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天使と悪魔の片翼の輪舞曲~One wing of them~  作者: 白築ノエル
1出会い
1/113

1目覚め

新作です!






「逃げろ! カリエラ、エルシア!」


 男性が叫ぶ。

 眼の前には白い翼を生やした天界騎士団が居る。


「アドルフ! 絶対にまた逢いましょう!」

「お父さん!」


 そう言うと白い翼を生やしたカリエラがエルシアを抱えて飛び立つ。


 そしてアドルフの前には30を超える天界騎士団。

 先頭の人物が合図を出すと10人程が翼をはためかせ空へ上がっていく。


「させるか! 我の威を示せ! ファイアアロー!」

「我の威を示せ! マジックリフレクト」

「くっ、ドリアド! そんなに人間と天使のハーフは駄目なのか!」

「天界王の意向だ。たとえ召喚者(・・・)片翼(ハーフ)だとしてもそれは変わらない」


 片翼、人間とのハーフの事を示す。

 人間と天使のハーフには翼が片方しか無く、それ故に片翼と呼ばれている。

 当然のことながら飛ぶことはできない。


「なぜお前たち天使も人も受け入れることができないんだ! 我の威を示せ、サンダー――」

「我の威を示せ、キャストジャミング。囲め!」


 アドルフの周りに天界騎士団が包囲し、抜剣した。

 それに対して魔法戦では勝てないと踏み自らも抜剣。

 ジリジリと詰め寄ってくる天使達に命を掛けた突撃をしたのだった。





「お母さん! 天使が追ってきてるよ!」

「大丈夫! お母さんが守ってあげるからね! ……きゃあ!」


 カリエラに天使が放った魔法が当たり、市街地に墜落していく。

 その時エルシアを守るような体制で必死に体制を立て直そうと奮闘したが、民家の家を突き破りぐったりと倒れてしまった。


「うぅ……。お母さん……? お母さん!」

「に……逃げるのよ……エルシア……はや、く」

「で、でもお母さんが!」


 そうしている間に天界騎士団の天使が家の中に入ってくる。

 エルシアが母親の前に立ち両手を広げるが、軽く腕で叩かれて倒れ込んでしまった。


「捕らえろ。王宮へ移送しろ」

「了解しました」

「お、母さ……ん。かはっ……」





「……者……天界……る」

「お、お母――」

「転送」


 エルシアが次に目を覚ましたのは森の中だった。

 当たりを見渡し、首を傾げる。


「あれ……? 私、は? そ、そうだ! お母さんとお父さんを助けなくちゃ!」


 だが、場所がわからないうえ空も飛べない。

 思考を巡らせある事を思い出した。


「お父さんが冒険者の頃はよく森に入ったんだ。もしエルシアが森で迷うようなことがあったらまず川を探すんだ。危険な魔獣も居るが街に出られるぞ」

「そーなの? エルシアもいつか冒険してみたーい!」


 昔父親と交わした記憶を頼りに耳を澄ませてみる。

 小鳥のさえずり、木々のざわめき。


「川の音がしない! 離れてるのかな? ちょっと探しに移動してみよう。どちらにせよ森からでなくちゃね!」


 元気に歩き出し森からでるか、川にたどり着くかの冒険に出たエルシアだったが、背後から気配を殺して見ていた生物に気が付かなかった。


「ふんふふーん。待っててお母さん、お父さん! 私が助けてあげるからね!」


 その後エルシアは森の中を歩き回り、川を探し続けた。

 しかし一向に川が見つからず途方にくれていたのだった。


「川がない……。どこかに見晴らしのいい場所ないかな……。木登りは得意じゃないんだけど、登ってみるしかないかな?」


 木に手をかけるが、今まで家から出たことがなかったエルシアには木を登るだけの筋力がなかった。

 ぴょんぴょんっと跳ねつつ登ろうとするが、全く登れないのだ。


「うー。登れないよ……。違う方法を探すしか無いのかな?」


 木登りをあきらめ、違う方法で川や街を探すことにした。

 だが全く思いつかず森の中をふらふらと歩き出し、無駄に体力を使ってしまった。

 だんだん足が重くなり足が上がらなくなってきた。


「足が重い……。結構疲れたなぁ……でも! 私がなんとかしないとお母さんとお父さんが……あっ!?」


 木の根が出ている場所に足を引っ掛け転んでしまった。

 受け身を取れずにもろに両手を広げて転んだエルシアは擦り傷を負った。


「痛い……。でもこの程度の切り傷なら魔法でなんとかなりそう。我の威を示せ、ヒール」


 淡い光が傷口に吸い込まれ周りの細胞を回復させていく。

 30秒かけ傷を癒やしきった。


「これで大丈夫。夜になる前にどこか安全な場所に移動しないと」


 父親に聞かされていた冒険譚をもとに安全な場所に移動を始める。

 一番手軽なのは木の上なのだが、木登りができないエルシアでは無理である。

 周りを見渡しつつ、動物の骨や、魔獣の痕跡が無い場所を探す。

 しかし結局安全な場所などアウトドア初心者には見つけることはできず数時間が過ぎた。


「どこかにないかな~。ん……。あ、あそこ良いかも」


 目をつけたのは木の根元が空洞になっている場所だった。

 念の為落ちていた木の枝を持つと空洞に入り座り込む。

 中は狭く、横になれば足が出てしまうほど狭い。


「とりあえず今日はここで過ごそう……かな」


 それだけ言うと体を丸めて寝入ってしまった。

 はじめての外出でしかも森の中を歩くという無理が祟ったのだ。

 疲れ果ててしまっている。


 夢を見ていた。

 視界に靄がかかっているため正確にはわからないがどこか人が多い場所だ。

 魔法陣の中心に自分が寝かされていることだけはわかった。

 かすかに動く体で周りを見渡してみると、母親が天界騎士団に囚われて、その美しい翼を切り落とされる瞬間だった。


「っ! はぁはぁ。ゆ、夢? 夢だよね……。お母さんの翼が切られるなんてあるはずがない……」


 木の棒を持って外に出ると朝日が高く登っていた。


「結構寝ちゃったみたい。今日こそは街に着かなくちゃ!」


 軽く体を動かすと森を抜けるべく移動を始めた。

 すぐに腹がなり、空腹を告げる。


「お腹減ったなぁ。いつもはお母さんの朝ごはん食べるんだけど……。森なら食べるものもあるかな? あっ、でもお父さんが食べちゃいけないものも言っていたような」


 思い出そうとするが、なかなか思い出せず途方に暮れていた。


「魔獣のお肉なら食べても大丈夫って言ってたのは覚えてるけど、そこまでの魔法は使えないし……。火を起こすぐらいなら私でも」


 ゴニョゴニョと言い訳を続けながら食べ物を探しつつ歩いていく。

 その際に木の棒で木に傷を付けていくことを忘れない。

 そうしないとせっかくの安全地帯に帰れなくなってしまうのだ。


 ふっと何かが後ろを横切ったような気配を感じた。


「? 気の所為? 今なにか居たような……?」


 後ろを振り向いている間にもまた背後から気配を感じた。

 直感、本能が警告する。

 ここは危険だと。


「な、何? 何か居るの? ま、魔獣?」


 木の棒を握りしめ弾かれたかのように走り出す。

 それと同時に木の間から複数の足音が聞こえてきた。

 走りながら振り向くと、自分と同じくらい大きい魔獣が複数迫ってきていた。


「ヤダヤダヤダ! 死にたくない! 助けてお母さん、お父さん!」


 必死に走り、走り、走る。

 そして森を抜けた。


 そこは断崖絶壁の行き止まりだった。


「そ、そんな! 嫌だ! 来ないでぇ!」


 木の棒を振り回し、魔獣を威嚇する。

 多少の効果が有ったものの次第に魔獣との距離が縮まっていく。

 遂に魔獣の間合いに入ってしまい左右からフェイントを入れられ正面からの突撃に対応できなかった。

 咄嗟に木の棒を引き戻し防御する。

 しかし体格差と体重差もあり後ろへ押され足を踏み外してしまった。


「きゃああああああぁぁぁぁぁぁ!」


 落下途中に幸いなことに木が生えており体を打ったが勢いを殺せた。

 落下体制は頭からではなく、回転しながら落ちていく。

 そして崖下の森に落ちたのであった。






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