113封印後の世界
世界が光りに包まれた時、誰もが目を閉じた。
その刹那の時間で封印は完了していた。
「う……。エルシアさん! ファルトさん!」
「アリス。もう俺達のことは忘れて生きろ」
「アリスちゃん。みらみらとゲルトラウドによろしくね」
アリスが目を開いた時にはファルトの肉体は消滅し、エルシアの体は封印の核になり聖遺物となり残った。
2人の魂は封印がなくなるその日まで無限牢獄に幽閉され、無と言う苦痛に苛まれ続けるのだ。
「了。封印はなされた。アリス、封印の核である聖遺物を守り続けよ。この体は腐りはしないが破損や焼失はする。気をつけることだ」
「……そんな……」
「アリス、分かったか?」
「わかりました。渡守様」
アリスは渡守から聖遺物を受け取ると、門は閉じたのだった。
それと同時に周りの避難民達も現実に引き戻された。
「天使と悪魔達は……?」
「消えた? 大陸も無くなっている」
「俺達助かったのか?」
「私達助かったんだ!」
避難民は声を上げ喜んだ。
だがアリス、ルルはその様な気持ちになれなかった。
そっとエデルガーデン記念公園を後にする。
家に帰るとアンソニーに事のあらましを説明した。
それを聞いたアンソニーは生き残った軍関係者を寄せ集める。
幸いなことにアヴァロンで軍を指揮していた最高司令官が生き残っていたため、直ぐに関係者が集められた。
「各省と軍関係者の皆様。天に浮かんでいた大地、天界と魔界は私達が保護していた片翼が封印を行いました。2人居た片方の1人は肉体ごと消滅、片方は聖遺物となり封印の核になりました」
「それは本当か! もう白羽と黒羽は居ないんだな?」
「はい。聖遺物が破損や焼失しない限り天使、悪魔は二度と現れません。先の戦いで根も葉もない悪質な噂を流し、片翼の2人を私刑にしようとした人物が居たようですが」
「誰だ! そんなことをしたのは!」
「片翼迫害派の仕業では?」
「ワイズマン君。何か知らないかね?」
全員の視線がワイズマンに集まる。
「い、いえ。私は何も知りません」
ほぼ分かりきっている質問であった。
これ以上余計なことをすれば消されるのは自分だと理解したのだ。
「アヴァロンの王城地下深くに封印するべきだ」
「そうだな。もし誰かに破損や焼失などされたら今度こそ人類は終わりだ」
「封印に当たって新しい王族はどうする?」
「エデルガーデンではシルヒハッセ家のアリス・シルヒハッセが戦闘に貢献したそうだな」
新しい王族候補にアリスの名前が上がっていた。
戦争に貢献した功績もあり、かつ封印を行った際の神器保有者という事で最有力候補になっている。
他にも候補者が上がったがアリスほどのインパクトがあるものはおらず、全会一致でアリスに次期女王の座が決まったのであった。
★
この戦争で人類は8割もの人口を失った。
その殆どは一般人の焼死だ。
天使と悪魔が放った魔法に焼かれた者、火災で火に巻かれた者。
はたまた状況に絶望し自殺した者も居た。
「厳しい世の中ですが私が頑張るしか無いですか。そうですよね2人とも」
アリスはそう言うと玉座の間に足を踏み入れたのだった。
人界に新しい春が到来する。
それは誰も犠牲にせず、誰も悲しまない。
そんな節目になる年の開けだった。
これにて完結です。
これがハッピーエンドかバッドエンドかを決めるのは読者様次第です。
ではまた次回作でお会いしましょう。
ご愛読ありがとうございました。




