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「ワイバーン……もはや全てが懐かしい」

「なに感傷に浸ってるんすかサクヤさん」


 ……そう、俺達の前に出されたのはあのワイバーンの討伐依頼だった。

ワイバーン……冒険者生活初日に偶然遭遇し、死に体になりながらなんとか倒した俺達のトラウマ。

なんせ俺は下半身食われたからな……再生したけどズボンがなくなっててココにアレを見られてしまったのは一生の恥だ。

そんなトラウマを払拭するためにも、俺達は依頼を受けた。


「うーん……ご主人とココがワイバーンごときに苦戦するなんて想像つかねぇなぁ」

「あのときは本当にクソ雑魚だったからな、俺」


 いまいち俺の話を信じてないニーナにそんな事を言いつつ、俺達は山を登る。

依頼を受けた際の話では、ワイバーンはこの山の山頂を根城にして、家畜や人を襲っているとのことだ。

普通なら数日掛けて登るような険しい山だが、もっと険しい雪山でタイムアタックをしたこともある俺達だ。

登山道具も一式揃っているし、三人とも種族柄身体能力の高いしスイスイ登っていく。


 で、目的のワイバーンを見つけたのだが。


「誰か戦ってるな」

「先客か? ギルドでは誰も受けてないって話だったが……」


 ていうか、ワイバーンに勝てる奴らがいないからよそ者だがAランクの俺たちにお鉢が回ってきたわけで。

しかし、ワイバーンの巣と思わしきくぼみを覗き込んで見れば、確かに誰かがワイバーンと戦っている。


 ……んん? あれ、ギルドで俺に絡んできたやつじゃね?


「ゴーマさん、もう逃げましょう! 俺達じゃ勝てねぇですって!!」

「馬鹿野郎! あんなガキに舐められたままでいられるか!!」


 ……あー、間違いねぇあいつだ。しかし仲間いたんだなあんなんでも。


「くそっ、どいつここいつも俺を舐めやがって!! 俺の実力を思い知らせてやる!!」


 そういって斧……いやハルバートか? を担いで突っ込んでいくゴロツキ……改めゴーマ。

ああもう、そんな直線的な攻撃じゃ反撃食らうに決まって……ああワイバーンのしっぽをふるが見事に当たってら。

うーん……あんなんでも目の前で死なれたら寝覚めが悪いしなぁ。


「よし、助けに行くぞ」

「マジっすか」

「いや、まぁご主人ならそう言うだろうなぁとは思ってたけど、マジで?」

「マジマジ。ほら、戦闘準備!」


 そう言うと俺は抜剣し、くぼみへと飛び下りた。

血液剣は使えない。奴らが見ているからな。


「先駆け一発!!」


 まずは機動力を削ぐため、俺は飛び降りた勢いのままワイバーンの飛膜に向かって切り下ろす。


「グルァ!?」

「うっし、いい手応え」


 狙い通り飛膜は大きく切り裂かれ、もう飛ぶことはできないだろう。


「んでもって次は――」

「右足はあたしがやるっすよ、バーニングジャベリン!」

「ならアタシは左足を狙うかね」


 少し遅れてやってきた二人が、それぞれ魔法と大鎌でワイバーンの足を狙って攻撃を繰り出す。

……うん、鎌なんだわ。

ニーナのやつ、カルミナ師匠のところで魔法以外にも武器の修行をやっていたようで、気がついたらナイフだけでなく大鎌まで扱えるようになっていた。

まぁ、ナイフじゃこういう大物相手のときは厳しいから、違う武器も使うのはわかるんだが……なぜ大鎌。

あれ、相当扱いづらいからね? 鎌は刃の向きの関係上剣のように振るだけじゃ突き刺さるだけで、そこからさらに引く動作をしなければ斬れない。

引かなければ斬れないはずなんだが……うん、どういうわけか振るっただけで斬れてるね。


その姿はまさに死神。頭巾で顔を隠してる上に防寒着でマントを着てるから余計雰囲気が出てる。


「おっと、いかん。ほら、お前らとっとと逃げろ。俺たちが殿を受け持つから」

「ふ、ふざけんな! 誰がお前らの助けなんか――」

「おっと危ない」


 氷血晶展開、飛んできた炎の玉を防ぐ。

ふむ、今の魔法だよな? 魔力を指向性を持って使えるとは……前のワイバーンより格上なようだ。


「ほら、いまのに反応できないようじゃ勝ち目ないぞ。さっさと逃げろ」

「ゴーマさん行きましょう! すまねぇ旦那、借りは返すぜ!」

「おーう、飯おごってくれるだけでいいぞー」

「ちくしょう、覚えてろー!!」


 仲間に引きずられるように撤退していくゴーマ一行。

よし、んじゃ誰も見てないし能力全開で――


「あべしっ!?」

「サクヤさん!?」


 ――思考が停止し、再起動する。

……どうやら、さっきの炎の玉で頭をブチ抜かれたらしい。

頭を潰されると意識が飛ぶのがなぁ……死にはしないんだけど、戦闘中は知らぬ間に状況が変化してるかもしれないのが怖い。

幸い、今回は意識を失っていたのは一瞬だったようで、状況に変化はなかった。


 ……いや、一つ変わった点があった。

それは、ワイバーンが謎の光に包まれて、球体状になっていたことだった。


「……えっ、なにあれ?」

「……まさか、進化するのか!?」


 え、進化ってあれ? 育成してると時間経過で発生して育成内容とバトルでの勝率で分岐するやつ?


「進化ってのは、魔物が一定数の生き物を殺すことで成長し、上位種族になることっす」

「なるほど、デジ○ンではなくポ○モンのほうだったか」


 Bボタン押したら進化止まらないかなぁ。いやそもそもこの世界にBボタンは存在しないんだけど。

ていうか、こいつ別に誰も殺してなくない? なんで進化してんの?


「さっき、ご主人頭ふっとばされただろ。あれでカウントされたんじゃないか?」

「マジか、経験値タンクか俺は」


 お手軽に殺せて殺すたびに経験値が入る復活する敵キャラとかレベリングに最適じゃん。吸血鬼はレベリング用種族だった……?


「まぁ、理由は置いといて……ワイバーンの上位種族っていったら、あれっすよサクヤさん」

「……まぁ、あれだろうなぁ」


 やがてワイバーンを包む光が弾け、ワイバーンが姿を表す。

……いや、もうワイバーンではない。

飛翼と一体化していた前肢は力強く大地を踏みしめ、身体も一回り大きくなっている。

ギラついた目でこちらを見据えるそれは……まさしく、ドラゴンだ。


「……グォォォオオオオオオオオオオオオオオオ!!」

「……まさかワイバーン退治がドラゴン退治になるとは」


 さてはて……いったいどうしたものか。




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