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レディアント・ロード 2nd season  作者: hygirl
異痛命動編
83/1085

83話 想定外


 ソラの前にペインが現れた頃……

 

 ガイは糸魔を前にして折れることなく全てを斬るとされる霊刀《折神》に自身の能力《修羅》の蒼い炎を纏わせて一撃を放とうとしていた。

 

 ガイと対峙する糸魔は体中ボロボロで、その状態から察するにガイを相手に苦戦を強いられ、ガイの方は優勢にある中でトドメをさせようとしているのだろう。

 

「くっ、くそ……!!」

 

「相手が悪かったな。ナギト相手ならオマエもまともに戦えたかもしれないが……オレが相手ならオマエが手出し出来ないのは仕方ない」

 

「くそ……オレはビースト様より力を授かった選ばれた人間!!

オマエみたいな人間如きに……」

 

「そうか、なら……終わらせてやる」

 

 糸魔の言葉に耳を傾ける気のないガイは静かに《折神》を振り、ガイの手により振られた《折神》は糸魔の気づけぬ速度で一閃を放って敵を真っ二つに斬ってしまう。

ガイの一撃を受けて真っ二つにされた糸魔は斬られたことに気づくことなく《修羅》の蒼い炎に飲まれて消滅してしまう。

 

 糸魔が消えるとガイは蒼い炎を消し、一息つくと《折神》をも蒼い炎に変えて消してしまう。

 

「……苦戦を強いられるような相手じゃないからな。

力に溺れるようなヤツには負けないんだよオレは」


 さて、とガイは糸魔を倒した今次はどうするべきかを考える。

 

「ヒロムの事だから学校のことを気にしてオレらをセラの現術とアリシアの星の力で生み出した別空間に飛ばしてくれたみたいだが……肝心の帰りの移動方法を聞いてなかったな」

(こういうパターンは敵の罠に嵌って送り込まれるのがお約束なのが多いが今回はヒロムに送られたわけだしヒロムが元に戻すってのが1番の早い方法……だけどそのヒロムはナギトと元の世界にいる。こっちの戦況を把握する術を持ち合わせてるならヒロムが元に戻すのを待つ他ないが敵の出方次第では戻す間もなくヒロムが戦闘になる可能性もある)

 

「……となれば幻術とも虚構ともとれるこの空間にヒロムでなくとも干渉出来る人間に頼るしかないな」

「ってなるとオレの出番じゃん?」

 

 ガイがヒロムがいる場所に戻るための方法を考えていると彼の前に門のようなものが現れ、現れたそれは大きく開いていく。大きく開いた門のようなものが何か分からぬのにガイは落ち着いており、そんなガイの前に門のようなものの向こう側からイクトがやって来て姿を現す。

 

「よっ」

 

「まぁ、現実と虚構を統べる《死獄》の力を持つイクトに頼るのがセオリーだよな」


「へへっ、嬉しいね。そうやって頼りにしてくれるのは」

 

「……で、シオンとソラは?

まだアイツらは戦闘中か?」

 

「多分ね。オレも今さっき終わったところでさ。

大将がタイミング見計らって戻してくれるか不安だから皆のところに行ってオレの力で無理矢理にでも戻ろうと思って空間と空間を移動しようとしたらここでの戦いが終わってガイの反応だけになったからここに来たって感じだな」

 

「そうか。シオンの相手にしていた乱魔とかいうのはともかくソラの相手にしてた剛魔ってのはそれほど強そうには思えなかったけどな」

「そうでも無いと思うよ」

 

 イクトによる状況報告を受けたガイはソラの相手に選ばれた剛魔について私見による考察をした上での意見を口にするが、イクトはそんなガイの言葉に対して冷静に言うとここに来るまでに感じたものを話していく。

 

「さっき言ったけどオレは皆を大将が戻さなくても戻れるように動こうとしてた。ガイのいるここに来る前に気配を察知しようとしたんだけど……ソラがいるであろう空間に干渉出来なかったんだ」

 

「どういう事だ?」

 

「空間と空間を跨いで気配を探ったから確定ではないんだけど、この空間とは別で1つは激しい戦闘が繰り広げられてる感じでそこからはシオンの気配が探れた。で、ソラのいるはずの空間の方からは……妙な気配がしたと同時にオレの方から干渉出来なくなってさ」

 

「オマエが干渉出来ないならヒロムが何かしたか剛魔ってのがすごい力を隠してたかの二択か。シオンは放置してても大丈夫だろうが、ソラのほうは心配だな」

 

「うん、だよね。それに……気のせいならいいんだけど、嫌な予感がするんだ」

 

「嫌な予感?」

 

「……今までならこの空間を作れる大将か干渉出来るオレにしか空間の出入りは無理だと思えた。けど、昨日の件でハッキリ下ことのせいで気持ちが落ち着かなくてさ」

 

「……ペインか」

 

「別世界の大将って話が確定事項なら何らかの方法で干渉出来てもおかしくないと思うんだ。大将を狙うアイツなら……」


「ヒロムを追い詰めるためにオレたちを狙ってもおかしくは……」


 イクトの言葉を受けたガイの言葉を遮るように彼らの前の空間が大きく歪み、2人の体は空間の歪みの中へと吸い込まれていく。

 

「しまっ……」

「ペイン……!!すでにヤツは……」 

 

 

 

******

 

 さて、とペインはソラに何も仕込んでないと伝えるかのように手の平を見せながら何かを語ろうとするが、ペインを前にしてソラは《ヒート・マグナム》を構えると銃口をペインに向ける。

 

「……戦うつもりはないと話したはずだが?」

 

「その手には乗らない。オマエのことだからそうやって油断させてオレを殺すんだろ?ヒロムにそっくりなのは顔だけじゃなくて一手二手先を読んで動こうとするその余裕もそっくりみたいだな」

 

「……心外だな相馬ソラ。オレはオマエと雨月ガイのどちらかならまともに話せると思ったからこうして現れたのに……敵への警戒心は感心するが落ち着いて状況を見極めろ」

 

「オレは落ち着いてる。だからこそオマエに武器を向けてるんだよ」

 

「そうか……なら証明するしかないな」

 

 ソラの言葉と彼の行動を前にしてペインはため息をつくと今いるこの空間を大きく歪ませる。ペインが何かする、ソラはそれを理解して《ヒート・マグナム》の引き金を引こうとするが空間の歪みによる影響なのか身体が言うことを聞かない。

 

「なっ……体が……」

 

「大人しくしてろ」

 

 身体が動かぬ中ペインに言われるがままに見ているしかできないソラは屈辱感を味わせられたような気分になるが、そんな気分の中にあるソラの気持ちなど無視するように空間の歪みが戻ると景色が変わっていた。

 

 ソラとペイン、空間の歪みが収まると先程までいなかったはずのシオンと《魔柱》の1人である乱魔がいた。

 

「シオン!?」

 

「あ?何でオマエが……ってそいつは!?」

 

「ペイン……何でオマエがここにいる?」

 

 シオンがいることにソラが驚き、ソラが現れたこととペインを見たことで驚くシオンに対して乱魔はペインを見るなり不機嫌そうな顔で睨みながら闇を纏う。

 

「何の真似だ?これはオレたち《魔柱》がビースト様より命じられた作戦だぞ?余所者風情のオマエがここにいていいわけねぇんだぞ?」

 

「余所者、か。オマエの考えは悪くないな」

 

「テメェ……ビースト様の話通り気に入らねぇ野郎だ。オレは今オレの力で獲物を殺して喰らう所なんだ。邪魔するならオマエも……がっ!?」

 

 ペインの登場に終始機嫌を悪くする乱魔。その乱魔が自らの戦いを邪魔するのなら容赦しないとでも忠告しようとした瞬間、乱魔の体が無数の黒炎の剣に貫かれていく。

 

 何が起きたか分かっていない乱魔。そんな乱魔のもとへと音も立てずにペインは近づくと右手に黒炎の剣を装備すると振り上げる。

 

「テメェ……まさか……」

 

「オマエの存在が邪魔だ。悪いが……消えろ」

 

 ペインは躊躇うことなく乱魔に向けて黒炎の剣を振り下ろし、振り下ろされた剣は乱魔を縦に両断すると続けて炎で焼き消してしまう。

 

 ペインに斬られた乱魔が炎に焼かれて消えるその光景を目の当たりにしたソラとシオンは驚きを隠せぬ顔でペインを見ており、2人がペインに驚いていると空間がまた歪み始めてそこからガイとイクトが勢いよく放り出される。

 

「うわっ!!」

「いでっ!!」

 

「ガイ!?イクト!?」

 

「何がどうなって……」

 

「さて、役者は揃ったな」

 

 ペインの声を聞くなりガイとイクトは彼の存在に気づき、ソラたち4人が警戒する中ペインは言葉を発する。

 

「ようやく語れる……この空間に導かれたオマエらとな」

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