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天使と悪魔の片翼の輪舞曲~One wing of them~  作者: 白築ノエル
2人間の街と学園
17/113

17VSゴーレム・エクス・マキナ





 一駅を超えたあたりで最後の汽車に到達した。

 そこには10人を超える黒服達がいた。


「おとなしく降参するならこれ以上は殺らないぞ」

「そうだよ! 痛くなくて済むよ!」

「誰が降参なんてするかよ! むしろこれから殺られるのはお前たちだ!」

「リーダー、これを!」

「恐れよ! これがお前達を殺す機械化魔道具! その名もゴーレム・エクス・マキナ!」


 そう言うと役30センチほどの球体を掲げた。

 中の歯車が動き出し、魔力が溢れ出してくるのがわかった。

 ガチャガチャと音を立てながら歯車が骨格を作っていく。

 外殻に汽車の木材を取り込む。

 だが、途中で止まった。


「ん? どうした?」

「マリョク フソク ホキュウ カイシ」

「お、おい! 俺を掴んでどうする……うわあああ!?」


 ゴーレム・エクス・マキナの口が開き、中にある歯車に黒服が飲み込まれていく。

 肉が擦り切れ、骨が砕ける音が汽車に響き渡る。

 最初は黒服も悲鳴を上げていたが、次第に声が小さくなり事切れた。

 これにはエルシアもファルトも黒服達すら唖然としていた。

 ゴーレム・エクス・マキナが再び喋りだす。


「マリョク フソク ホキュウ ケイゾク」

「う、うわあああ!」

「離せ! 離してくれ!」


 ゴーレム・エクス・マキナの両腕に掴まれた黒服2人の表情は恐怖に染まっていた。

 口が開き、血と肉片がこびり付いている中へ黒服を飲み込んでいく。

 黒服達が逃げ出そうとするが、前にはエルシアとファルトが居る。

 残った逃げ口は汽車の外しか無い。

 それでも飛び降りようとする黒服達。


「早く飛び降りろ!」

「は、早くいけよ! ゴーレム・エクス・マキナが暴走してるんだぞ!」

「うわああ! 離せええ!」

「ホキュウ ケイゾク フアンテイ パーツ トウゴウ ヘンケイ」


 この汽車すべての出入り口を塞いでしまった。

 動揺している間にゴーレム・エクス・マキナはまた1人食らっていく。


「そ、そんな!」

「嫌だ! な、なあ! あんたら! 何でもするから助けてくれ!」


 黒服の1人は藁にもすがる勢いで助けを求めてきた。


「だってさ。エルシアどうするんだ?」

「助けるよ! 下がってて! 行くよファルト! 我の威を示せ、サードプロテクション!」


 ゴーレム・エクス・マキナの巨大な拳がエルシアの防御魔法に当たり火花を散らす。

 それに僅かに顔を歪ませる。


「ファルト~! 結構重い……」

「任せろ! 我の威を示せ! ライトニングジャベリン」


 本体に飛んでいったライトニングジャベリンは体から生えていた金属に吸われ、巨体に電撃が流れただけだった。


「デンゲキ カクニン サージ サージ」


 流れた電撃はコアにダメージを与えること無く車輪を通じて地面へと流れていってしまった。

 これにはファルトも目を見開いた。


「ならこいつだ! 我の威を示せ! ウォーターストリーム!」


 水の嵐がゴーレム・エクス・マキナを襲い、水浸しにする。


「機械は水を掛ければ壊れんだろ!」

「さっすがファルト!」

「ボウスイ ボウスイ ムダ」

「駄目じゃ~んファルト!」


 ちょっとがっかりしたファルトだった。


 ファルトが攻撃魔法を試している間にもゴーレム・エクス・マキナはサードプロテクションを殴り続けている。

 いまいち倒しづらい原因としてゴーレム・エクス・マキナの背中、背後には蒸気機関車の燃料である石炭が積まれている。

 それに引火したら大問題である。

 それ以前にここは汽車である。下手に攻撃して脱線してしまったらこちらの命も危ない。


「あー! やりにくい!」

「どうしよう……。一旦距離取る?」

「そうだな。魔力のムダだな」


 半壊した汽車の後方まで下がり相手の射程距離から身を引いた。

 と、思った瞬間ゴーレム・エクス・マキナが床板を巻き込みながら近づいて来たのだ。


「ええ! それ反則―! 我の威を示せ、プロテクション=エモートセイバー!」


 刃を伸ばし遠距離からゴーレム・エクス・マキナを斬りつける。

 だが当然身体は一部鉄で出来ているため刃が弾かれ折れてしまった。


「ならこれはどう? 我の威を示せ、サードプロテクション=エモートセイバー!」


 いわゆる三本の矢である。

 1枚では薄く脆い防御魔法だったが3枚重ねることで折れにくくしたのだ


「せーの!」


 先ほどとは違い核の付近を傷つける。

 ゴーレム・エクス・マキナは核を守ろうと自動的に防御態勢になった。

 これを最大のチャンスだと悟ったファルトは先程の移動で炭水車から離れたのを確認し、今まで使えなかった魔法を解禁した。


「一撃で沈め! 我の威を示せ、メルトダウン=リコネクト! 我の威を示せ、ライジングサン!」


 太陽のような高温の球が出現し、それをゴーレム・エクス・マキナへと放った。

 身体を半分構成している木が炎上し鉄部品はあっという間に溶け落ちた。


「イジョウ ネツゲン アリ」

「ネツゲン セッキン ハイジョ」

「キケン キケン」


 そこまでゴーレム・エクス・マキナが言うと核が蒸発し、機能を停止したのだった。


「さっすがファルト! 後は運転室だけだね」

「ああ。だが問題がある」

「?」

「あのゴーレムのせいで床が抜けてる。いわば鉄骨渡りだ」

「ええええ! ど、どうするの?」


 落ちたら最後汽車の車体に挟まれ、車輪に踏まれ悲惨な最後になるだろう。

 そこでファルトが1つ提案する。


「そこでエルシアの出番だ。何かわかるか?」

「え? んー。わかんない!」

「防御魔法あるだろ? エルシアはそれを自在に形を変えられる。それを使って床を作るんだ」

「おー! なるほどね! ええっと? 我の威を示せ、プロテクション=エモート……床!」

「それでいいのか魔法名!?」


 壊れた汽車の床に防御魔法の床が張られた。

 ファルトはそれを確かめると、それに飛び乗った。


「ちょっくら行ってくるわ。エルシアは魔法の維持頼む」

「わかった! 気をつけてね」

「おうよ」


 炭水車を飛び越え運転室へと侵入する。

 そこにいたのは運転手と黒服の二人。


「た、助けてくれ!」

「我の威を示せ、フィジカルフォースブースト!」

「誰だ! グハッ!」

「野郎! 死ね!」


 一人は蹴飛ばし壁が歪むほどの勢いで叩きつけたがもう1人が抜剣していたため一瞬で制圧することに失敗した。

 だがそこは狭い運転室だ。

 怒りが先に来ている黒服は剣を振るうだけしか脳にない。

 狭い運転室で剣を振るうと当たり前に壁や天井に剣が当たり、弾かれた。

 弾かれた瞬間に鳩尾に一発決める。


「うっ!?」

「た、たすかったのか?」

「あぁ。次の駅で止まってくれるか?」

「わかった。それと恩に着る、ありがとな兄ちゃん」


 ファルトは炭水車を乗り越え、エルシアの元へ戻った。

 その後結界魔法で先程助けを求めてきた黒服を拘束し、アンソニーの元へ戻ったのだった。


 後続の汽車についてはカレンとアレスが協力し殲滅していた。


「2人とも無事に戻って来ましたか! 大きな音が響いてきたから心配だったよ。それでその黒服の男は主犯格?」

「いや、主犯格だと思う男は死んだ。自分が起動させたゴーレムにな」

「そう、か……。次の駅で憲兵を呼んで引き渡しましょう。アレス、残弾はありますか?」

「あと1マガジンですわ」


 銃からマガジンを抜くと、それを見せる。

 アレスの使っている銃は自動小銃に分類され連射力と貫通力もある。

 実はアレスの羽織っているコートの裏には幾つものポケットが有り、そこにマガジンが入っているのだ。


「ここらの街で補給できるところは無いと思う。エデルガーデンまで何もなければ持ちますね」

「アンソニー官僚、駅が見えてきました」

「それでは一度降りよう。エルシアは黒服の身柄受け渡しを頼むよ」

「はーい!」


 汽車は駅で無事に止まり、今回のハイジャック犯の1人を受け渡したのだった。








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