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天使と悪魔の片翼の輪舞曲~One wing of them~  作者: 白築ノエル
6天魔人界戦争
112/113

112眠り姫3





 物陰に移動した2人は話しを始めた。

 アーレスの言いたいことは1つ。

 亡き夫の事だ。


「単刀直入に聞くね。貴女達に殺された人が私の夫なの。話を聞かせてくれる?」

「そうか、あいつの妻か。いいだろう。聞かせてやるよ」


 1人基地に入り込み武器庫や食料庫に火を放ち、押し寄せてくる軍勢を物ともせずに進んだ。

 そしてデュナミスを追い詰めたが、逃げられ部下達に討ち取られただろうという事。

 それだけが知っている事実だ。


「そう。私の夫は戦い抜いたのね」

「私達を恨んでないのかい?」

「あなた達を? それは違うよ。恨む相手は夫に残酷な命令を下した上官よ」

「あなた変わってるわね。普通は敵を恨むわよ?」


 自然に笑いがこみ上げる。

 2人の間にあったわだかまりが溶けた瞬間だった。


 フィファナ達はデュナミスが作った家に引っ越しをすることとなった。

 基本的に荷物は無いためほぼ手ぶらで移動する。

 待ち合わせ場所に到着するとデュナミスが待っていた。


「遅いぞ」

「お母さんが寝坊するから~」

「おまえが寝坊してるのかい!?」

「いや~。悪い意味での引っ越しは沢山したけど、良い意味の引っ越しは初めてだからワクワクしちゃって」


 子供かとデュナミスはツッコミを入れる。

 お互いに話しながら新居に移動する。

 新居は木を切り倒し、皮を剥いだ丸太を積み重ねたログハウスだった。

 同じものがもう1つある。

 だがそちらは少し大きかった。


 そして3つ目の記録が終わった。

 更に深く、深く沈んでいく。

 頭だった場所にまた1つの記録が降って来た。

 そして頭に流れ込んでくる。


 冬先、黒い翼と白い翼を持つ子供が森のめぐみを取りに森の奥へ入っていた。

 子の名前をアレクシード・レイ・ヴァレフォルと言う。

 フィファナとアヴァンの子供である。

 フラグメントはオール。

 デュナミスから魔法を教わり文武両道の子供であった。

 

「よし、このぐらい取れれば良いだろう」


 森から家に戻ると家族で食事にした。

 そんなある日、森で魔法の練習をしていると轟音が森の奥から鳴り響いてきたのだ。

 音のした方に行くと地面に一振りの刀が突き刺さっていた。

 何気なしにそれを手に取ると、今まで習った魔法知識に加え神代文字の知識が流れ込んできたのだ。


「ぅ……!」


 突然なことに頭痛を起こした。

 だがそれは一瞬のこと。

 次の瞬間には神代文字を使った魔法を完璧にマスターしていたのだった。

 

「なんか突然だったな。何だったんだ? 一応この刀持ち帰るか」


 家に刀を持ち帰ったアレクシードは鞘を作り棚の上に置いていた。

 ある日、フィファナが病に倒れたのだ。

 アレクシードは薬草を求めて山をいくつも超えていく。


 山を7つ超えたあたりに薬草の群生地帯を発見し採取する。

 薬を作るには十分な量を採取したアレクシードは空を飛び、急いで家へと向かった。

 6つ山を超えたあたりから遠くに白煙が上がっていることに気がついた。

 家に帰るに連れ白煙に近づいている。


「まさか……!」


 飛ぶ速度を上げる。

 家に着くとログハウスが炎上していた。

 その前には黒い翼の異形と白い翼の異形の死体が転がっていた。

 それを避けて家に近づくとアヴァンとフィファナが血を流し息絶えていたのだ。


「な……何が。デュナミス母さんはどこだ?」


 燃え盛る家の中に防御魔法を付与し入ると、家の真ん中で倒れていたのである。


「デュナミス母さん! おい、しっかりしてくれ!」

「う……。すまな、い。アヴァン、と、フィファ、ナを守りきれな、かった」

「一体何があったんだ! 我の威を示せ、ハイフリートヒール!」


 デュナミスは話をする。

 しかし、徐々にその声はか細くなっていく。


「天羽々斬を、使っ、て世界に、楔を打、て。そして自、身を代償に世界を、封印するん、だ。いいね?」

「分かった」

「いい子だ……」


 デュナミスの手から力が抜ける。

 

 アレクシードは棚に置いてあった天羽々斬を手に取ると外へ出る。

 神代文字で描かれた魔法陣を地面に刻み込み、中心に天羽々斬を突き立て、魔法を発動した。


 そして世界から異形の住む大陸が消えた。

 代償として自身の体と魂は無限牢獄へ幽閉され、永遠と思える苦痛を背負う事となった。


 4つ目の記録が終わった。

 思考の海に沈んでいた意識が急速に浮上する


「うっ……。う? ここは?」


 エルシアが目を覚ますと、ベッドの隣にファルトが椅子に腰掛け寝ていた。

 カレンダーを見ると悪魔達が襲ってきた日から13日は経っていた。

 世界を救う方法を見出したエルシアは直ぐに行動を開始しようとした。

 しかしベッドから落ちる羽目になる。


「いったぁ……。足が動かない……」

「ん……? エルシア目が覚めたのか! なんで転がってるんだ?」

「ファルト、そんなことより早くアリスちゃんの元に行こう! 世界を残す方法を見つけたの!」

「本当か? なら行こうぜ」

「でも代償が結構きついけど大丈夫?」

「どんな代償だ?」


 エルシアは夢で見た代償を話した。

 少し考え込むような仕草をするが、答えは決まっていたようだ。


「今更代償に怯えるかよ」

「じゃ、行こう!」


 ルルを起こし、エデルガーデン記念公園へと車を出してもらう。

 ラジオではアヴァロンが陥落したと戦況報告がなされていた。

 ここで封印を実行しなければもう後はない。

 

 車を走らせていると後ろから多数ではすまない量の天使と悪魔の大群が押し寄せていた。

 車の前方の空にもそれは居た。

 エデルガーデン記念公園に到着すると王国軍の兵士達は弓と剣を持ち立ち向かおうとしていた。

 アサルトライフルの銃弾はとうの昔に無くなっている。

 防御魔法が展開されたエデルガーデン記念公園に入るとアリスを見つける。


「エルシアさん! 何故来たのですか!」

「アリスちゃん! 今から言う通りにして! ファルト行くよ!」

「ああ」

「我らの威を世界の軛から解き放て」

「呼び奉る神威御霊」


 絶望が覆う空に一条の光が差し込んだ。

 人々は何かと視線を向ける。

 空に具現化した門からは渡守が降りてきた。


「……すでに寿命は無いのに何故私を呼んだ?」


 エルシアはファルトに担がれたまま答えた。


「アレクシードさんが行った封印を今一度行います。楔として天叢雲と八咫鏡を。封印の核に伊邪那岐様の加護が宿る私の体を使います。代償は魂を」

「! エルシアさん何を言っているのですか!?」

「エルシア、一体何を言い出しているの!? アリスの元に連れて行ってとは言われたけど、そんなこと聞いてないわ!」

「ごめんなさい。それしか方法が無いから」


 それを聞いた渡守は昔を思い出すかのように答えた。


「良いだろう。かつての英雄アレクシード・レイ・ヴァレフォルが行った封印を行おう」

「今度の封印は絶対にお互いが干渉出来ないように厳重なものにしてください」

「分かった。では楔を打ち込む」


 アリスの手から天叢雲が離れ、ファルトからは八咫鏡が離れた。

 それらは天を斬り裂き、光が地面に突き刺さった。

 渡守は手を打ち鳴らすと、封印が壊れた時に現れた巨大な神代文字で構築された魔法陣が空に展開されたのだ。


「これより封印を行う。楔は天叢雲、八咫鏡。封印の核はエルシア。代償はその魂」


 天使と悪魔がエデルガーデン記念公園の防衛圏内に差し掛かった。

 その数に王国軍も足が竦む。

 開戦と思われたその時世界を光が包んだのだった。




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