100魔界での戦い
朝4時。
まだ朝日が半分ほどしか上がていない頃、人気がない街の中心部に第魔方陣が5つ展開されていた。
それに気が付いたものは居ない。
王国軍兵士5千人が街中に転移してきた。
銃のピカティニー・レールに付けられたグレネードランチャーを家へと向ける。
そしてポンっと音を立て榴弾が発射された。
家に着弾すると爆発を起こし、火災が発生する。
中から悲鳴が上がり爆発音に起こされた悪魔達がぞろぞろと表へと出てくる。
「な、なんだぁ!?」
「火事!?」
「てか、なんだお前ら」
王国軍兵士は出てきた悪魔達を後にし、榴弾を家に次々撃ち込んでいく。
いたる場所で火災が発生し住民は激怒した。
最初に誰かが攻撃魔法を王国軍兵士に放ったが、当然のことながらリフレクション・フォールンは発動しているためダメージを与えるどころかのけぞらすこともできなかった。
『悪魔からの攻撃を確認したわ。殺しなさい』
「了解」
悪魔に銃を向けトリガーを引いた。
天使達と同じように次々死んでいくが、天使とは違う点があった。
それは反撃してくるのである。
悪魔達はすかさず攻撃魔法を王国軍兵士に撃ち込む。
その規模は天使が使っていた攻撃魔法より大きく火災で燃えている家ごと破壊していた。
「どうだ! クソ野郎ども」
「私たちの街を破壊したことを地獄で後悔しなさい」
殺したと思い、死体を確認しようと一歩前に出たとき土埃の中から特殊弾が放たれたのだ。
咄嗟に防御魔法を展開したが、一般悪魔が使う防御魔法では特殊弾により魔力が分解され、あっという間に蜂の巣になる。
しかし悪魔達は逃げなかった。
これでもかと攻撃魔法を王国軍兵士に撃ち込むのだ。
喧嘩っ早いと言えばそうなのだろうが、悪魔のフラグメントはカオスだ。
当たり前だろう。
「クソ野郎! なんで攻撃魔法が効かないんだ!」
「きっと防御魔法だ! キャストブレイクを使え!」
「おう! 我の威を示せ、キャストブレイク」
「よっしゃ! 我の威を示せ、フレアブラスト……ナニィ!?」
「馬鹿な、防御魔法はキャストブレイクで定義破綻したはずじゃ……ぎゃあ」
「諦めるな! 諦めたら喧嘩は負けだ! 奮い立て!」
後方に居るガブリーラは遠くから聞こえてくる音に笑いが止まらなくなっていた。
「アハハハ! 面白いわ。無駄だと分かっていないのかしら? 私を笑い殺す気?」
「学習能力が無いのでしょう。我々の軍は圧倒的です。負けるはずがありません」
「でしょう? 私自ら戦地に赴いているのだからそれくらいやってくれないと困るわ」
(抵抗が激しい。特殊弾の消費が激しそうだ。人界に帰ったら急ぎ作らせねば)
★
魔王城では街が騒がしい事に気が付いたのか魔王軍の兵士が街まで飛んできた。
あらゆる場所で煙が上がり、魔法がさく裂している。
それを見た魔王軍の兵士は2人を残し1人は魔王城へ戻る。
魔王アレクサンドリア・ミレアニの副官に話を通すと寝室に入った。
ベッドの上でネグリジェ姿のアレクサンドリアの姿があった。
「アレクサンドリア様。街で人間の軍と思われる兵士達が暴れています。住民が現在交戦しております」
「ふあわ~。なんじゃ、こんな朝っぱらから。人間? なぜ召喚魔方陣以外から出てくる?」
「わかりません。ですが街の各所に散って破壊行動と殺戮を繰り返しています。早めの対処を」
「気に食わぬなぁ……。妾の国に土足で踏み入りおってからに。魔王軍出撃じゃ! 肉片一遍残さず殺せ! 妾も出るぞ! マベニウス・アドゥムスを呼べ!」
魔王軍が出撃準備に入ると鐘が打ち鳴らされた。
緊急招集の鐘である。
20分程で出撃準備が完了し、アレクサンドリアが先陣を切る。
「クソ! なんでキャストブレイクも攻撃も効かないんだ!」
「見ろ! 魔王軍だ!」
「おお、助かった」
王国軍は撃つのを止めると魔王軍の悪魔達が地上に降りてきた。
アレクサンドリアが名乗りを上げる。
「妾の名はアレクサンドリア・ミレアニ! 魔界の女王である! 人間達よ、ここが魔界の妾の街と知っての狼藉か!」
王国軍兵士は何か無線機で話している。
30秒ほど静寂が続いたのち王国軍大隊長が声を上げた。
「我々は人界王国軍である! 過去の因果に終止符を討つ為に参上した。抵抗しなければ奴隷にすると寛大なガブリーラ女王陛下が仰っている! 今すぐ武装を解除し、国を引き渡せ」
嘘である。
ガブリーラはそんなリスクがある取引など最初から持ち掛けていない。
だがアレクサンドリアの癇に障る。
「マベニウス! 奴らを殺してしまえ!」
「交渉は決裂だな。いいだろう、皆殺しだ!」
「させないぞ! 我の威を示せ、メテオフォール=リコネクト、我の威を示せ、スーパーノヴァ=リコネクト、我の威を示せ、プリズンケージ=リコネクト、我の威を示せ、プリズンノヴァフォール!」
マベニウスは人間には不可能な再接続の三段階を行った。
王国軍をケージが囲う。
そこに成層圏から白色と赤い色の爆炎が降ってきたのだ。
ケージと魔力を用いてモンロー/ノイマン効果を疑似的に再現した魔法だ。
その威力は凄まじく、周囲に被害を与えないと同時に王国軍兵士が居た場所に高さ20メートル、横幅30メートルの大穴を穿ち、地形を溶岩に変えたのだ。
「やりました」
「ふん。所詮人間はその程度よ。妾達悪魔にかかれば肉片すら残らんわ!」
魔王軍がほかの場所の王国軍兵士の元へ行こうとした時だった。
マベニウスの足を特殊弾が撃ち抜いたのだ。
「ぐわあああああ!」
「マベニウス!? まさか!」
以前地面が溶岩化している穴の中から次々と王国軍兵士が上がってくる。
アレクサンドリアとマベニウス、魔王軍はその光景を見て絶句した。
王国軍兵士はあれほどの攻撃魔法を受けていて服すら焼けていないのだ。
「な、なぁ! マベニウス! 手を抜いたのか!?」
「魔王様! 手など抜いておりません! 全力の攻撃魔法でした!」
(唯一防御魔法が張られていない資材運搬車を攻撃されなくてよかったな)
「なら妾自ら――」
「了解。アレクサンドリア以外殺します」
再び銃撃が始まり地上にいたマベニウスと上空にいた魔王軍が撃ち殺される。
生き残った魔王軍は防御魔法を展開するが天使と同じくロケットランチャーと生活魔法ホーミングで撃ち落とされたのだった。
「や、やめろ……。妾の魔王軍を殺すな……。この……下種があああ!」
アレクサンドリアは一瞬で身体強化の攻撃魔法を詠唱すると大隊長に蹴りかかった。
リフレクション・フォールンで受け止められたが、蹴りの威力は衝撃波を発生させ隣にあった家を崩壊させるほどだった。
「くっ! 何故じゃ、何故攻撃が効かぬ!」
大隊長は蹴られながらも、黙々と作業を続け悪魔を殺していく。
そして民間悪魔と魔王軍を見渡せる限り殺しつくした王国軍は無線機で本陣に連絡を取っていた。
『そろそろいいだろう。魔王城を破壊したのち転移で帰還する』
「了解」
★
ガブリーラと指揮官が居る本陣ではデミ・ゴッドへ命令を下していた。
背中からアンカーが射出され魔王城がロックオンされる。
そして神格攻撃魔法ミーティアライトが発動した。
魔王城に使えていた軍関係者、侍女、コックなどの大勢の犠牲を出し悪人戦争は人類の勝利で終わったのであった。
「転移開始!」
王国軍は人界に戻ると、ガブリーラとデミ・ゴッドの前にアリスが仁王立ちで立っていたのであった。
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