっくりした!」

「2人の帰りが遅いのでお母さんから頼まれて探しに来ました。ちょっと急いでたので屋根の上を走ってきちゃったのは内緒ですよ」


 そう言うとアリスは"帰りましょう”と言い、ファルトにエルシアを抱えさせて屋根の上を走りながら自宅に戻ったのであった。





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