56話 絶望のマスク
勝ち目はない、そう言いたげなペインの放った言葉と殺気を前にしてヒロムと真助はやる気を見せ、ナギトもペインを前にして加勢しようと意気込む。
「テロリスト相手にビビるなんて笑われること、オレはしないから」
「ナギト、オマエは休……」
「嫌だよ、天才。特訓の疲れがあるだろうからって取り残されるのはゴメンだから」
「ナギトの実力は申し分ないだろ、ヒロム。クリーチャーを1人で倒せるだけの実力ならオレたちでカバーしながら動けば何とかなる」
「簡単に言うなよ真助。相手は……」
「動きを封じて目に見えない何かを操ってんだろ?けど本体が生身の人間なら殺すのは可能って話だから追い詰めるのは人が多い方が楽って話だ」
「……ったく、戦闘バカが。
その解釈が出来るオマエが羨ましいよ。けど……オマエの言う通り数が多い方が突破口を見つけられるかもな」
「なら……」
「やるぞ真助、ナギト。
真助はオレと前衛、ナギトは万が一に備えながら後方支援とスキをついて追撃してくれ」
「おう」
「うん」
作戦は立った、ヒロムは真助とナギトとペインを倒すべくやる気を見せるように白銀の稲妻を強く纏うと拳を構え、真助とナギトも構える。
3人が構える中、ペインは右手を前にかざしながらヒロムたちに向けて告げる。
「その意気込みは無意味に終わる。何も知らずに希望の存在として奉られるオマエらが何の力も出せずに終わる……その光景だけを残してオマエらは終わる!!」
ペインが自らがかざした右手に力を纏わせるとその右手から蒼い雷が放たれる。放たれた蒼い雷は地面を抉りながらヒロムたちに襲いかかろうと迫り、ヒロムたちは蒼い雷を散開するように左右に展開する動きをしながら避ける。ペインから見て右に真助とナギト、左にヒロムが動くとペインはナギトと真助には興味を示さないようにヒロムの方に左手をかざす。
「滅天輪廻を避けたか……なら、葬天輪廻を受けてみろ」
蒼い雷を避けたヒロムに向けてかざされた左手が力を纏うと紫色の炎が放たれ、放たれた紫色の炎が迫る中ヒロムは白銀の稲妻を強く放出させて炎にぶつけると相殺させる。
「くっ……コイツ、一体どんだけの能力を持ってやがんだ!?」
「その程度で驚くな。オレの力はまだこんなものじゃない」
「なら見せてみろよ!!」
紫色の炎を相殺したヒロムがいくつもの力をペインが操ることに困惑する中真助は黒い雷を纏いながら敵に迫り、敵に迫る中で真助は黒い雷の一部を刀の形にすると妖刀《狂鬼》へ変化させて装備し、妖刀に力を纏わせながら斬撃を放とうとする……が、ペインが空間を歪めるとその中へと真助が飲み込まれ、飲み込まれた真助は気がつけばペインから離れた位置へと移動させられていた。
「何!?」
「転移の術があることを理解した上で攻めてくる勇気は認めてやろう。だがその勇気が時には無謀となることも理解する必要がある」
「おしゃべりってことは余裕なの?」
転移させられた真助に忠告するようにペインが言葉を口にしているとナギトが魔力を纏いながら接近してきてペインに攻撃しようとするが、ペインはナギトが攻撃する前に距離を詰めて体術で圧倒すると掌底でナギトを突き飛ばす。
「かっ……」
「余裕云々はこの際オマエらが気にすることではない。今オマエらが必要なの……この場で希望を失わずに生存するための方法を見つけることのみだ」
「その言い方が余裕なんだろって話だよ」
ナギトを簡単に圧倒した上でさらに忠告するようにペインが語っているとヒロムは白銀の稲妻を纏いながら接近し、接近する中で右手に金色の稲妻を纏わせていくとそれを精霊・フレイの武器である大剣へと変えると装備してペインに一撃を食らわせようとする。
しかしペインに向けて放たれたヒロムの大剣の一撃をヒロムたちが視認できない何かによって止められ、ヒロムの大剣が何かに止められるとペインは落ち着いた様子でヒロムに告げる。
「その大剣……なるほど、個人の力では及ばないと考えて精霊の力に手を出したようだな。だが甘い、その程度で強くなれると思うなど甘すぎる。オマエの中の力がその程度ならそんな付け焼き刃に等しい行為をしたところで強さは何も変わらない」
「付け焼き刃だと?」
「反論の余地があるならしてみろ。オマエのその付け焼き刃の力でこれまで何を守れた?付け焼き刃故に守れるものなどせいぜい片手で数えられるようなものしかないだろ」
「少なくともオマエらみたいなふざけた野郎を何度も潰して多くの人が犠牲になるのを止めてきた。たとえオマエに付け焼き刃と言われても……」
「それが付け焼き刃だと言っているんだよ。人を救うだけで満足してしまえる力だけでオマエは強くなったと勘違いしている。オマエの持つその力は守るための力では無いはずだからな 」
「何?」
「能力者の能力は奪うための力、だろ。そんなことも理解できないのか!!」
ペインはヒロムに向けて両手をかざすと蒼い雷と紫色の炎を放ち、放たれた2つの力を避けれずにヒロムは直撃で受けると大剣を手から落として倒れてしまう。
「がっ……」
「ヒロム!!」
「そこで見ておけ、鬼月真助。
オマエが信じた男の終わりをな!!」
ヒロムが倒れ、ペインから彼を助けようと真助が動こうとするとペインは真助の動きを封じて両手を勢いよく合掌させる。
「魔王……輪廻!!」
ペインが両の手を合掌させるとヒロムに向けて炎、氷、風、雷の4つの力が同時に放たれ、放たれた力はその力を高めながら地を抉りながらヒロムに迫っていく。
「くっ……」
「終わりだ……姫神ヒロム!!」
「こんなところで……終わらせてたまるか!!」
終わらせようとするペインの攻撃が迫る中ヒロムは全身から白銀の稲妻と眩い輝きを解き放って敵の攻撃を押し返し、そしてヒロムは光に包まれると両腕が白銀のガントレットと装甲に包まれ、肩部にはコクーン状のパーツが施されたアーマー、脚部は白銀のブーツを装備した姿へと変化する。
「レディアンド・アームズ……発動!!」
「ビーストを追い詰めた力か。面白い、見せてみろ」
「言われなくてもやってやるよ!!」
ヒロムはコクーン状のパーツを後方へ可動させると光を強く放出させて超速移動を披露し、ペインが反応するよりも速く敵に接近すると拳撃を放ってペインを攻撃しようとするが、ペインは《レディアント・アームズ》を纏いしヒロムの一撃を片手で簡単に止めてしまう。
「なっ……」
「……なるほど、パワーとスピードはかなり上昇しているな。
だがそれだけだ」
「この……」
「力だけでは何も出来ない。やはりオマエには希望の名を背負うには荷が重かったようだな」
「希望だの何だの……オマエは何が言いたいんだよ!!」
「……オマエを拒絶したいだけだ」
ペインが深く被るフードの下で怪しく何かが光るとヒロムが吹き飛ばされ、ヒロムが吹き飛ばされると同時に先程ヒロムの手から離れた大剣が矢の如く飛んできてヒロムを殺そうと迫る。
「しまっ……」
「気配を感じれたとしても避けれまい。今度こそ終わ……」
「させるかよ」
ペインの言葉に横槍を入れるような声とともにどこからか灰色の稲妻の矢が2本飛んで来る。飛んできた1本はヒロムを殺そうと迫る大剣を破壊し、もう1本の矢は大剣のそばで何かに命中したかのように炸裂する。
矢が炸裂すると何かが吹き飛ばされるような音が響く。
「!?」
「何……?」
「ずいぶん苦戦してんじゃねぇか、ヒロム」
何が起きたか分からないヒロムと何かに驚くペインを他所にヒロムの名を呼ぶ声がし、ヒロムがその声の方を向くと建物の屋上にゼロが立っていた。
「ゼロ、オマエ……」
「手こずってんじゃねぇかヒロム。
そんなんじゃ……この先生き残れねぇぞ」




