表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
98/106

1-06

 前回までのあらすじ。

ドラゴンを倒したと思ったら人型になった。


「えええ……ドラゴンって人型になれるもんなの……?」

「高位のドラゴンは人化の術を覚えてるって話は聞いたことあるっすけど……」

「さよう、我ほどのドラゴンとなれば、人になるなど容易いことよ」


 そう言うと、フレアと名乗ったドラゴンが近づいてきて……熱っ!? まだかなり熱を持ってる俺でも熱く感じるほど体温高いぞこいつ!


「ふむふむ、お主の先程の氷雪魔法、実に見事じゃった。凍結させられるなど、四百年生きてきたが初めてじゃわ」

「そ、そりゃどうも……」

「人間にしては見事な…………むむ? お主、本当に人間か? 人間にしては妙な気配じゃが……」

「や、やだなぁ、人間に決まってるじゃないですか」


 やばい、こいつ勘が鋭い。なんとか言い逃れしないと……。


「ふむ、人間と言うにはおかしいのう。特にその背中の翼とか」

「やべっ」


 いかん、放熱フィンとして翼を出しっぱなしだった!

仕舞いたい、仕舞いたいが……熱すぎてしまったら溶けかねない。


「ふむふむ……スンスン、この血の匂い、魔力の気配……お主吸血鬼か?」


 バレテーラ。

やばい、どうやってごまかして……あ、いや、ごまかす必要あるのか?

だって、こいつドラゴンだし。人間にバレたときのような面倒事はなかろう。

……だったら隠しても仕方ないか。


「……そうだよ、俺は吸血鬼だ」

「クカカ、これは面白いのう。人間を餌にする吸血鬼が人間と組んで我を退治しようとするとは。しかも遠慮なく能力を使っているあたり、二人も知っておるのじゃろう?」

「ああ、まぁな」

「人間を仲間にして、人間の味方をする変わり者の吸血鬼か。実に興味深い」


 あ、そうっすか。それはわかったから離れてもらえませんかね? マジ熱いっす。


「まぁ、人間であろうと吸血鬼であろうと我には関係ない。ただ一つ、我を打倒せし強きものであるということが重要じゃ」

「いや、負けたって言う割には元気そうじゃないか?」

「それはこの姿になっておるからじゃ。元の姿で活動ができぬほど弱ったゆえ、こうして小さき人の身に変えて消耗を抑えておるというわけじゃな」

「つまり省エネ形態ってわけか」


 あるいは弱体化フォーム……グローイングとかブランクとかプラットとかそういう系ね。


「まぁそれはどうでもよい。さっきも言ったが重要なのは我が負け、お主が強さを証明したことじゃ」

「は、はぁ……それがなにか?」

「我の一族……というかドラゴン族には、ある掟が存在する」

「おきて」

「もしも戦いに敗れ、それでもなお生き残ったときは……自身を打倒せし強きものと子を成せ、とな」

「……子を、成せ……?」


 ええと、つまり……子供を、作れと?


「……は、はぁ!?」

「かつて我が負けた二度の勝負では、一度目は女が相手で物理的に不可能、二度目は悪魔族の男じゃったが我が人化を覚えておらず無理であった。しかし、今はこうして人化もできるし、お主は男。なんの問題もあるまい?」

「いや問題だらけだよ! やだよ初対面の相手と子作りするなんて!」

「我の容姿を見ても、か?」


 そう言うと、フレアの身体を覆う鱗が減っていく。

その分だけ柔肌が現れ……際どいところまであらわになる。

その姿は、フレアの美貌と相まって非常に扇情的だ。


「ほれ、どうじゃ? 欲情してきたじゃろ? 襲ってきてもいいんじゃぞ?」

「いえ、結構です」

「……なんと?」

「だから、結構です。相手がほしいなら他の人を当たってください」

「な……なんじゃと!? お主、それでも男か!?」


 男だよ、失礼なやつだな。

いやまぁ、たしかに扇情的ではあるんだが……絶妙に俺の好みを外れているんだよな。

背が高い、可愛いと言うより美人、年上っぽい(肉体年齢)、あとなにより胸が大きすぎる。

漫画じゃないんだから……もうちょっと現実的な大きさじゃないと。いや大きい時点で俺の好みじゃないんだが。

それでもまぁ、あと五歳くらい若ければ……うん、好みだったかもしれないね。


「ば、馬鹿な……人里に降りて男の趣味嗜好を調べ上げ、完璧に作り出した容姿だというのに……」

「いやまぁ、大半の男は好きなんじゃない? 俺が例外なだけで」

「なんでよりによってお主が例外なんじゃー!!」


 まぁ、マイノリティである自覚はあるよ。

しかし、それ以前に……俺と交わりたいなら大きな障害が二つある。


「へぇ……黙って聞いてれば……サクヤさんと子供を作りたい……?」

「なるほど……アタシらを差し置いて、随分大層な願い事じゃねぇか……」

「「ひぇっ」」


 思わずフレアと同時に悲鳴を上げてしまうほど、大きな障害……ココとニーナは恐ろしく……まるで般若のようだった。


 ……うん、まぁ、そうなんだ。この二人が黙ってるはずがないのだ。

なんてったって俺に声をかけてきた娼婦のお姉さんを一睨みで黙らせて逃げ帰らせるからな。

……いや止められなくったってやらないよ? そんな気さらさらないよ?

いやぁ、なんで二人は俺をそんなに独占しようとするんですかねー(すっとぼけ)。


 で。


「恐ろしい……人間とはかくも恐ろしい……」


 熱を物ともせずボッコボコにされたフレアがうずくまっていた。……ちょっと哀れ。


「まぁ、その、そういうわけだから別の相手を探してくれ」

「な、なんじゃなんじゃ! 二人も三人も変わらんじゃろ! ハーレムに我一人くらい加えてくれたっていいじゃろうが!」

「ああ!? ご主人はハーレムなんか作ってねぇよボケが!」

「そうっすよ! サクヤさんがそんな不誠実なことするわけ無いでしょうがこの火トカゲが!」

「ひぇっ」

「いや、あの、おふたりとも、マジそのへんでお願いします。怖いっす」


 あとココ、お前は知らんだろうけどその形容はいかん、著作権的に危ない。


「べ、別の相手を探せと言うがな、この掟を守らねば我は一族から総スカンじゃ! ここは龍助けだと思うて、な?」

「いや、そんな義務感でそういうことするのはちょっと……」

「いやなに、別に義務感だけではない。龍の姿のときはわからんかったが、お主なかなか男前じゃしな。お主となら一回と言わず二回三回でも……」

「ニーナちゃん、縛り上げてください。マグマに落としましょう」

「オーケーココ、シャドウバインド」

「まっ! 待って、いくら我でも今の姿でマグマの中に落とされたら流石に死んでしまうぞ!」

「あー、はいはいストップストップ。俺が話つけるから手を出すのはちょっと待て」


 流石に人間形態のこいつが溶けていく様は見たくないので、止めに入る。

……コイツらマジでやりかねないからな。


「……断る方向で話をつけるんすよね?」

「当たり前だろ」


 あいにくと、俺は頼まれれば誰彼構わず抱くほど性欲モンスターじゃないぞ。

いや、年齢を考えれば性欲モンスターなのが当たり前なんだろうけど……前にもいったが食欲と言うか、吸血欲のほうが強いんだよな。

そしてその対象は人間だけなわけで、ドラゴンであるフレアに対してはその欲も湧いてこない。

……なんか可哀想になってきたが、フレアに対してはなんの欲も抱けないというのが事実だ。


「そういうわけだから俺のことは諦めてくれ」

「ボロクソにも程があるぞお主!?」

「……なんか、胸が痛くなってきたんだが」

「あたしは同じこと言われたら死にますね」


 二人はちゃんと性の対象として見てるから大丈夫だよ。

……まぁでも、口説いたら「あなたのことを男性として見れないので無理です」って言われたら凹むかなぁ……ちょっとフォローしとくか。


「いや、でもほら、俺の趣味嗜好はマイノリティだから。次にお前を倒すやつはきっとだいじょうぶだって」

「どんな励まし方じゃ!」

「あ、ついでにこの山から離れてくれない? 麓の住民たちが怯えてるんだわ」

「とどめを刺しに来るでないわ!! く、くそう、覚えておれぇー!!」


 涙を拭いながら駆け出していったフレア。うーん、悪いことしちゃったかな。


「まぁいいや、帰ろうか」

「そ、そうっすね……」

「……容赦ねぇな、ご主人」


 まぁ、フレアには興味以上の感情がわかなかったからな。

ぶっちゃけどうでもいいと言うか。

しいていうなら、別のところで厄介事起こさないといいなぁ、ってくらいか。


「ご主人って結構ドライだよな」

「うーん……そうかな?」


 興味ないものにはそうかもしれない。

興味なくても可哀想だったり庇護欲をそそるもの、虐げられているものとかなら助けようと思うけど……フレアはどっちでもないしなぁ。

もしくは長い付き合いがあったり世話になったり、縁とか恩とか感謝とか友情とか、いわゆる絆があれば大切にするタイプではある。

……この二人とか。


「さぁ、帰って報告だ。追い払っただけとは言え、そこそこの金額がもらえるだろ」

「おー、新しい魔導書とかほしいんすよねぇ」

「アタシは新しい暗器とかほしいな……」


 ……俺もドライだけどこいつらも大概じゃねぇかな。




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ