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天使と悪魔の片翼の輪舞曲~One wing of them~  作者: 白築ノエル
2人間の街と学園
13/113

13第一村人発見





 家から出て数時間。

 森の中を歩く2人の男女。

 右片翼の天使エルシア・エル・シフォーニと左片翼の悪魔ファルト・ニールである。

 2人とも天界、魔界から片翼(ハーフ)と言う理由で人界に追放され、森の中で出会った仲でお互いに不足している部分を支え合っている。


「ねーねー。道あってる?」

「大丈夫だと思うが、森から抜けれねーな」


 2人は結界で閉ざされた森の中から脱出したはいいが、倒れてしまい森に住んでいたネルガン・ソニトンと言う老人に助けられた。


「お父さんが川を下ればいいって言ってたよ!」

「周りを見ろ! 川なんて何処にもないだろ」

「言ってみただけだよ~! 早く森抜けようね!」


 エルシアはニコニコ笑いながら獣道を歩いている。

 それを後ろから地図を持ちながら続くファルト。


 不意に森の変化に気がついた。


「エルシア、気づいているか?」

「うん。変わったね」

「……来るぞ! 我の威を示せ、ウィンドカッター!」

「我の威を示せ、プロテクション=エモートセイバー!」


 木の陰から挟み撃ちで仕掛けてきた魔獣をファルトは攻撃魔法の風の刃で切断し、エルシアは防御魔法で攻撃(・・)する。


 攻撃魔法で攻撃するのは普通だが、防御魔法で攻撃するとは普通はない。

 そこで自由に形を変える事ができる防御魔法の特性を活かして魔法防御フィールドを極限まで薄くすることで刃と変えているのだ。


 これでエルシアの欠点、攻撃魔法が使えない(・・・・・・・・・)と言うのは解消された。

 一方ファルトの欠点は防御魔法、回復魔法が使えないことだ。

 そこはエルシアがカバーに入ることで一応対応している。


「まだ来るぞ! 囲まれるなよ!」

「うん! ファルトこそ慢心しないでね?」


 2人は背中合わせで魔獣を相手にする。

 まだ木々の間からこちらに音が迫ってくる。


「我の威を示せ、フィジカルトリプルブースト! おらぁ!」


 身体強化三段掛けの回し蹴りが魔獣に炸裂した。

 骨の折れる音と感触が伝わってくる。


「我の威を示せ、ファイアランス!」


 2匹目、3匹目と仕留めていく。

 更に背後ではエルシアが戦っている。


「そぉれぇ!」


 不可視の刃が振るわれると魔獣が真っ二つに切り裂かれる。

 後続の魔獣はそれに警戒し距離を詰めてこない。

 だが防御魔法の真髄は形状の変化だけでは無いのだ。


「下がっても無駄だよー!」


 エルシアが再度腕を振り下ろすと先程まで届かなかった位置までもが切り裂かれた。

 そう、このエルシア独自のエモート防御魔法は形状が自由に変わるだけではなく、伸びるのだ。

 その距離は込める魔力に比例し、何処までも伸びていく。


 エルシア側の魔獣は状況が不利と悟ったのか逃げ出した。

 ファルトの方でも魔獣が散り散りになっていった。


「終わったな」

「だねー。ファルト慢心しなくて偉い!」

「お前な……」


 そんなやり取りをしつつ、森を進んでいくと歩いていた道が獣道から舗装された道にでた。

 再度地図を確認すると、この先に小さな街があるらしい。


 歩くこと数十分。

 街の近くまで来ていた。

 よく見ると畑仕事をしている人がいる。


「おーい。そこの人、この街の人か?」

「ん? そうだけど何か用――ひぃ!? ば、化け物!」


 畑仕事をしていた人は大声で助けを求める声を出しながら逃げていってしまった。


「なんなんだいきなり」

「変な人だったねー」

「とりあえず街で情報収集するか」

「賛成ー!」


 街の中に入っていくと、屋台が出ているが何処の屋台にも人がおらず、店主も居ない。

 それどころか人1人居ないのだ。

 辺りを見渡してみると窓から覗いている少女が居た。

 すると母親らしき女性が窓から引き離し、窓を閉めてしまったのだった。


「さっきから一体何なんだ? 俺たちを避けている?」

「何でだろうね? 悪いことしてないのにね?」


 暫く歩くと道を歩く人を見つけた。


「あ、すみませーん! なんか私達からみんな逃げちゃってるみたいなんですけど何か――」

「抜剣! 騎士隊は距離を保ちつつ追い詰めろ! 近代化歩兵部隊は住民に注意をはらい銃撃せよ!」

「ふえぇぇ!? ファルト! 私達悪者っぽいよ!」

「なぜか知らんがそうみたいだな……! ここで殺しは不味い、防御魔法を張りながら街から離れよう!」

「わかった! 我の威を示せ、サードプロテクション!」


 騎士が剣を向けながら迫ってくる中、騎士と騎士の間から細長い筒のような物を向けられた。

 エルシアとファルトは一体何だと思った瞬間、何か硬いものが防御魔法に突き刺さった。


「わあ!? なになに!?」

「これは金属? あの筒から撃ち出してるのか!」

「なにそれ! お父さんも教えてくれなかったよ!」

「俺もわからん。オフクロもこんな物持ってなかった」


 徐々に後退するが来た道を先回りされて相手の手のひらで踊らされていた。


「エルシア不味い! この先行き止まりだ!」

「そ、そんな! 何とかしないと!」

「近代化重歩兵前へ! 後ろの者は下がれ」


 今度は大きな筒をエルシア達に向けてきた。

 先には何かが付いている。


「撃てー!」


 筒の先に付いていた物がエルシアの元に飛んできた。

 防御魔法に当たると大爆発を起こしたのだ。

 サードプロテクションは砕け散り、ファルトを巻き込み吹き飛んだ。


「きゃあ!」

「エルシア! くそったれ! 我の威を示せ、サンダーレイン!」

「ぐあ!」


 ファルトが放った弱めのサンダーレインにより前衛が感電し気絶した。

 続けて攻撃魔法を放つ。


「我の威を示せ、ライトニングアロー!」


 無数の雷の矢が飛来し、更に感電が広がる。

 すべて気絶で済まし、殺しは避けているのだ。

 エルシアを抱き上げると、路地の壁を蹴り上がる。


「我の威を示せ、フィジカルフォースブースト」


 屋根の上に登ったファルトはそのまま街の外へと逃げ出す。

 しかし、後少しで町の外に差し掛かった所で壁にぶつかってしまった。


「な、なんだ? 結界?」

「居たぞ!」「追い詰めたぞ!」「囲い込め!」

「追いつかれたか! 我の威を示せ、ライトニングジャベリン」

「ぐわああ」


 隊列をまっすぐ貫いていく。

 もちろん非殺傷である。

 やけどはできるだろうが。


「……了解しました。近代化歩兵部隊! 特殊弾2式装填!」

「装填完了!」

「撃て!」

「くっ! 我の威を……ぐあっ! これは針? うっ……意識が……エル、シア……」

「捕縛し市長官邸に連れていけ」

「了解しました」





 時間は遡り市長官邸にとある人物が来ていた。

 アンソニー・シルヒハッセ。

 フラグメントはコスモスの統一国家の若き官僚である。


「それで? 悪魔の森に異変が起きたのですね?」

「はい。先日悪魔の森上空で激しい突風と雲が観測しまして。ただ事ではないと思い及びしました」

「なるほど。それで調査隊を編成していると(もしやネルガンさんに何かあったのか?)」


 そのテーブルに設置されていた電話機がなりだした。


「うるさいぞ! 今はアンソニー官僚と話しているんだ!」

『アンソニー官僚も居ましたか! 今悪魔の森方面から化け物が接近中であると報告がありました!』

「何? 化け物だと? 今すぐ討伐部隊を編成し対処しろ!」

『はっ! 直ちに編成して対処します!』


 受話器を置くと市長は今の話しを語りだした。


「いや~調査隊を出す前に異変の元がやって来たようです」

「それはどんな魔獣何でしょうね?」

「討伐部隊が確認しますのでお待ち下さい」


 数分後報告が入った。

 部隊に居た近代化歩兵部隊無線兵いわく片方は白い片翼が生えている人形でもう片方は黒い片翼が生えている人形の魔獣だそうだ。

 それを聞いてアンソニーは目を細めた。


(片翼の人形魔獣? いや、それは片翼(ハーフ)だ! 保護しなければ……)

「アンソニー官僚どうしました?」

「対象を討伐から保護に切り替えてください」

「は? 相手はわけもわからない魔獣ですよ! 一体何を……」

「いいから早く連絡してください。全責任は私が負います」

「は、はぁ。知りませんからね」


 市長はそう言うと受話器を取った。

 対象を討伐から保護に切り替え、市長官邸につれてくるように命令したのだった。






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