18エデルガーデンについた
汽車が駅に到着すると憲兵がなだれ込んできた。
「おおっと、私達は乗客だ。私はアンソニー・シルヒハッセと言う」
そう言うと憲兵にカードを見せた。
カードを見た憲兵は敬礼をし、武装を収めた。
「アンソニー官僚ご無事でしたか。前の街から汽車が暴走していると聞いて駆けつけました」
「すぐに分かることだけど、ハイジャックされていたんだよ。で、この子達が制圧してくれたのさ。エルシア、犯人を憲兵に差し出して」
「はい。憲兵さん、結界魔法で縛ってあるので今のうちに拘束してください」
「あ、ああ。分かった」
手錠で手首を拘束するのを確認したエルシアは結界魔法を解いた。
黒服の男は逃げる素振りを見せず、それよりも安堵しているようだった。
「協力感謝する。アンソニー官僚、汽車は明日まで動かせません」
「ではまた明日駅に来ます。それでは失礼」
アンソニーは4人を連れてホテルへと向かった。
部屋は3室取り、エルシアとファルト用、アンソニー本人用、カレンとアレス用だ。
カレンとアレスは交互にアンソニーの部屋前で警備に入るため分けなかった。
「ふう。今日は色々あったな」
「そうだねー。捕まったりハイジャックにあったり大変だったね」
「流石に疲れたわ。ちょいとトイレ行ってくる」
「いってらっしゃ~い!」
ファルトはトイレに入っていった。
エルシアは部屋の扉を開けたり閉めたりしている
「お? お風呂―! 早速はいろ!」
服を脱ぎ下着を脱ぐと風呂の扉を開た。
浴槽はないがシャワーが設置されている。
置いてあったシャンプーで髪の毛を洗い、ボディーソープで体を洗う。
そんな時風呂の扉が開いた。
★
「ふぅ。スッキリしたな。おーい、エルシアー?」
ファルトは部屋の中を見渡すがエルシアの姿がない。
ここに来てファルトも扉を開けたり閉めたりし始めた。
「うーん。ここか?」
扉を開けるとそこには全裸で体に泡が付いているエルシアの姿が。
ファルトはポカーンっとしてしまったがすぐに扉を閉めようとした。
「ファールト」
「な、なんだ?」
「ふふふ。ファ、ル、ト、の、へんたいおおかみさん!」
「ぶべぇ!」
エルシアのビンタが炸裂しファルトが風呂から追い出されたのだった。
「……痛てぇ」
★
アンソニーは自室で電話を掛けていた。
掛けている先は自宅だ。
『はい。シルヒハッセです。ご用件をどうぞ』
「私だ。アンソニーだ」
『アンソニー官僚でしたか。政務のほどはどうでしょうか?』
「まぁまぁ色々あったよ。収穫も有ったしね。娘は寝てしまっただろうか?」
『はい。先程就寝されました。奥様ならお起きになっていますが変わりましょうか?』
「たのむよ」
しばらくすると違う女性の声が聞こえてきた。
『もしもし、アンソニー?』
「やあ、ルル。遅い時間にごめんね」
『いいのよ。お仕事は大丈夫? 大変な目にあってない?』
「ははは、心配性だな。ちょっと汽車でハイジャックに合っただけだよ」
『え……ハイジャック?』
電話越しからも伝わる心配そうな雰囲気。
アンソニーは誤解されないように言葉を付け足した。
「大丈夫だよ。彼と彼女が制圧してくれたからさ」
『アレスさんとカレンさんなら大丈夫そうね』
「実はアレスとカレンじゃないんだ。実は政務先で片翼の2人を見つけてね。私が保護したんだよ。それで彼らに任せたら主犯格ではないものの実行犯の1人を捕まえて無事に収めてくれたんだよ」
『まぁ! アンソニーついに見つけたのね! でも無理をさせちゃだめよ』
「分かってるさ。まぁ……家に帰ってからが大変なんだけどね」
『お祖父様ですか……かなりの反発が予想されますね』
実はシルヒハッセの家系は代々片翼を迫害していた一族である。
そこに予想を裏切り、保護をしようとしているアンソニーが生まれたため大騒ぎが起こったことがあるのだ。
そして生まれた娘もアンソニーとルルの影響を受けて片翼保護派閥を同年代に広めている。
これにはアンソニーの父親も嘆いていた。
「明日には家に帰るからもう少し待っててくださいね。保護した2人も連れて変えるから楽しみにしておいてくれ」
『はい。気をつけてね? じゃ、明日待ってるわ。おやすみなさい、アンソニー』
「ああ。おやすみ、ルル」
それだけ言うと受話器を置いた。
そして風呂に入り、床へと入っていくのだった。
★
翌朝、ホテルのロビーに5人が集まっていた。
各自忘れ物が無いかの確認中である。
「忘れ物は有りませんね? ではチェックアウトするよ」
「シルヒハッセの旦那、タバコ買ってきやすわ」
「ああ、ホテルの前で待ってるよ」
そう言うとアレスはふらっとホテルを出ていった。
アレスの言葉を聞いていたエルシアはふっと疑問に思ったことをファルトに聞いた。
「ねー! タバコって何?」
「タバコってのは火をつけて煙を吸う物だ」
「女の子は吸わないものよ。臭いしね」
「なるほど! カレンさんもありがと!」
話をしている間にチェックアウトを済ましたのかアンソニーが戻ってきた。
そのままホテルを出てアレスを待つ。
数分でアレスがタバコを咥えて戻ってきた。
「ふー。戻りやした」
「戻りましたね。では駅に行こうか」
「了解です」
「すんすん……アレスさん、それ臭いー」
「そのうち慣れるもんだよ、エルシアのお嬢さん」
ホテルは駅の近所に建っているため数分でたどり着いた。
壊れた汽車は新品に交換されており、問題はなさそうだ。
「アンソニー官僚、ご到着しましたか。汽車の準備は万端です」
「おつかれさま。ハイジャックの検分は任せたよ」
「はっ、分かっております。任せてください」
そう言うとアンソニー達は汽車に乗り込んだ。
汽笛と供に汽車が動き出す。
「これでエデルガーデンへ行けますね。昼には屋敷に着くと思うよ」
「アンソニーさんの家かー! 娘さんってどんな人なのかなー?」
「私の娘は可愛いぞ。ただ、友達が居ないのが悩みみたいだが……」
「なら私とファルトが友達になります!」
「ぜひ仲良くしてほしい!」
2人で話が盛り上がっている中、外野に居た男子2人が話始めた。
「俺の意見はなにもないんだな」
「まぁ、女はみんなそういうもんだ。諦めろや」
悲しい男たちの会話だった。
汽車に揺られること2時間。
うとうとしていたエルシアはガタンっと汽車が揺れる振動で覚醒した。
「ん~。ふわぁ。今どこ~」
「もう街が見えてきましたよ」
「え! 本当!?」
汽車の窓を開けると外を覗いた。
そこには今までの街とは比べ物にならないほどの色鮮やかな街並みが大きく広がっている。
エルシアは目をキラキラさせながらアンソニーに話しかける。
「すごい大きな街ですね! アンソニーさんの家はどこらへん何ですか?」
「元気がいいね。私の屋敷は流石にこの位置からじゃ検討が付かないよ」
「でも大きいんだろうな~。私の家より大きそう」
「天界の建築物は知らないけど、多分大きいと思うよ」
「本当!? ファルト! ファルトってば! 街につくよ!」
「分かった分かった! 大声で叫ぶのはやめてくれ」
汽車が減速を始め駅のホームへと入っていく。
汽車が止まると中から乗客が降りてきた。
エルシア達も汽車から降りると、駅から出た。
そこには道路を行き交う車と歩道を歩く人々が多く居た。
「はぇー。何かすごい! 何かわからないけど!」
「発展してるんだな、魔界とは全然違うな」
「どうだい? 私の街、エデルガーデンは? そしてようこそ! エデルガーデンへ!」
アンソニーに向か入れられ、エルシアとファルトはやっとのこと安全な地へとたどり着いたのであった。
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