101アリスvsデミ・ゴッド
「ん? あなた誰? 私の城に無断で立ち入っているわね」
「ガブリーラ女王陛下。私はアンソニー・シルヒハッセの娘のアリス・シルヒハッセです。片翼の2人を返していただくべく参上いたしました」
「シルヒハッセ……シルヒハッセ……。あぁ、片翼保護派の奴ね。こんな貴重なエネルギー源を保護してくれてありがたいわぁ。今度勲章上げるわね」
「陛下。エネルギー源ではありません。エルシア・エル・シフィーニさんとファルト・ニールさんです。お間違えのないように」
「アハハハ! そんな大層な名前が付いているのですねぇ。エネルギー源にしては勿体ない名前ですね、シルヒハッセの小娘。」
アリスは2人を馬鹿にされ頭にきていた。
それは殺気となりガブリーラにも伝わる。
しかしアリスの殺気をそよ風を感じるかのごとく平気な顔をしている。
ガブリーラはそれに飽きたのか、手元にある無線機で人を呼ぼうとしていた。
ブレスボタンを押す。
その瞬間無線機が粉々に吹き飛んだのだ。
「……シルヒハッセ。私に楯突くつもり?」
「2人を返してくれさえすれば盾突きませんし帰ります」
「……これだから餓鬼は嫌いよね。そうね、あなたを処刑してシルヒハッセ家は取り潰し一族郎党皆殺し。後釜にはワイズマンの息子でも入れればいいか」
「今なんと言いましたか?」
アリスの殺気がより鋭くなりガブリーラに突き刺さる。
流石に自身に神格防御魔法リフレクション・フォールンが付与されてるとは言え少し後ずさる。
それだけ今のアリスは激怒しているのだ。
そしてデミ・ゴッドの目の前に居るため体も光りを放っている。
ハイパーアリス状態である。
「今何と言ったか聞いているのですが。聞いていますか……?」
「っ! 何度でも言ってあげるわよ! あなたを処刑して一族郎党皆殺しだってね!」
「もう結構です。隔離せよ、剥離せよ。この空間は私の威のままに。断絶せよ! 閉鎖否定因果律」
アリス達のいる場所の空間が魔力によって閉鎖された
この空間ではアリスの意図しない結果は全て否定される
ただし、否定できる結果は1つのみである。
「この空間内で妨害することを禁止する」
この魔法は割と大雑把で妨害すると言うだけでも声を出して妨害する、体を動かして妨害する、魔力を発して妨害するなど妨害と名のつくものであれば何でも否定できる。
ただし寿命や死を否定することは出来ない。
「この魔法は魔力を食いますからね。さっさと2人を救い出しましょうか。ついでに頭がおかしい陛下も治して逝って差し上げましょう」
「ほざけ餓鬼! 私に楯突くものは皆処刑よ!」
アリスは常に自分に付与しているシュプリームフィジカルバーストで一気に加速する。
それは一瞬の出来事でガブリーラは反応すら出来ず、顔面10センチ手前で拳が停止した。
我に返ったガブリーラは直ぐにデミ・ゴッドに指示を出す。
しかしデミ・ゴッドは反応せず、慌てる。
「なんで動かないのよ! 動きなさい、この餓鬼を殺すの!」
「無駄ですよ。私達の殺し合いに邪魔は入らない」
もし指示している命令が神力を使ったものであれば動いただろう。
しかし魔力や空気の振動で指示しているデミ・ゴッドにはガブリーラの声は届かなかったのである。
「なでよ! 我の威を示せ、ファイアーアロー!」
「そんなもの!」
アリスは近距離で放たれようとした攻撃魔法を拳で打ち消した。
「ギア上げますよ」
「無駄よ! あなたの攻撃は絶対に通らない! これは神の魔法なのよ!」
「それはどうでしょうか。消費する神力、出力の加減はどうなっているのでしょうね」
アリスは徐々にギアを上げていく。
すると次第にリフレクション・フォールンとアリスの拳がぶつかる際に火花が散り始めたのだ。
デミ・ゴッドの初期設定はレジスタンスが設定した最低値になっている。
自律型ではないデミ・ゴッドは自分で出力を変えたり動いたり出来ない。
ただし。
「我の威を示せ、ライトニングバーストエレメント=リコネクト。我の威を示せ、エレクトロン=リコネクト。我の威を示せ! カドルエレメントフォーム! はああぁぁ!」
背に雷輪、瞳は金色。
アリスの秘めたる力を開放した。
それはガブリーラに付与されていたリフレクション・フォールンを砕き顔面を殴る。
神格防御魔法で威力は殺されたとは言え、アリスの8割プラスハイパー状態の力で殴られたガブリーラは地面に転がり歯が砕けた。
2人を救い出そうとガブリーラに止めを刺そうとした時だった。
「!? デミ・ゴッドが動いた?」
砕けた神格防御魔法に反応し、半自律型のデミ・ゴッドが動いたのである。
「この!」
神格防御魔法は破った力以上でデミ・ゴッドを蹴り上げる。
並の金属なら拉げる筈だが、今度は神格防御魔法に受け止められたのである。
デミ・ゴッドが自動で出力を上げたのだ。
一番力が乗る拳で殴りつける。
だが、手応えがない。
一旦距離を取り雷でデミ・ゴッドに吸着する勢いで先程より強い力で殴る。
「! 効かない!? きゃ!」
一瞬の隙きを突かれデミ・ゴッドに左腕を掴まれてしまった。
感覚神経などデミ・ゴッドには付いていない為、デミ・ゴッドに握られた左腕は小枝を折るようにいとも簡単に折れてしまった。
「くっ……! こ、のお!」
左腕を折られた事により先程より威力が落ちてしまっているがそれでも抵抗する。
もし身体強化の攻撃魔法を自分に付与していなかったら骨が折れたどころの話ではなかっただろう。
デミ・ゴッドのもう片方の手がアリスに伸びる。
このまま捕まってしまったらアリスは全身の骨を折られ潰されてしまうだろう。
だがその目はまだ諦めていなかった。
最後の最後まで足掻く。
その時腰に帯剣していた天羽々斬が鼓動した。
アリスが目をやると抜けと言わんばかりに天羽々斬から力が溢れ出している。
「――」
アリスは天羽々斬を抜刀する。
そして名を叫ぶ。
「目覚めなさい! 天羽々斬、いえ天叢雲!」
天羽々斬から光が発し錆びついていた刀身はきれいな金色に染まる。
折れた刀身も光が集約し復活していた。
左腕を掴んでいるデミ・ゴッドの腕に振り下ろした。
デミ・ゴッドは神格防御魔法の出力を50パーセントまで上げていた。
しかし、神格防御魔法を貫通し、デミ・ゴッドの左腕が斬り落とされたのである。
どんな刃物より鋭く、どんな金属よりも固く、どんな魔法でも斬り裂く刀、天叢雲に進化を果たしていたのだった。
「……体が軽い。痛みも引いていく。これなら……!」
デミ・ゴッドは神格攻撃、防御魔法の出力を100パーセントまで上昇させ、リフレクション・フォールンとアディショナルリインフォースを付与した。
残った右腕でアリスに殴り掛かる。
それを天叢雲でいなす。
そして右腕を輪切りにすると、流れるような太刀筋で足すら切断したのだ。
倒れ込んだデミ・ゴッドの腕に乗ると胸部に深々を天叢雲を突き刺した。
デミ・ゴッドの核となっていた魔石が砕け機能が停止する。
するとエントリーカプセルが排出され裸のエルシアとファルトがでてきたのだった。
「2人とも大丈夫ですか! 今抜きますからね」
天叢雲を鞘に収めると折れていない右腕で口に刺さっているチューブを抜き取る。
2人の頬を叩いていると、薄っすらと目が開いた。
「あ、あ? アリス? どうしてアリスが……。っておい! 左腕大丈夫か!?」
「う、うーん。あれ? 私寝てた……って! 裸―!?」
「ん? 俺も裸じゃねーか!」
2人は局部を隠すとアリスに事の顛末を聞いたのだった。
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