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レディアント・ロード 2nd season  作者: hygirl
異痛命動編
81/1085

81話 風の成長


「魔柱が1人、静魔。

敵対戦力を排除する」

 

「やれるものならやってみろよ」

 

 静魔を倒すべくヒロムとユリナ、サクラや飛天たち幼子、そして姫城学園の生徒たちがちゅうもくする中でナギトは魔力を纏うと走り出し、走り出したナギトは魔力を強く纏うと距離を詰めて蹴りを放つ。が、ナギトが蹴りを放つと静魔は目を閉じてゆっくりと動くとナギトの蹴りを回避してしまった。

 

「読めてるよ」

 

 ゆっくりとナギトの蹴りを回避した静魔に対してナギトは蹴りを放った際の勢いを利用するように回転すると再度蹴りを放って静魔を襲おうとするが、静魔は目を閉じたままナギトの蹴りを回避すると彼に向けて言う。

 

「読めているのはこちらも同じ。むしろ私にはキミの動きが手に取るように分かる」

 

「目を閉じたままでも分かるとか適当……じゃないよね?」

 

「どう思うかはキミの自由だ。だがキミが私を倒すことは不可能だと言っておこう」

 

「それは試さなきゃ分からないよね?」

 

「……試さなくとも分かる」

 

 静魔の言葉にナギトは魔力を強く纏って攻撃しようとするが、静魔は魔力を纏うナギトの体に左手を添えると流れるような動きで彼を投げ飛ばしてしまう。

 

 投げ飛ばされたナギトは受け身も取れずに倒れてしまい、慌てて立ち上がったナギトは魔力を足に集めて攻撃を放つ用意をする。未だに目を閉じたままの静魔、その静魔にナギトは攻撃を仕掛けようとするが、ヒロムはナギトを止めるかのように話しかける。

 

「ナギト、止まれ」

 

「え?なんで?」

 

「今のまま攻撃を放っても避けられるだけだ。冷静になれてないとヤツを倒せないぞ」

 

「倒すなら仕掛けなきゃ……」

 

「ナギト、視覚に頼るな。感じろ」

 

「……!!

そういうことなら……」

 

 ヒロムの一言を受けたナギトは何かを理解したのか頷くと深呼吸をし、深呼吸をしたナギトは身に纏う魔力を消してしまう。

 

 戦意喪失、そう見えてしまうナギトの行為に守られる立場にある生徒たちが不安を感じる中、静魔は目を閉じたままでありながらも驚いたような反応を見せる。


「ほぅ……血の気が盛んなタイプか好戦的で知恵のないタイプと思っていたのだが、思ったより冷静になれるタイプなようだ」

 

「……それ挑発のつもり?」

 

「そんなつもりは無い。私なりの評価だよ。

キミは私を前にして冷静になれた。乱魔たちですら教えなければ頭ごなしに攻めるしか出来なかったのだが……姫神ヒロムの一言が大きかったか?」

 

「かもね。おかげで見えたよ……アンタのノールックスタイルのひみつが」

 

 静魔の言葉に聞く耳すら持たないナギトはヒロムの言葉のおかげか落ち着いた様子を見せており、その結果ナギトは静魔について理解していた。一見すると何が起きてるか分からないユリナとサクラ、2人が理解出来ていないと察したヒロムはナギトにも聞こえるようにユリナとサクラに静魔について……静魔がナギトにしたことについて話していく。

 

「静魔、ヤツは感知タイプだ」

 

「感知タイプ?」

「それは何なのヒロム?」

 

「文字通り感じて知るタイプだ。ヤツは敵の気配などをどの能力者よりも過敏に感じ取ることが可能でそれを利用した動きをする。とくにナギトの攻撃を避けたあの動きはヤツの能力とも言える力が働いている」

 

「どんな力なの?」

 

「おそらくヤツは敵対する相手の魔力の動きを読み取る力を持っている。さっきのナギトの攻撃はその全てが魔力を纏った状態で放たれていた。それをヤツは視認せずに避けているから間違いはない」

 

「でもヒロムくんの《流動術》のように気配や感覚で避けたとかは……」

「そう、ユリナの言う通りだよ。

オレの《流動術》に近いことをヤツは他人の魔力を利用して行っている」

 

「それは少し違う」

 

 ヒロムがユリナとサクラに解説していると静魔はそれを中断させるように言葉を発し、その上で静魔はヒロムすら想定していないであろうことを話していく。

 

「我々魔柱は姫神ヒロム、キミの力を再現する事を視野に入れて我らが主であるビースト様によって生み出された人造の魔人。人でありながら人としての生を奪われし我らに名誉を与えてくださったのだ」

 

「……魔人の量産か。人間嫌いのあのビーストが自らが嫌う人間を生かすような真似をするとはな」

 

「我らはあの方の実験台に過ぎない。姫神ヒロムの力を魔人に適用出来れば魔人の世界は実現に動く。そのために我らが選ばれた」

 

「……それって捨て駒ってことだよね?」

 

 自らがビーストによって魔人の力を与えられた人間だと明かす静魔にナギトは呆れた顔で尋ね、ナギトの言葉を受けた静魔は目を開けるなりナギトに殺意を向けながら冷たく告げた。

 

「捨て駒などとふざけたことを言うなよ人間。オマエらのような人間に代わって我らが魔人が世界を掌握して全てを管理する。この世界が如何に愚かなものかを思い知らせ、真に世界を手にするのに相応しいのが誰なのかをハッキリさせるのがビースト様の理想郷なのだ」

 

「理想郷?夢物語を語るならお好きにどうぞ。

でも、教えてあげるよ。挫折しない人間は強くなれない、そんな薄い理想のために戦うのなら尚更強くなれないよ」

 

「貴様……!!

ビースト様の思いを侮辱するなどゆるさんぞ!!」

 

 ナギトの言葉を受けた静魔は全身から闇を強く放出すると右腕を異形のものへ変化させ、変化したその腕は鋭い爪を有していく。腕を変化させた静魔はナギトを殺そうと迫っていき、静魔が迫ってくるとナギトは深呼吸をして心をさらに落ち着かせると静魔に告げた。

 

「別に許されたいとかはないけど……感謝はしてるよ。

アンタのおかげで完成したから。オレの……《流動術》が」

 

「ほざけ!!」

 

 先程までの落ち着いた口調から一転して声を荒らげる静魔は右腕の鋭い爪でナギトを殺そうと攻撃を放つが、ナギトは別段何かをするでもなく数歩横にズレるように動くと静魔の攻撃を簡単に避けてしまう。

 

「!!」

 

「ありがとう、教えてくれて」

 

 ナギトは静魔に礼を言うと敵の顔に蹴りを食らわせ、さらに連続で膝蹴りを叩き込むと敵を怯ませ休むことなく踵落としを食らわせる。

 

 ナギトの攻撃を全て受けた静魔はそれにより負傷するも左腕をも変貌させると両腕の爪でナギトを引き裂こうと連続で攻撃を放つ。だが、ナギトは落ち着いた様子でその全ての攻撃を避けると素早い蹴りを放って静魔の爪を砕き壊し、静魔の爪を砕いたナギトは風を足に纏わせると強力な一撃を叩き込んで吹き飛ばしてしまう。

 

「ぐぁっ!!」

 

「今のオレの技術じゃ天才の編み出した技は完全には会得できない。だからアンタの力を真似た。アンタが魔力を利用するならオレは自分の能力《風》の力を最大で利用して周囲の風を支配して全てを読むことにした」

 

「そんなこと……人間如きに!!」

 

「出来るんだよ。オレは……姫神ヒロムの弟子だからね」

 

「ふざけるなぁぁあ!!」

 

 吹き飛ばされた静魔が叫びながら立ち上がるとナギトは風を強く纏いながら高く飛び、風を纏いながら飛ぶナギトは体を勢いよく回転させて竜巻を自身の前に生み出すと身に纏う風を右足に集約させて蹴りを放つ。

 

「受けろ……テンペストブレード!!」

 

 風を集約させた右足で竜巻を蹴ると竜巻は乱回転する風の玉となって静魔に向けて放たれ、放たれた風の玉は竜巻を巻き起こしながら刃のように鋭さを増しながら静魔に襲いかかる。

 

 静魔は闇を放出するとナギトの攻撃を止めようとするが、ナギトの放った一撃の強すぎる風は削岩機のように大地を抉りながら静魔を襲い、風の玉とそれが起こす竜巻に襲われる静魔の全身は猛烈な風による風の刃により次々に切り刻まれていく。

 

「こんな……こんなヤツにぃぃぃ!!」

 

「さよなら……哀れな人間」

 

 ナギトが指を鳴らすと風の玉と竜巻が炸裂して烈風の刃となり、発生した烈風の刃は静魔を八つ裂きにするように襲いながら敵を負傷させ、静魔は為す術なく呆気なく倒されてしまう。

 

 あまりにも情けのない無惨な倒し方、それを前にして他の生徒たちは言葉を失い、ナギトの力にユリナとサクラが言葉を失っているとヒロムは安心したような顔を見せる。

 

「……少しは成長してるじゃねぇか」

 

「もちろんだよ。

オレはアンタの弟子だからね」

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