私の世界
私はリリア・スピカレット。
スターライト王国の公爵令嬢で、先日16歳になりました。
7歳年上のルカお兄様は、私にとても優しく、柔らかなミルクティーカラーの髪に似合う淡く煌めくゴールドの瞳を優しく細め、私のこの金髪と珍しいピンクの瞳を「星のように輝くプラチナブロンドと、ピンクサファイアのようなピンクの瞳」といってよく褒めてくれるけど、私にはそんな風に思えない。
私には、そんな素敵な言葉は到底似合わない。
どんなに着飾ったって、可愛くない。
スピカレット家は代々魔力が強く、魔術師団や研究者として活躍する人が多かった。
特に、リリアのルーンおばあさまはスピカレット家で初めてのムーンの加護の持ち主だった。
生前はその力を宮廷魔術師団に使い、国王陛下をはじめとした王族からの信頼が厚かった。
ルーンおばあさまはとりわけリリアに優しく、幼いリリアに魔法でいろんなことを見せてくれた。
氷で作った薔薇、炎の鳥、水のアーチ…。
リリアはそんなおばあさまが大好きだった。
ルカお兄様は、幼少期に珍しいとされるビーナスの加護の魔法が発動し両親や親族は大喜びだった。
オレンジのオーラは色濃く強く輝きを放ち、その魔力の強さに星の加護の認定をしにきた神官さんもこんな強い魔力は見たことがないと驚くほどだったとか。
国王陛下が直々にルカお兄様に面会して、将来は国の魔法団にとおっしゃってくださったほどだ。
その後に生まれた私は、瞳の色が珍しいこともありどんな星の加護があるのかとみんなから期待されていたがーーー4歳を過ぎても魔法は発動されなかった。
この国には稀に星の加護がなく、魔力を持たない人もいる。
それが私だったのだ。
魔力がないと分かっても、両親は期待はずれだとがっかりした素振りもなく、大事に可愛がって育ててくれた。
魔法が使えないことは残念だったけど、私の分の魔力もルカお兄様が持っているのかもと思うとむしろ魔力がないことも誇りに思えた。
魔力がない分、困ったことも多かったが何かある度にルカお兄様が守ってくれたので、6歳を過ぎる頃には私は侍女のメアリーが手を焼くほどおてんばで明るく活発な少女へと成長していた。
その頃は、ルカお兄様が褒めてくれた『星のように輝くプラチナブロンドとピンクサファイアのような瞳』がリリアの自慢だった。
この国では珍しいピンクの瞳も、リリアの明るく社交的な性格を持ってすれば見る人々には魅力的に映り、リリアの人形のように綺麗に整った容姿と合わせ妖精のように綺麗に思えた。
リリアが笑うと、周りにいる人々もつられて笑顔になってしまう。
リリアの周りにはいつも人が集まっていて、笑顔が溢れていた。
リリアは常にみんなの中心で、みんなの憧れの存在だった。
そう、あの日彼に出逢うまで、は。