87話 オペレーションアタック
絶望させない、クローザーへ向けて強く宣言したヒロム。そのヒロムの言葉を受けたクローザーは闇を纏うと彼から受けた攻撃による僅かなダメージを再生させ、フレイに破壊された剣を復活させると手に持ち構えてヒロムの言葉に異論を述べる。
「絶望させない、と言ったか?
オマエの前にいるこの我を生み出したのは絶望の果てにある未来が生み出したオマエ自身だ。そのオマエ自身がいるこの中でオマエは絶望することを否定するのか?」
「そうだ。オマエらが絶望を招くのならオレは希望のある未来を掴む。そのためにオレはこの力を使う」
「笑止……希望、絶望というのはオマエたち人間が生み出した感情の末路だ。その末路をオマエは根底から覆すのか?」
「オレたち人間が生み出したものならそれは変えられる。
感情とかそんなの関係ない……この先にある未来を変えられるのならオレは迷いはしない」
「ならば戦争だ……人間!!
我にその儚き幻想が通じるか試してみろ!!」
クローザーが剣を振るとクローザーが纏う闇の一部がいくつかに分かれるように敵の体から離れ、クローザーの体から分離した闇はクリーチャーへと変化する。
現れたクリーチャー、そのクリーチャーは人に近い骨格のクローザーとは異なりその名に相応しいような獣のような見た目をしている。
戦争、そう口にしたクローザーは剣を掲げるとクリーチャーを走らせ、クリーチャーが走り出すとヒロムを守ろうとフレイたちも動き出す。
精霊とクリーチャー、2つの存在がぶつかり合うとクローザーは剣を構えた状態でヒロムに接近して剣撃を放とうとするが、ヒロムは左手首の白銀のブレスレットを藍色に光らせると盾を出現させて剣を防ぎ、剣を止めた盾で押し返すとヒロムはランスを出現させて装備してクローザーを穿とうと攻撃を放つ。
「はぁっ!!」
ヒロムの一撃はクローザーに命中して敵を押し返すがダメージを与えるまでには到らなかったが、ヒロムがランスと盾を投げ捨てると藍色の稲妻を纏った精霊・シェリーが現れて盾とランスを回収して構え、構えたランスに藍色の稲妻を纏わせるとシェリーはクローザーに連続で突きを放ってさらに吹き飛ばす。
だがそれでもクローザーへダメージを与えることは出来ていない。 ヒロムはクローザーを追い詰めようと右手首の白銀のブレスレットを水色に光らせるとライフルを出現させ、出現させたライフルを手に持つと構えて狙いを定め、無数の光弾を撃ち放っていく。
「シューティング・ミーティア!!」
放たれた無数の光弾は流星群のようになってクローザーへ襲いかかるが、クローザーは精霊を迎え撃とうとするクリーチャーの1体を自身のもとへ引き寄せるとそれを盾にして防ぎ、クリーチャーを見殺しにしたクローザーは剣に闇を強く纏わせると巨大な斬撃を飛ばしてヒロムを倒そうとする。
「……セレクトライズ、《エンブラス》+《ヴォイド》。
ツインセレクトシュート」
だがヒロムはそれを受けるつもりなどない。ライフルを手放すと右手首の白銀のブレスレットを緋色に光らせると焔を纏いし剣を出現させ、さらに左手首のブレスレットを藍色に光らせて弓を出現させて左手に持つと焔を纏いし剣を弓にセットして竜巻を纏わせながら射ち放ってクローザーが放つ斬撃を破壊してしまう。
敵の攻撃を破壊した剣が勢いを失うと精霊・ステラが現れて剣を手にしてクローザーへ攻撃を仕掛け、ヒロムが弓を手放すと精霊・セレナが現れ、さらに先程ヒロムが手放したライフルのもとへ精霊・ティアーユが現れてそれぞれが弓とライフルを手に持つとフレイたちを援護するように攻撃を放っていく。
セレナとティアーユの援護によりクリーチャーが全滅し、フレイたちはクローザーを倒そうと一斉に襲いかかるもクローザーは一瞬で姿を消すとヒロムに接近する。
「……セレクトライズ、《ライジング》+《リベリオン》」
クローザーが現れるとヒロムは琥珀色と薄紫色の光を放ちながら右手にガントレット、左手に爪のついたグローブをつけるとクローザーを倒そうと格闘術を披露していく。
両手を武装したヒロムによる近接攻撃を前にしてクローザーは剣で防ぎ止めるが、ヒロムの攻撃を止めていると彼の後方に杖が現れて精霊・アリシアが出現して杖を手に取るとユリナたちを警護するセラと共にクローザーの足下に魔法陣を出現させて動きを封じる。
「!?」
アリシアとセラの一手で動きを封じられたクローザーがそれにより気が逸れてしまい、それを逃さまいとヒロムは琥珀色の稲妻と薄紫色の稲妻を纏いながら拳撃を放って怯ませ、両手の武器を解除すると精霊・マリアとフラムを出現させる。マリアの両手にガントレット、フラムの両手に爪のついたグローブを装備させると2人と同時に一撃を放ってクローザーを吹き飛ばす。
「見せてやる、これがオレの……オレたちの思いの力だ!!」
ヒロムは白銀の稲妻を強く纏うと両手の白銀のブレスレットを金、紫、琥珀、薄紫、青、赤、水、藍、緋、瑠璃、緑、黒、白、桃と14色の光を発させると白銀の稲妻とともに光を発させた色と同じ14色の稲妻を纏いながら力を高め、フレイたち14人の精霊もそれに合わせるかのようにそれぞれが持つ色の稲妻を武器に強く纏わせると構える。
「セレクトライズ……オールオーバーソウル!!
受けてみろ……これがオレたちの力だ!!」
ヒロムが叫ぶとフレイたちが稲妻とともに渾身の一撃を放ち、フレイたちの攻撃がクローザーに命中するとヒロムは白銀の稲妻とともに14色の稲妻を右手に収束させるとクローザーへ接近して渾身の一撃を叩き込んで殴り飛ばす。
ヒロムたちの攻撃を受けたクローザー。ソラの炎を吸収したあの力を使えないのか防ぐことなく受けており、ヒロムの一撃を受けて吹き飛ばされて倒れ……ることなく耐えると吹き飛ばされた際の勢を殺して構え直す。
「なっ……」
「これが希望の力……なるほど、くだらぬ力だ。ふんっ!!」
クローザーが目を強く光らせると周囲に闇が広がり、広がった闇はフレイたちに迫ると彼女たちにまとわりついて彼女たちが纏う稲妻を魔力に変えて吸収していく。
「「「あぁぁぁあ!!」」」
「フレイ!!ラミア!!
オマエら!!」
他愛もない、とクローザーは剣を天にかざすと広げた闇を自身の中に取り込み、闇にまとわりつかれ力を吸収されたフレイたちは膝をついてしまう。
「ほぅ、我の力を受けても尽きぬか」
「オマエ……どうして倒れない!?」
「……我の力を勘違いしたな、人間。
我は絶望魔人、心に微かな絶望を抱けば我の糧となるのだ。精霊とて例外ではない。オマエが力を合わせて挑めば我を倒せると考えていたのに結果は異なり、それにより精霊たちは己の力の無さを痛感して僅かな絶望心を抱いてしまった」
「絶望を糧に……!?」
「そしてオマエの心にも僅かな絶望は宿った。
これで何をしても我には届かなくなった」
「しゃらくせぇ!!」
ヒロムは白銀の稲妻を強く纏うとクローザーへ殴りかかるが、クローザーはヒロムの拳を掴み止めると体のクリスタルのようなものを光らせながら白銀の稲妻を吸収してしまう。
稲妻を吸収されてもヒロムは諦めずに攻撃を仕掛けるもクローザーはヒロムを殴ってひるませた後蹴り飛ばし、蹴り飛ばされたヒロムは倒れまいと立ち上がるとクローザーを睨む。
まだ諦めていない、ヒロムの目を見たクローザーがそれを感じているとヒロムは白銀の稲妻を纏い直して呼吸を整える。
そして……
「まだ手はある……オレに力を貸せ、《レディアント》!!」




