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1-06

 で、ココとコンビを組むことを決定した翌日。

俺はココとともに宿屋を出て、ギルドに向かっていた。

あ、ちなみに部屋は当然別室である。なのでR-18なことは一切ない。


「そういえばサクヤさん、吸け……アレなのに日中に出歩けるんすね」

「ああ、まぁな。両親が結構強い吸け……アレでな、その耐性が遺伝したんだ」


 人通りもそれなりにあるので、隠語を使いつつココの当たり前と言える疑問に答えていく。


 俺の家族こと望月家は代々日本で暮らしていた吸血鬼だ。

先祖を遡ると、大体鎌倉時代とかそのへんでどこからかやってきた吸血鬼によって吸血鬼に変貌し、以降は人間の血が全く混じっていないまじりっけなしの純血の吸血鬼だ。

そのせいか吸血鬼としての能力が高く、加えて吸血鬼の弱点のいくつかに耐性がある。

俺は日光と流水を渡れないという弱点に耐性があり、あとは銀に弱いのも、せいぜいが金属アレルギー程度まで抑えられている。聖水とか白木の杭とかは流石に試せていないので耐性があるかはわからない。


「やっぱ日光に耐性のある吸血……ゲフン、アレって珍しいか?」

「デイウォーカーのきゅ……アレって相当っすよ。下手したらこの街の冒険者総出で討伐に向かうことになるっす」

「そこまでか……」


 となると、やはり正体を明かすわけには行かないだろう。


「……この変身も解除できそうにないな」

「変身? サクヤさん変身してるんすか?」

「ああ、髪と瞳の色変えてるだけだけど。機会があれば見せてやるよ」


 そんな会話をしながら、俺達はちょっと寄り道をした。


「らっしゃい、何をお探しで?」

「彼に剣と鎧をお願いするっす」


 寄り道というのは、武器と防具を取り扱う店だ。


「ほう、おい坊っちゃん、どんな武器と防具がいい?」

「ぼ、坊っちゃん……え、ええと、防具は動きやすいやつがいいです。軽くて邪魔にならないやつ。武器は…………そうだな、俺の体躯でも扱えて、それでいて頑丈なのがいいですね」


 武器と防具を買いに来た理由はもちろん、このあと戦うからだ。

というのも、冒険者ギルドに登録するためには実戦形式の登録試験を通る必要があるのだ。

まぁ、ズブの素人がいきなり戦いに出ても使い物になるはずもないので、そのへんを振り分けるための試験だ。

内容としては、高位の冒険者を相手に実力を見せること。

まぁ、勝つ必要はないので気楽とは言える。



 そんなわけで戦うための準備が必要なのだが……そもそも俺は血液で作った剣――血液剣を主武装としているので、ぶっちゃけ剣はあんまり必要ない。

とはいえ人前で血液操作を使うわけには行かないので、カモフラージュ兼人前での武器としてオーダーしたのだ。


 そんな俺のオーダーに、あまり愛想のいいとは言えない店主のおっさんが唸る。


「ふうむ、動きやすい鎧ねぇ……革鎧でいいか? 胸当てと手甲、足甲だけならそこまで邪魔にならねぇだろ。坊っちゃんの体格なら……これなんかどうだ?」


 そう言って店主のおっさんが渡してきた鎧を身につける。……うむ、ジャストフィットである。

目測でこれか……なかなかすごいぞこの人。


「ええ、ピッタリです」

「よし、そんじゃ剣か。剣は……頑丈なやつっつってもなぁ、色々あるぞ?」

「えーっと……そうだなぁ」


 視線をさまよわせ、ふと一振りの剣に目が行く。

ちょうど昨日、城で暴れたときに作った血液剣と同じくらいの大きさだ。


「あの剣くらいの長さで、とにかく頑丈なやつで」

「あれくらいっていうと両手剣になるな。で、頑丈なやつか……あまり丈夫だと使ってる素材の都合上重くなるぞ?」

「大丈夫です、俺腕力は結構あるんで」


 これは本当。吸血鬼なので素の腕力……というか筋力は結構ある。

鍛え抜かれたアスリートくらいはあるのではなかろうか。比べたことないけど。


「ふうん、そのナリでねぇ……まぁいいや、心当たりのある剣持ってきてやる」


 そういって店主が奥へ引っ込んだ。


「で、なんで頑丈な剣なんすか?」

「そりゃあお前、俺の腕力で振ったら並の剣じゃ折れるからな」


 そう、俺は素の状態でかなりの腕力がある。

そこに戦闘時には魔力による強化が入るのだ。

そんな俺が雑に剣を扱ったら、並の強度じゃまず壊れる。


「……雑に扱わないって選択肢はないんすかね」

「ないっていうか、できない。なんせ俺、剣に関しては素人だし」


 某明治剣客浪漫譚のおかげで基本となる攻撃は九種類あるってことは知ってるが、その程度だ。

そんな俺が、マトモに剣を扱えるはずがない。


「……うーん、なんかいっそ、剣より棍棒とかハンマーとかの打撃武器のほうがいい気がしてきたぞ」

「いや、でもサクヤさん血液操作で作るのは剣メインって話でしたよね? だったら剣じゃないと、傷口から使ってる武器が違うって疑惑が浮かぶと思うんすけど」


 そういえばそうだった。これはあくまで偽装用の武器であって、メインで使うものではなかった。

強いて言うなら実戦にも耐えうるサブウェポンがほしいわけだし、やはりココは剣がマストか。


「おう、持ってきたぜ。このへんが強度の高い剣だ」

「ほう、どれどれ」


 とか考えていると店主がいくつかの剣を持って戻ってきたので、手にとって見てみる。


「素振りしても?」

「ああ、店のモノ壊さなきゃな」


 許可をもらったので軽く素振りしてみる。

しかし、どうにもしっくり来るものがない。

なんとなく、あ、これ全力で叩きつけたら折れるなってのが振ってみるとわかるのだ。

うーん、これはもう血液剣を変更してでも打撃系武器に変更すべきか……。


「………んお?」


 そう思って最後の一振りを手にとった瞬間、なんというか…………こう、しっくりきた。

そのまま持ち上げ……重いなおい! 片手じゃ無理だ、両手で持ち上げる。

とりあえずそのまま素振りしてみる。……やっぱり重い。

大体強化なしの俺の腕力でギリギリ、強化すれば難なく使える程度の重さだ。


 つまりは、十分に使えるってところだ。


「ほー……その細腕でそいつを持ち上げるとは大したもんだ」

「へぇ、これ扱える人いなかったんですか?」

「扱えるやつはいたけど、他の武器に流れていったな。なんせ特徴が頑丈なだけ、だったらそんなものよりもっと軽くて扱いやすいものにするだろ」

「なるほど」


 とはいえ、俺としては願ったり叶ったりな武器だ。


「ではこの剣と、皮鎧一式で」

「……俺の話聞いてたか? マジでこの剣にするのか?」

「ええ、なんというかこう……ビビッと来たんで」

「ビビッと…………まぁ、そういう直感は大事だからな。俺がとやかく言う話でもねぇか」


 そんなわけで俺は新しい相棒である無銘の頑丈な剣を手に入れ、ギルドへと向かうのだった。





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