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1-13

 やせい の ワイバーン が あらわれた!

サクヤ は どうする?

→たたかう

 どうぐ

 にげる


「こんなもん逃げる一択だろ!!」

「激しく同意っす!!」


 全長およそ十五メートル以上ある怪獣相手に戦えるわけがない。

というわけで逃走。


 しかしこのまま逃げても、俺にまとわりついた血の匂いでどこまでも追っかけて来るだろう。

街に行けばワイバーン相手でも戦える高位の冒険者がいるかも知れないが……飛べる相手と地上を走るしかない俺達、追いつかれるのは目に見えている。


 なので、囮を使う。


「くっ……さらば1万ソル!」

「ああ……あたしたちのお金が……」


 非常に、ひっじょーに惜しいが、ワイバーンへの囮として、狂い猪の死体をぶん投げた。

ていうか当たり前だがメッチャ重い。魔力で強化してようやく投げられた。

そして当然のように投げたのは換金分である。食欲には勝てんよ。


「とりあえず今のうちに逃げ……」


 ……ごくん


「「……ごくん?」」


 肉を貪ってるにしては奇妙な音に、思わず振り返ってしまう。


 そこには、蛇のように大口を開けて猪を丸呑みしているワイバーンの姿があった。


「ゲフ…………グルアアアアアアアアアアア!!」

「ぎゃああああああ!! なんでお前見た目トカゲなのに蛇みたいな口してんだよ!!」

「ずるいっす!! いいとこ取りなんてずるいっす!!」


 いかん、あのデカさの死体も丸呑みとなると、残ったやつを囮にしても全然時間が稼げない。

逃げるのは無理、囮は使えない。

となると……。


「やむを得ん、戦うぞココ!」

「正気っすか!? 相手はワイバーンっすよ!?」

「狂ってたらまだマシだったんだがなぁ…………逃げ切れねぇ囮も通じねぇとなったら戦うほうが生き残る確率が高い! 諦めて腹括れ!」

「いやー!! 死ぬ、死ぬっすよ戦っても!! 死にたくない、死にたくないっすー!!」


 あー、半狂乱になったココをなだめようとしたら、もうワイバーンが追いついてきやがった。

やむを得ん、俺だけでも戦うしかない。


 すぐさま親指を噛み切っていつもの血液剣を作り出し、ワイバーンに斬りかかる。

さっきまで使ってた日本刀型の血液剣のノウハウを取り入れ、切れ味も向上させた一振りだ。

そして、狙うは他より脆弱そうな眼球!


「セアッ!!」


 全力に更に強化を乗せ、上段から振り抜く。


 「…………え?」


 しかし、俺の血液剣は、ポキンと中程から折れた。


「ウッソだろ!? ……ちょっ!?」


 そして、隙だらけの俺にワイバーンが食らいつこうとする。

いかん、流石に上半身を食いちぎられたら再生できるかどうか……ていうか上半身側から再生したら詰む。


「ええい! こうなったら破れかぶれっす!! フレイムボルト!!」


 ココの叫びが聞こえたと思ったら、太く鋭い矢のような炎が飛んできた。


「グルオオオオオオオオオ!!」


 どうやら俺が狙ったのとは反対の目にあたったらしく、ワイバーンが苦悶の声を上げ、間一髪のところで助かった。


「すまんココ、助かった!」

「サクヤさん、ワイバーンの鱗は金属鎧並かそれ以上の硬さっす! 並の剣じゃ抜けないっすよ!!」

「ああ、よーくわかったよ!」


 さっき剣が折れたのは単純だ。目に至るまでの、まぶたのところの鱗に引っかかって折れたのだ。

突きか水平に斬ったなら結果は変わったかもしれないが……なんにせよ皮が薄いはずのまぶたですらこの硬度、俺の作る剣じゃ太刀打ちできないな。


「グルルル…………」


 そしてワイバーンはと言えば、片目を潰された怒りでより一層こちらへの殺意を高めている。

……もうこれ、倒すより両目潰してその間に逃げたほうがいいかも。いや匂いで追われるか。

ともかく、今俺がすべきはワイバーンのターゲットがココに移らないよう注意をひくことだ。


「まずは槍を作って!」


 手元に残った血液剣を槍に作り変える。

それも投擲に適したように、螺旋を描いてだ。


「そして……ダーツの時間だ!!」


 投げるのは矢じゃなくて槍だが、的あてには違いあるまい。

正直、俺の投擲技能はあまりよろしくないのだが……あの槍は手元を離れてもある程度血液操作で制御できる。

血液操作による軌道補正により、狙いに違わずココが焼き払った右目に着弾した。


「グオオオオオオオオオオオオ!!」

「うっせぇ!! いちいち声でかいんだよバカ!!」


 挑発半分本音半分で叫びつつ、ちょろちょろと鬱陶しさを演出しつつ逃げ回る。

うん、狙い通り俺へターゲットが移った。


「とりあえず、剣が通じないなら……」


 イメージするのは、昨日の悪人面なあの人の持ってた戦斧だ。

巨大で、重く、そして頑丈に。

硬い鱗すら叩き割れるほどの重量と、打ち合っても負けない頑強さ。

これを強くイメージし、再度指を噛み切り、血液操作で作り上げる。


「……血液戦斧ってとこか」


 出来上がったのは、俺の身長よりでかい斧だった。

持ってみるが、かなり重い……筋力を強化しててもなお重い。


「だが……やったらぁぁぁあああああ!!」


 鈍重な動きをする俺に向かって、腕の代わりに翼を振り回してくる。

が、遅い!

俺は全身を魔力で強化し、クッソ重い斧を担ぐと、全力で地を蹴った。

ワイバーンの足元を経由して後方へ周り、更に尻尾に飛び乗ってから背中を駆け抜け、そしてその背を蹴る!

本来空中に飛ぶのは大きな隙を晒すことになるが、ワイバーンの腕も頭も尻尾も、骨格から想定される可動域から考えてこちらには届かない。

そして得た高さ=位置エネルギー、さらに俺の腕力と斧そのものの重さそして重力のコンボだ!


「さぁ物理の偉大さを噛み締めて死ね!!」


 狙うは首、それも蛇のように細かく連なっているであろう関節だ。

その素っ首、もらった!!








 ……しかしまぁ、世の中そううまく行くことなどありはせず。

何が言いたいのかと言うと、ワイバーンは蛇でもありえないような頭の動きで、グリン! と俺の方を向いた。


「なっ………!?」

「…………グオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!」


 そうして放ったのは、咆哮だ。

ただの咆哮じゃない、音がもはや衝撃波となったような、とんでもない咆哮だ。

ああ、なるほど、某狩りゲーでハンターがなぜ咆哮程度でよろめくのか不思議だったが、こうして食らってみてよくわかった。


 音とは振動であり、その振動が増幅されたなら、それは衝撃波となる。

そんなものをマトモに食らった俺は、思い切り吹き飛ばされていた。


「――――!! ―――――――!!」


 ココがなにか言っているが聞き取れない。どうやら鼓膜が破れているらしい。

それどころか三半規管にもダメージが来ているようで、ふっ飛ばされていることを加味しても平衡感覚が狂っていて上下左右の感覚がつかめない。


「がはっ!?」


 そんな俺に何かがものすごい速度で叩きつけられた。

これは…………尻尾か? 棘のようなものが突き刺さって、何かが流し込まれた。

そして俺は叩きつけられた勢いのままに吹き飛び、大木に叩きつけられて止まった。


「ごふっ………ひゅー……ひゅー……」


 呼吸音がおかしい、肺に穴が空いているみたいだ。

骨も何本も折れていて、内臓に突き刺さっている。おかげでさっきから吐血が止まらない。

加えて……これは毒か? 全身がしびれてきて感覚がなくなっている。


…………これ、ちょっとまずいかも。







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